第24課 応急手当その2
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第24課

応急手当
その2

目的 一般的なけがの応急手当の方法について学ぶ。

応急手当

けがは未然に防ぐのがいちばんです。事故やけがを防ぐ方法については,第23課「応急手当その1」で多くの実例を学びました。しかし,どんなに用心していても,何らかの事故は起こるものです。そこで,わたしたちは皆,特に母親は,よく見られるけがの応急手当の方法を知っておく必要があります。

けが人が出たときは,人命救助を最優先して適切に処置します。第1に,必要であれば,けが人を安全な場所に移します。例えば,燃えている建物から連れ出します。第2に,人工呼吸を行います。第3に,出血が激しいときには止血します。第4に,毒物を飲んでいないかどうか確認します。第5に,ショック状態の手当をします。それから必要であれば,他の応急手当を行います。重傷を負っている場合は,直ちに医師に連絡します。ほかに人がいる場合は,一人が医師に連絡を取り,医師が来るまでの間,もう一人が人工呼吸や止血を行います。応急手当を行うときには,できるだけ冷静に対処して,けが人を安心させることを忘れてはなりません。

  • 止血の前に人工呼吸を行うのはなぜですか。

  • ショックの手当をする前に止血するのはなぜですか。

人工呼吸の方法

呼吸が止まる原因としては,ある種の病気,毒物の摂取,感電,水の事故,心臓発作,薬の過量服用,酸素欠乏などがあります。呼吸が止まっている場合は,脳の損傷を防ぐために直ちに人工呼吸を行わなければなりません。最も効果的な方法は,口移し法です。これは救助者が相手の口に息を吹き込み,肺まで空気を送る方法です。以下の概要を用いて学ぶか,専門家を招いて指導を受けるようにします。

  1. 相手の口の中を注意して手早くふき取り,呼吸を妨げるものを取り除く。必要であれば,舌をのどの奥から離す。

  2. 頭を後方に傾けて,あごを上に向かせる。こうすると,肺までの気道が開く。

  3. 相手の鼻をつまんで息がもれないようにし,自分の口を相手の口に当てて肺に息を吹き込む。普通に呼吸する速度で息を吹き込む。小さな子供であれば,子供の鼻と口を自分の口で覆い,成人の場合よりも少量の息を回数を多くして吹き込む。

  4. 息を吹き込むときに胸を見る。胸がふくらんできたら吹き込むのをやめ,顔を上げて胸のふくらみがもとに戻るのを確認する。息を吹き返すまで人工呼吸を続ける。10分たっても息を吹き返さない場合は,目を観察する。瞳孔が大きく開いたままで,目に光を当てたり遠ざけたりしても(目を手で覆ったり,手をどけたりしても)瞳孔が動かないときは,口移し式の人工呼吸をやめる。10分たっても目に反応がなければ,まず助かる見込みはないと考えてよい。

止血法

傷口から多量の出血がある場合は,血を止めることが大切です。止血をするには,たたんだ布を傷口に当て,手のひらで押さえます。清潔な布を包帯用に準備し,救急用品として備えておけば,止血に使えるでしょう。そのような布がなければ,別の布か手のひらで傷口を押えます。そのまま押さえていると,出血が少なくなるか完全に止まります。布に血がにじんできたら,取りはずさないで別の布を重ね,傷口を押さえ続けます。傷口を心臓よりも高くすると,出血を抑える効果があります。重傷の場合には,医師によって傷口を縫うことや,治療を施すことが必要になるでしょう。

軽い出血であれば,傷口を刺激の少ない石けんで洗い,きれいな水ですすいでから,清潔な布を重ねて傷口に当てます。出血が止まるまで数分間,傷口を押さえておきます。傷口が汚れるおそれがあるときには,清潔なばんそうこうをはって傷口を保護し,常にきれいに保ちます。

