2000–2009
真理――正しい決断の基

真理――正しい決断の基

真理に関する知識も,正しい決断ができるように役立てなければ無意味です。

S真理は賢明な決断を可能にする唯一の堅固な基ですが,何が真理かということはどのようにすれば分かるのでしょうか。情報のあふれかえる世の中で,賢明な判断を下すことがますます難しくなってきたと感じる人が増えています。わたしたちは「こうすれば成功する」「これが正しい」「これを買いなさい」といった声に絶え間なくさらされています。メディアやインターネット,そのほかの手段が複雑に絡み合い,情報の雨を降らせているからです。何か問題があれば,解決策を載せた様々なメッセージが送られてきます。どれも非常に説得力があり,巧みに出来ていますが,その中の二つがまったく正反対のものであることも多いのです。どうしたらよいか分からず,正しい判断を下す自信のない人がいるのも無理はありません。

さらに事を複雑にしているのは,わたしたちの下す決断が,社会的に受け入れられ,だれの目にも公正なものでなければならないと思い込ませようとする人がいることです。この主張がいかに間違っているかは,少し考えてみれば分かるでしょう。社会構造や政治体制は国によって大きく違いますし,時代とともに大きく変わります。ですから,こうした方法で物事を決めるのは明らかに愚かなことです。

真理を見いだす方法は二つあります。それぞれの方法の基となっている律法に従うかぎり,どちらも役に立ちます。一つ目は科学的な方法です。これには,一つの理論を検証するためにデータを解析したり,実験を通して法則の妥当性を証明したりする必要がある場合もあります。科学的な方法は真理を探究するうえで有益です。しかしこれには二つの限界があります。まず,多くの場合,真理に近づいてはいくものの,絶対的な真理に到達したかどうかを確認するすべがありません。次に,どんなに努力してこの方法で探求したとしても,間違った答えにたどり着く可能性もあります。

真理を見いだす最良の方法は明快です。すべての真理の源である御方のみもとに行って尋ね,受ける霊感に従って行動すればよいのです。1この方法で真理を見つけるには,次の二つの要素が欠かせません。まず,すべての真理の源である御方に対する揺るぎない信仰,もう一つは,その御方と常に霊的な意思の疎通を図れるよう進んで神の戒めを守りたいという望みです。先ほどロバート・D・ヘイルズ長老は,この個人の啓示とそれを受ける方法について話してくれました。

科学的なアプローチ2

真理を発見するための科学的なアプローチから,わたしたち人類は何を学んできたでしょうか。一つの例を挙げて説明しましょう。聖なる天の御父エロヒムから科学を通して解明することを許された事柄は,広大かつ深遠で驚くほど雄大です。どんなに努力しようとも,その片へん鱗りんすらわたしはまだ理解できません。地球を離れて宇宙空間に出ることができたとしたら,まずわたしたちは,宇宙飛行士のように地球を見ることができるでしょう。さらに地球から離れると,太陽とその周りを公転する惑星がはっきりと見えるでしょう。無数の星が輝く壮大な宇宙空間では,太陽とその周りの惑星も複数の物体から成る小さな円にしか見えないでしょう。さらに遠くへ旅を続けると,わたしたちの銀河系全体が見えるようになります。その中では,1千億個以上の星が円軌道上を回っています。それらの星の軌道は,銀河系中心部に密集した星の重力によって決められているのです。さらに遠く離れると,おとめ座銀河団と呼ばれる銀河の集まりを見やることができるでしょう。地球から5000万光年の距離にあると推測されるこの銀河団に,わたしたちの銀河系が属していると考える人もいます。さらにその先には,ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した銀河の世界が100億光年先まで広がっています。光が1時間に11億キロ進むことを考えると,これは気が遠くなるような距離だということが分かります。これほど非日常的な場所にまでやって来たとしても,父なる神が造られた世界の果てにたどり着くことなどとうていできません。

