第29課 指導性を伸ばす
脚注

Hide Footnotes

テーマ

第29課

指導性を伸ばす

目的 よき指導者となり,従う者となる。

よき指導者となり従う者となる必要性

スペンサー・W・キンボール大管長は,指導者が人々に与える影響について次のように語っています。

「何年も前に,アリゾナ州セントジョセフステークの会長会にいたとき,ある安息日に責任を受けてエデンワードを訪れました。そこの建物は小さいので,わたしたちが床から50センチほど高くなっている壇上に座ると,ほとんどの人がすぐ前に腰かけているような状態でした。

集会の途中で,礼拝堂の最前列にいる7人の少年が目にとまりました。わたしはワード大会に7人の少年が出席していることをうれしく思いました。彼らのことを心に留め,それから別のことに関心を移しましたが,すぐにまた7人の少年たちに目がいきました。

奇妙なことに,その7人の少年は一斉に右足を挙げて足を組み,それから同時に足を組みかえたのです。わたしは変わった子供たちだと思いましたが,気づかないふりをしました。

するとすぐに,7人がそろって右手で髪の毛をなでつけ,さらに全員が体をやや傾けて手をほおにやり,それから同時に初めの足組みに戻りました。

何とも奇妙な少年たちで,わたしは集会で話す内容について考えようとしながらも,不思議でなりませんでした。そのとき,一瞬ひらめいたものがありました。あの少年たちはわたしの真似をしていたのです!

その日わたしは人生の教訓を得ました。すなわち,わたしたちは……細心の注意を払わなければなりません。他人がわたしたちを観察して,それに倣おうとするのですから。」(Conference Report,1974年10月,112;Ensign1974年11月号,79)

人はどこでも,だれかに従いたいと思っています。つまり指導者を求めているのです。指導者とは,人々の先頭に立って指示を与え,導き,物事を行う方法を示す人です。指導者は人々になすべき事柄や方法について語るだけでなく,行動によって模範を示します。また,人々の成長を助けます。

  • 視覚資料29-a「料理を教える姉妹」を見せる。

わたしたちは指示や導きを求めるとき,両親,友人,地域社会や教会の指導者に頼ります。そして彼らの言葉を聞き,行いを観察します。わたしたちはしばしば,これらの人々から受ける忠告に従って生活を変えたり,彼らの行いを模範にしたりします。わたしたちは教師から教えを受けることによって導かれ,その教えを生活に取り入れるようになります。

  • どのような特質を持つ人に従いたいと思いますか。(快活,自信,人を気遣う,楽天的,よく祈る,主を信頼している,謙遜,ほかの人を励ます)

(答えを黒板に書く)

  • わたしたちは従う者として,指導者をどのように助けられるでしょうか。以下の事柄を参考にするとよい。

  • 指導者の言葉に耳を傾ける

  • 指導者の正しい教えに従う

  • 自分に与えられた仕事を果たす

  • 喜んで人を助ける

  • 福音によって結ばれた人々と仲よく働く

  • 指導者とともに責任を果たす

  • 信頼される人になる

  • 指導者を理解する

  • これらの特質を伸ばすことは,従う人だけでなく,指導者にとっても大切であるのはなぜですか。

わたしたちは一人一人が指導者です。だれもが何かの機会に,何かしらの方法で,個人やグループを導いています。わたしたちは人とのかかわり合いの中で生活し,自分が意図しようとしまいと,他の人々に影響を与えているのです。人とは違った自分自身の影響力こそ,指導性にほかなりません。

わたしたちが指導者であるためには,必ずしも教会や地域社会といった公の組織で決められた責任を受ける必要はありません。指導する機会は様々です。家族や友人のいる家庭,近所や地域社会,教会など,生活のあらゆる面にその機会があります。

  • 家庭の中で自分はどういう点で指導者でしょうか。また指導者になれるでしょうか。地域社会においてはどうですか。

わたしたちは皆,何らかの形で指導者ですから,良い指導者になれるように学んでいくことが大切です。指導者としての技術を身に付けるならば,自分自身や他の人々を高め,友人や家族との関係を改善することができます。両親は家族の指導者として,できるかぎり最高の指導者になろうという意欲を持たなければなりません。優れた指導能力は,家族や友人,近所の人々と円滑な関係を築くうえで役立ちます。

教会が世界各地に組織され,主の業が進展するにつれて,多くの人が指導的な立場に召されるでしょう。

七十人第一定員会のスターリング・W・シル長老は,良い指導者の重要性について,次のように強調しています。「人々を教え,感化し,訓練し,監督し,愛し,動機づける方法や,〔良い指導者が行う〕他の重要な事柄を実践する方法を心得ている人の指示の下で働くならば,兵士はさらに勇敢に戦い,セールスマンは売り上げを伸ばし,子供はより学業に励み,宣教師はもっと改宗者を増やすことができるでしょう。」(“The Problem Is Always the Same,” Ensign,1973年3月号,34)