出血量はたいしたことがなくても,傷が深い場合があります。くぎ,矢,銃弾,そのほか先端の鋭い物による傷がその例です。傷が深いときには,患部を石けんで洗うことができないので,破傷風にかからないように予防注射を打つ必要があります。深い傷は,重い病気を誘発して死を招くことがあります。深い傷を負ったときは,すぐに医師の診察を受け,破傷風の予防注射が必要かどうか確認します。

感染の兆候があるかどうか確かめることも大切です。症状としては,はれ,うみ,ずきずきした痛み,傷口の壊死えし,発熱などがあります。このような症状があるときには,すぐに医師の診察を受けます。

中毒の対処法

中毒はよく起こります。乳幼児は好奇心が強く,何でも口に入れるので,中毒になりやすいものです。大人でも毒物を誤って飲んで中毒を引き起こすことがあります。

毒物を飲み込んだときは,まず口をすすいで,口の中に残った毒物を出します。次に,毒物の種類に応じて適切な応急手当を行います。その後,医師の診察を受けさせます。

毒物は体の組織を破壊したり,他の方法で危害を及ぼしたりします。体の組織を破壊しない毒物を飲んだ場合,水などの液体を飲ませて吐かせます。吐根シロップは吐き気を催すのに効果がありますが,効くまでに15分以上かかることもあります。この間,患者を一人にしてはいけません。吐根シロップなどの吐剤がなければ,指かスプーンでのどの奥を押して吐かせます。吐くときには窒息しないように,前かがみにさせます。意識不明のときは,窒息を防ぐために横向きに寝かせます。吐いた後は,解毒剤を与えて体内に残った毒物を安全に排出させます。活性炭や焦げたパンの粉は解毒剤になります。さらに,毒物を速やかに排出させるために,下剤やコップ1杯の食塩水を飲ませるとよいでしょう。

灰汁,ガソリン,灯油は体の組織を破壊する毒物です。これらの毒物を飲んだときには,吐かせてはなりません。飲み込むときに体の組織が傷ついているので,吐くことによって事態を悪化させることになります。その代わりに,多量の水または牛乳を飲ませて毒性を和らげます。下剤も効果があります。

毒物は,毒性のある植物や魚貝類,へび,昆虫などにも含まれています。これらの毒物に対する応急手当の方法は,地元の医師から教えてもらうことができます。

ショックの対処法

ショックとは,けがや緊張によって引き起こされる反応で,普通は重傷を負ったときに起きますが,病気や精神的な打撃で起こることもあります。ショックはけがや緊張のあったとき,あるいはしばらくたってから起こります。ショックを起こすと,呼吸や脈が遅くなり,死を招くこともあります。けがにはショックがつきものであると考えておいた方がよいでしょう。ショックは手当によって,ある程度防ぐことができます。

ショックを起こすと,身体に様々な変化が表れます。例えば,顔面がそう白になり,皮膚は汗ばんで冷たくなります。特に口のまわりや額,手のひらに多量の汗をかきます。脈拍は次第に早くなり,衰弱すると手首では取れないことがあります。そのようなときは,頸動脈の所に手を置くと脈拍が分かります。また呼吸も早くなり,身体が衰弱して落ちつきを失い,不安やのどの渇きを訴えます。ときには吐き気を催して嘔吐することもあります。

ショックを最小限にとどめるために最善を尽くすことが大切です。ショックの症状が悪化すると,次第に反応がなくなっていきます。皮膚にはん点が生じ,目がうつろになり,瞳孔が大きく開いて,意識を失います。もし意識不明の状態で体温が下がって行くと,生命を失う危険があります。

ショックの処置は,患者を寝かせ,体を暖かくして安静にします。こうした処置は,人工呼吸と止血がすんでから行います。

  • 黒板に「寝かせる,体を暖める,安静にする」と書く。

寝かせる

顔や口にけがをしているとき,意識不明のとき,あるいは嘔吐しているときは,顔を横向きにさせるか,横向きに寝かせます。そうすれば,分泌物などを口から排出させやすくなります。