宇宙の広大さを知ると畏い敬けいの念を抱かずにはいられませんが,天の御父の測り知れない能力を同じように確認できる領域がほかにもあります。今度は外ではなく中へと視点を変え,物質の構造を探ってみましょう。すると,らせん構造のDNA分子を間近で見ることができます。これは自己複製する驚くべき分子構造であり,人間の肉体の資質はこれによって決まります。さらに小さな世界へと足を進めると,皆さんも聞いたことのあるプロトン,ニュートロン,そしてエレクトロンから成る原子の世界に到達します。

創造における最小単位のなぞにさらに迫ろうとすると,現代の知識の限界に突き当たるでしょう。過去70年間にわたって,物質の構造については多くのことが解明されてきました。基本素粒子とその相互作用の標準モデルが作成されるようになりました。基礎となったのは,クウォークと名付けられた基本素粒子やそのほかレプトンと呼ばれる基本素粒子の存在を証明した実験です。このモデルは,物質の中で原子が結合したり分離したりする様子を説明しているのですが,重力の説明がまだ不十分です。また,現在の研究成果を得るために使用されたものよりもより高性能な装置が開発されれば,新たな基本素粒子が発見されるかもしれないと考える人もいます。ですから,科学的な方法でまだ理解できていない天の御父の被造物は,現在もたくさん残っているのです。

才能ある人々に主が霊感をお与えになったために,科学的な手法から広大な知識がもたらされました。彼らは,どなたの手によってこれらのものが創造されたのか,またそこにどのような目的があるのかを知らないかもしれません。多くの科学者は自分が霊感を受けていることにすら気づいておらず,自分たちの発見が神のおかげなのだと考えることはないのかもしれません。しかし,わたしは最近ヘンリー・B・アイリング管長から,才能豊かな彼の父親が優秀な科学者たちの集まりに出席したときの経験を聞いてほっとしました。彼は周囲の受賞者にこう尋ねました。「研究を通して,万物を組織された英知の存在を感じましたか。」すると皆,異口同音にそのような英知を備えた御方の存在を確信していると答えたのです。

わたしたちの理解は限られていますが,これまでに得た御父の被造物に関する知識は,この宇宙がほとんど何もない空間からできていることを示しています。固体であり,硬くて,触ることができると思う物体ですら,非常に大きく拡大した宇宙の視点で眺めたり,または非常に小さな視点で眺めたりしてみれば,そのほとんどが何もない空間なのです。わたしたちの父なる神は,その崇高な目的のためにこれらの被造物を治め,お使いになっているのです。

啓示された真理によるアプローチ

啓示を通して,わたしたちはどのような真理を学んできたでしょうか。

何世紀も前,父なる神は聖なる御み霊たまを通して,何人かの預言者に神が造られた広大な世界をすべてお見せになりました。また,それらを造った目的を説明されました。「見よ,人の不死不滅と永遠の命をもたらすこと,これがわたしの業であり,わたしの栄光である。」3エノクはそのような預言者の一人です。エノクは天の御父が泣かれるのを見ました。サタンの力と影響が大きく,地上の多くの人がそそのかされて悪を行うようになっていたからです。

エノクは言いました。

「『あなたは,永遠から永遠にわたって聖なる御方であるのに,どうして泣くことがおできになるのですか。

人が……この地球のような幾百万の地球を数えることができたとしても,それはあなたが創造されたものの数の始めにも至りません。あなたのとばりは今なお広がっています。それでも,……あなたは公正な御方です。とこしえに憐あわれみ深く,思いやりの深い御方です。

……あなたの御み座ざのある所には,ただ平安と公正と真理だけがあります。憐れみはあなたの前を進み,終わりがありません。どうしてあなたは泣くことがおできになるのですか。』

主はエノクに言われた。『これらあなたの兄弟たちを見なさい。彼らはわたし自身の手で造られたものである。わたしは……彼らに知識を与えた。また,……人に選択の自由を与えた。

わたしはあなたの兄弟たちに……互いに愛し合うように,また父であるわたしを選ぶようにという戒めも与えた。ところが見よ,彼らは愛情がなく,自分の血族を憎んでいる。」4