わたしたちは皆,実践することによって指導力を伸ばすことができます。教会の活動を通して指導の原則を学び,自らを備える必要があります。それから,これらの原則を日常生活に生かさなければなりません。

理想的な指導者-イエス

  • 視覚資料29-b「イエス・キリストと使徒たち」を見せる。

イエス・キリストが模範的な指導者なのは,天父の御心に完全に従うことを身に付けておられたからです。優れた指導者になるためには,「わたしに従ってきなさい」(マルコ10:21)という救い主の訓戒に従わなくてはなりません。それには,救い主が行われたことを行うようになる必要があります。

  1. イエスは御自身を備えられた。主は断食と祈りと研究によって,常に天父の御心を知るように努められました。わたしたちは研究を行って自らを備えるように勧められています(教義と聖約88:118-19参照)。断食して祈り,研究を行うとき,わたしたちも天父の御心を知り,その御心に従う能力を増し加えることができるのです。

  1. イエスは御自分が導く人々を愛された。愛はおそらく,指導者が身に付けることのできる最も重要な特質でしょう。愛があれば,自分に託された人々に心からの関心を示すことができるからです。また,生活を改善できるように人々を助けたいと願い,彼らの必要に心を配り,彼らが目標を達成できるように援助したいと望むようになります。わたしたちは末日聖徒イエス・キリスト教会の会員として,日の栄えの王国で天父とともに住むという共通の目標を持っています。指導者としての責任においてこの目標を達成できるように他の人々を助けるとき,それがどのような機会や方法でも,愛によって行わなければなりません。愛は人を行動に駆り立てる強い力です。ニール・A・マックスウェル長老は「指導とは愛の実践である」(A More Excellent Way,44)と述べています。わたしたちは救い主の次の訓戒を心に留める必要があります。「わたしがあなたがたを愛したように,あなたがたも互に愛し合いなさい。」(ヨハネ13:34

    • 人に働きかけるとき,力よりも愛による方が効果的なのはなぜですか。(人は相手を喜ばせたいという思いで愛にこたえる)

    • 人を愛する力により,特に家庭における指導がどのように改善されますか。(摩擦を避けられる。わたしたちが導く人から協力が得られる)

  1. イエスは弟子たちに主の業の目的を教えられた。主は弟子たちに各自の役割を理解させ,その重要な責任を認識できるようにされました。同じように,わたしたちも指導する相手に対して,仕事の目的を明らかにし,その役割を理解させる必要があります。

    • 子供たちは家庭における目的を理解すると,もっと両親に従うようになるのはなぜですか。(子供たちはすべての行いについて家庭で訓練と助けを受けられることを知り,両親に喜んで従うようになる)

  1. イエスは選択の自由の原則に基づいて指導された。主は弟子たちを無理やり従わせようとされたのではありません。御自分のもとに来るように招かれたのです。

    選択の自由は,イエス・キリストの福音の根幹をなす大切な原則です。もしわたしたちがだれかを強制的に従わせようとするなら,サタンの方法を使っています。キリストの方法で指導するためには,選択の自由を与えなくてはなりません。イエスは,従う人々に御自身が期待している事柄をきわめて正直にお話しになりました。わたしたちも指導する際には,人々に何を期待しているのか,また人々がわたしたちに期待できることは何かを示す必要があります。責任を与えるときには,責任に伴う義務や時間,出席すべき集会,達成すべき事柄を丹念に説明する必要があります。その後で,責任を受け入れるか拒むかは,彼らの選択の自由に任せるのです。

    • 責任を受け入れる前に,自分に期待されていることを知るのが大切なのはなぜですか。子供たちは具体的な指示を受けると,家庭における務めをよく果たせるようになるのはなぜでしょうか。

  1. イエスは弟子たちに有意義でやりがいのある仕事を与えられた。人は有意義で価値のある仕事を受ければ,自分が必要とされていると感じます。単に人を忙しくさせるために何かをするように頼むとしたら,良い結果は期待できません。指導者は責任を受ける人々に,自分のすることには価値があると感じさせる必要があります。また,不必要な仕事を与えて人の時間を奪うことのないようにしなくてはなりません。しかし,すべての人が知っておくべきことですが,ときには,つまらないように思えても欠かせない仕事があります。簡単な仕事や人々の注目を集めるような仕事だけでなく,そのような仕事も喜んで行わなければなりません。