  • 視覚資料24-a「寝かせ方」を見せる。

頭にけがをしている可能性がある場合や,呼吸が困難である場合は,患者の頭を少し高くします。

頭や首,背中にけがをしていないときは,足を幾分高くして,血液の循環をよくします。

けがの状態がはっきりしないときは,水平に寝かせておくのが最善の方法です。

体を暖める

体温が逃げないように毛布か衣類をかけて体を暖めます。

安静にする

応急手当をする人は冷静に行動し,たとえ重傷であっても,患者を安心させるようにすべきです。周囲の人の落ち着いた態度により,ショックを最小限に抑えることができます。

血液や体液を多量に失っている場合は,スープや清涼飲料などの飲み物を与えます。ただし,意識がはっきりしていない人や嘔吐している人,あるいは開腹手術が必要になりそうな人には,飲ませてはなりません。

感電の対処法

電気が体内を流れると電気ショックが起こり,呼吸が止まったり,脈が不規則になったりします。感電している人はすぐに電気の源から引き離す必要がありますが,電気が流れている間は体に触れてはなりません。電源が切れない場合は,乾いた木の棒や板を使って電源から患者を離します。例えば,金具の付いていないほうきの柄で患者を押すか,電源を払いのけるかして,両者の接触を断ちます。電源から離したらすぐに,口移し式の人工呼吸や必要な応急手当を行います。

やけどの対処法

やけどは,どこの家庭でもよく起こる事故の一つで,特に子供や老人に多いものです。第1度のやけどは,過度の日焼けによって,あるいは熱い物や熱湯,蒸気との接触によって起こります。患部が赤みを帯びてはれ,痛みを伴います。痛みをとるためには,すぐに水で冷やします。この程度のやけどは皮膚の表面が損われるだけで,普通はすぐに治ります。

第2度のやけどでは,水泡ができて赤みを帯びます。水泡ができるのは,熱が深部まで通り,体の分泌液が皮膚の下に集まるためです。患部を冷水に浸して熱を下げ,さらに深層部の損傷を防ぎます。また水泡を破ると,びらん面が化膿しやすくなるので注意します。広い部分をやけどした場合は,医師の診察を受ける必要があります。患部は清潔な油紙で軽く覆い,保護しておきます。患部が乾くと取り替えが困難になるので,包帯の使用は避けるべきです。

第3度のやけどは,医師の手当を必要とします。皮下組織まで破壊され,皮膚が広範囲にわたって損われます。ときには皮膚の組織が焼けただれて炭化することもあります。このやけどは,身に付けていた衣服が燃えたり,熱湯を浴びたり,熱い物体や電気に長時間触れたりすることによって起こります。その結果,多くの体液が失われ,感染しやすくなります。

焼けて体に密着した衣服を取り除こうとしてはいけません。代わりに,洗濯したシーツか清潔な布で患部を覆います。ただし,時間をとって医師の診察を遅らせることがないようにします。患部を覆えば,感染を最小限にくい止めることができます。また,ショックに対する手当もする必要があります。足にやけどをしていたら,足の位置を高くし,歩かせないようにします。手や腕の場合は,心臓より高く上げさせます。顔にやけどをしている場合は,座らせて呼吸が困難でないか調べます。意識があり,吐き気を催さないようであれば,スープか清涼飲料などを飲ませます。また,患者の不安を取り除いて安心させることも忘れてはなりません。

重度のやけどでも,すぐに手当をすれば損傷を最少限にとどめることができます。衣服に火がついた場合は,即座にその人を土や草や敷物の上に転がすか,毛布で包んで火を消します。火が消えたら,これまでに述べた方法に従ってやけどの手当を行います。