また,父なる神は,次のような見事な表現を用いてモーセに語られました。

「無数の世界を,わたしは創造した。また,わたし自身に目的があってこれらを創造した。子によって,わたしはこれらを創造した。子とは,わたしの独り子のことである。……

……多くの世界がある。……それらは人にとって数え切れない。しかし,わたしにはすべてのものが数えられている。それらはわたしのものであり,わたしはそれらを知っているからである。」5

真理に関する知識も,正しい決断ができるように役立てなければ無意味です。少し考えてみましょう。体重を気にしている人がパン屋のそばに来ました。おいしそうなパンやドーナツが並んでいます。この人の頭の中をのぞいてみましょう。「医者からはこういうものをこれ以上食べてはいけないと言われている。体に良くないぞ。食べたって一時的な食欲を満たすだけだ。食べてしまったら今日きょうはこれからずっとつらいぞ。もうこれ以上は食べないと決めているのだから。」しかしその後で,その人はこう言ってしまいます。「アーモンドツイストパンとチョコレートドーナツを二つずつだけ食べよう。1度ならかまわないさ。これを食べたら,もう二度と誘惑には負けないぞ。」

信仰と人格

真理を見いだす過程では,途方もない努力,そして御父と栄光ある御子への非常に深い信仰が必要になることがあります。皆さんの人格を築くために神がこのような状況をお作りになるのです。人格を磨くことにより,重大な決断をするときに御霊の導きに従順に従う能力が高まります。皆さんは義にかなった人格を築いているのです。磨かれた人格は,皆さんの持っているもの,学んできたこと,達成してきたことよりも大切です。このような人格は,人からの信頼を勝ち取ります。義にかなった人格は霊的な強さの基盤となります。試練や試しに遭っているときでも,きわめて重要で難しい決断を正しく下すことができます。絶対に決められないと思えることですら,正しく決定できるようになるのです。

サタンの力も,またそのほかのいかなる力も,皆さんが伸ばしている人格を損なったり破壊したりすることはできないと証します。人格に傷が付くのは,皆さん自身が不従順になるときだけです。

次の重要な原則を理解して生活の中で実践してください。信仰を働かせることにより人格が磨かれます。人格に磨きがかかると,さらに大きな信仰を働かせるための能力が高まります。そして自分は正しい決断を下すことができるという自信が増していくのです。この過程を繰り返しながら,わたしたちは強められていきます。人格が磨かれるほど,信仰という力を働かせる能力が増し,それがまた人格を磨くのです。

わたしたちの御父と御子

分からないことが多すぎて,すべてを理解することなどとうていできないと感じるなら,人知では測り知ることのできない能力を持つ神がわたしたちの御父であられることに感謝しましょう。神は深い愛と理解,哀れみと忍耐を持つ,わたしたちの父であられます。御父はわたしたちをその子供として創造されました。神は愛する息子,娘としてわたしたちに接してくださいます。愛され,誉められ,価値があり,大切な存在であると感じさせてくださいます。そして憐れみの計画6を与え,従順であるという条件の下に,わたしたちが正しい決断をすることができるようにしてくださいました。神は,わたしたちがその導きと影響の下で永遠にわたって生き,成長し,進歩し,正しい道にとどまるための方法を,聖なる御子を通して用意してくださいました。

わたしは言葉で言い尽くせないほど天の御父を愛しています。心からへりくだり,厳粛に証あかしします。この比類のない力をお持ちになる創造主は,哀れみに満ちたわたしたちの聖なる御父です。神の御子は死の縄目を解くために父の御み心こころに完全に従って命を捨てられ,わたしたちの主,贖い主,救い主となられました。御父と御子がお持ちになる能力を完全に理解することはできませんが,わたしは御二方が深い愛を表されるときにお使いになる力の幾分かは理解しています。へりくだり,御父と御子が生きてわたしたちを愛しておられることを厳かに証します。イエス・キリストの御み名なによって,アーメン。