  1. イエスは御自身の目的と主の民に対して責任があることを示された。イエスは主の民の成長を助ける責任を感じておられました。天父の王国を築くだけでなく,人々を昇栄に導くことも望んでおられたのです。預言者ジョセフ・スミスも同じ考えを述べています。「わたしは人々に正しい原則を教え,人々に自らを治めさせる。」(ジョン・テーラーによる引用,“The Organization of the Church,” Millennial Star,1851年11月15日付,339)人々が成長して昇栄できるように助けること,それがわたしたちの目的です。

    • 人々を導くとき,彼らの昇栄を第一に考えることが大切なのはなぜですか。(人々に行わせる事柄に対して責任がある。人々を誤って導くことは重大な過失である)

  1. イエスは人の話に耳を傾けられた。イエスは人々の話を優しく聞かれたので,主に従う人は愛され受け入れられていると感じて,心に安らぎを得ました。主は時間を取って人々の話を聞き,彼らの必要を理解しようとされました(ルカ7:1-10ヨハネ8:1-11参照)。わたしたちもこのような関心を示す必要があります。

  1. イエスは質問をすることによって,主に従う人々が彼ら自身の考えを把握できるように,そして主が教えようとしておられる事柄を理解できるように,頻繁に助けられた(マタイ16:13-1919:16–22ヨハネ21:15-177参照)。良い指導者になるには,人々が自分で問題を解決し,チャレンジに対処できるように助ける必要があります。人々に信頼を示し,彼らが自分で問題の解決方法を見いだして決定を下せるように励まします。しかし,人が自分の力だけに頼って常に正しい決定を下すのは非常に困難です。わたしたちは人からの助けによって勇気や力を得ます。また,真剣な祈りによって天父に力や助けを求める必要があります。

  1. イエスは常に戒めに従われた。主は人を喜ばせるために御自身の標準や行動を変えるようなことはせずに,いつも模範的な生活をされました。わたしたちも主の模範に従って自分自身を治め,義にかなった行いをするならば,人々の良い模範となるでしょう。わたしたちはあらゆる面で福音の標準に従って生活する必要があるのです(ニール・A・マックスウェル,A More Excellent Way, 53-54から変更を加えて引用)。

    • 指導するうえで模範が大切なのはなぜですか。自分の生活態度を通して,何をどのように教えますか。

イエスの模範に従う

ある少女は,義にかなった模範の及ぼす力強い影響力について次のように語っています。

「中学と高校の間,わたしは病気がちで,学校や教会に半分しか出席できませんでした。たとえ出席しても,活動には加われませんでした。そのために,友達をつくることも,みんなの生活にとけ込むこともできず,わたしは『一人ぼっち』でした。

そんなわたしが一度だけ殻を破ろうとしたことがあります。それはスピーチコンテストでした。ところが,ワードからほかに参加者がいなかったため,指導者はわたしの話を一度も聞かずに,わたしをステークのコンテストに送り出しました。結果は惨たんたるものでした。わたしはそのとき,二度と恥をかかないように自分の殻に閉じこもっていようと決心しました。

しかし〔ミューチャル〕の教師は,違う考え方をしていました。部屋の片隅で黙っているわたしをそのまま放っておこうとしないのです。そのような教師は初めてでした。彼女はステーク主催の食事会を準備する責任者に召されると,すぐにわたしに司会の責任を割り当て,テーマを選んで話の内容を提案するように言いました。わたしが『とてもできないわ』と言うと,『あなたならできるわ,わたしが何でもお手伝いしますから』と言って,何度も励ましてくれました。

わたしはその教師がとても好きになり,失敗するのは目に見えていましたが,彼女のために進んでやってみようと思いました。まず初めに,テーマについて二人で話し合いました。それから彼女は,委員会の少女たちの前で,わたしに意見を述べさせました。彼女はそれに対して何も口をはさみませんでした。わたしがスピーチの原稿を書くと,彼女は愛を持って注意深く添削してくれました。こうしてわたしは納得するまで何回もスピーチの原稿を書き直したのです。

わたしは彼女に言いました。『でも,300人の女の子たちの前に立って話すなんて,できっこないわ。みんなの心を動かすのは苦手だし,わたしはかわいくないし,魅力的でもないわ。きっとあなたの計画を台なしにしてしまうわ。』すると,彼女はわたしの肩を抱いて,言いました。『そんなこと絶対にないわ。あなたはこの会の主役になるわよ。』

それから,彼女はわたしの練習を何回も聞いてくれました。1度は会場に予定されているホテルまで行き,そこで練習させてくれました。また,マイクを手配してくれたので,本番の雰囲気を味わうことができました。彼女は,わたしが会で着るドレスを見せてほしいと言いました。そして当日の夜,そのドレスにとてもよく似合うコサージュをプレゼントしてくれました。わたしの心が湧き立ったのは言うまでもありません。彼女は行きつけの美容師を呼んで,わたしにいちばん合った髪型にするように言ってくれました。