アルカリ液のような化学薬品に触れて,やけどをすることがあります。その応急手当は,できるだけ早くその薬品を大量の水で洗い流すことです。少なくとも5分間は続けます。薬品によるやけどは手当をしないと進行するので,すぐに医師の診察を受けなくてはなりません。薬品が目に入ったときは,体を横にしてまぶたを開き,手早く水を注いで薬品を洗い流します。

骨折の対処法

転倒や強打によって骨にひびが入ったり,骨折したりすることがあります。骨折する音が聞こえることもあります。骨折すると,痛みや不快感を覚えます。患者を動かすと悪化する原因になるので,できれば医師に往診してもらいます。もし病院に連れていかなければならない場合は,まず骨折した部分を固定する必要があります。患部に副木を当て,縛りつけて動かないようにしっかりと固定します。これは骨を保護し,痛みを和らげます。例えば,足を骨折したときにはもう一方の足に,腕の場合は胸に固定します。

木や棒,つえ,毛布を巻いたもの,厚紙も副木として使用できます。副木は,骨折部が動かないように十分な長さのものを使います。副木を布か衣服で包み,ベルトやネクタイ,ハンカチ,布を裂いたものなどで患部に縛りつけます。骨折部の両端の関節が動かないように,しっかりと固定します。ただし,きつすぎて血液の循環を悪くするようであってはいけません。

  • 視覚資料24-b「けが人の運搬」を見せる。

できれば,はれが引くように冷たい物を当てて患部を冷やします。骨折した部分を心臓よりも上にすると,はれを最少限にできます。

けが人の運搬

毛布や敷物,救助者たちの腕を使えば,重傷者を運搬することができます。何人かで両側から患者を支え,一人が頭をしっかりと抱えます。救助者の一人が号令をかけ,全員がそれに合わせて患者を持ち上げ,動かします。患者を不必要に動かしたり,全員の呼吸が合わなかったりすると,骨折を悪化させることになります。

  • 視覚資料24-c「毛布と上着を使った担架」を見せる。

ほうきの柄のような棒やさおを2本と,毛布を使えば,担架を作ることができます。また,上着の前を留めて袖に棒を通せば,これも担架の代用になります。

注意:首や背中を負傷していると思われる場合は,命に別状がないかぎり,動かしてはなりません。どうしても移動させなければならないときは,数人で運ぶか,あるいは担架を使います。このとき,患者の首と脊柱をできるかぎり動かさないように細心の注意を払う必要があります。

まとめ

緊急時にけが人が何を必要としているか明確に理解するのは,非常に重要なことです。最も大切なのは,けが人を危険な場所から移し,人工呼吸を行い,止血し,ショックの手当をすることです。次に,必要であればほかの応急手当を行います。さらに,医師の診察も必要になるでしょう。

本課で学んだ応急手当の方法を練習しておけば,緊急時に人を助けられるように自分を備えることができます。

チャレンジ

家族に応急手当の方法を教える。家族がいざというときに応急手当ができるように練習させる。

教師の準備

レッスンの前に,以下の事柄を行う。

  1. 地域で起きやすいけがとその具体的な応急手当の方法について,医療関係者と話し合う。彼らに口移し式の人工呼吸法をクラスで実演してもらう。医療関係者から得た情報をレッスンの際に教える。

  2. 緊急時に利用できる医療機関について調べる。地域の病院の診療時間が決まっている場合時間外に利用できる医療機関について調べる。

  3. 黒板とチョークを用意する。

  4. 生徒が本課で学んだ応急手当を練習できるように,緊急事態の場面を設定してロールプレーイングを行う。生徒は手当の方法だけでなく,どの応急手当が必要かを判断することも練習すべきである。例えば,腕にけがをした娘が母親の所に来る場面を設定する。傷口からかなり出血している。だれかに娘と母親を演じてもらう。母親役の人は,傷口の手当を実演する。

人工呼吸

24-a 寝かせ方

傷口手当1

24-b けが人の運搬

寝かせ方

24-c 毛布と上着を使った担架