しかし,何よりすばらしかったのは,会の直前に一緒にひざまずいて祈ってくれたことです。彼女は祈りの中で,わたしが一生懸命に努力してきたことや,立派に責任を果たすために主の助けが必要であることを説明しました。天父の愛と彼女の愛に包まれたわたしが,どうして失敗することがあるでしょうか。」(“A More Excellent Way,” 1968年6月の大会で上演された劇の台本,5-7)

  • この指導者は若い女性を助けるために何をしましたか。黒板に答えを列挙し,指導者の特質という観点から各々について話し合う。(次のような答えが考えられる:仕事を計画して準備した,愛と関心を示した,心配事に耳を傾けた,一緒に祈った,熱意を持って行った,信頼を示した,自尊心を持てるように助けた)

  • この指導者は,指導者の特質において,どのようにイエスの模範に従いましたか。

家庭で指導力を養う

教会の指導者は,キリストのような指導力を養ううえで家庭が果たす重要な役割について,いつも力強い証を述べてきました。

「組織が重要性を増すに従って指導者の必要性が高まるので,家庭における指導者が何よりも重視されるのは当然のことだと思います。『いかなる成功も,家庭における失敗を償うことはできません。』(デビッド・O・マッケイ大管長)あらゆる人々の幸福を左右する最も基本的な単位は,家族なのです。」(スターリング・W・シル,“The Problem Is Always the Same,”Ensign1973年3月号,34)

どのようにして人と協力し,仕事を完成し,委任し,援助を求めるかについて,わたしたちが最初に学ぶ場は家庭です。家庭の中には,互いに心からの愛と関心を寄せ合うような態度が必要です。

両親も子供も,義にかなった家庭環境の中で,良い指導者となる特質を養うことができます。才能を伸ばす機会や仕事を果たす機会を与えることにより,また仕事の成果を褒めて励ましを与えることにより,家族の自尊心を高めることができます。子供たちは,自分にできる仕事を与えられて手伝うときに,自信を持つようになります。人と話し合い,提案を受け入れ,争いを解決し,困難を乗り越える手だてを最初に学ぶのは,家庭の中なのです。良い手本に従うことや,人々の良い模範になることも,家庭で学べます。

両親は,正しい態度で教会の奉仕を行うことによって模範を示します。それは家庭や地域社会の奉仕についても同じです。子供たちは両親の模範を見て,良い指導者になりたいという思いを強くします。子供たちが指導者としての責任を果たすときには,助けと励ましを与えることが大切です。「家庭生活の中でさり気なく指導技術を教えるならば,子供たちはそれを心に留めて,後に指導者としての義務やチャレンジに対処するときに活用できるでしょう。」(ニール・A・マックスウェル,A More Excellent Way, 132)

  • 子供たちに家庭の夕べの割り当てを与えると,彼らの指導力を伸ばすうえでどのように役立ちますか。

  • 家族が一緒に働くことによって,各自の指導力をどのように伸ばすことができますか。

  • 年長の子供たちは,家族の中でどのように指導力を養うことができますか。

  • 両親も子供も家庭の中で良い指導者となる必要があるのはなぜでしょうか。

まとめ

わたしたちは皆,何らかの関係において指導者と言えます。それは,知人や友人,愛する人など,形式ばらない関係のこともあれば,教会や地域社会,その他の組織の中で受ける指導的な立場のように公式な関係のこともあります。教会の中では,指導者として働く機会が増えています。わたしたちは救い主や教会の指導者の模範に従うことによって,より良い指導者となることができます。両親に与えられている最も大切な指導の責任は,家族の中にあります。両親は言葉と行いによって模範を示し,子供たちが良い指導者となれるように力づけ,助けなくてはなりません。

チャレンジ

自分が援助や教え,指導を受けた人について考える。その人がしてくれたことの中で,助けになった事柄を具体的に思い起こす。同じ特質を養うように努める。

家庭の夕べや家族の活動で,一人一人に指導力を伸ばす機会を与えるように家族で計画する。

家庭や地域社会,教会での人間関係において,良い指導者になり,従う者になれるように行動する。

参照聖句

教師の準備

レッスンの前に,以下の事柄を行う。

  1. 黒板とチョークを用意する。

  2. 本課の引用文と聖句の発表を生徒に割り当てる。

子供に料理を教える母

29-a 料理を教える姉妹

イエス・キリストと使徒たち

29-b イエス・キリストと使徒たち