2021
心の健康
2021年11月


心の健康

わたしたち家族が試練を経験したときに気づいたことを幾つか紹介したいと思います。

わたしたち家族は,聖約の道を喜びをもって歩みながら豊かな祝福を受けてきましたが,非常に高い山にも直面してきました。心の病について,かなり個人的な経験を紹介したいと思います。これにはうつ病や重度の不安症,双極性障害,多動性障害(ADHD)が含まれ,時にはそのすべてが組み合わさっていることもあります。関係者の承諾を得たうえで,この繊細な経験について紹介します。

奉仕の務めの間,わたしは同じような経験をしてきた何百もの個人や家族に出会ってきました。荒廃をもたらす病気が地を覆うと聖文で言及されていますが,これには心の病が含まれるのではないかと時々思います。1この病は世界中で,すべての大陸と文化を覆い,老若や貧富にかかわらず,すべての人に影響を与えています。教会員も例外ではありません。

その一方で,わたしたちの教義は,イエス・キリストに似た者となり,主にあって完全になるために努力するよう教えています。子供たちは,「わたしもなりたい,イエス様のように」と歌います。2わたしたちは,天の御父やイエス・キリストが完全であられるように,完全になりたいと切に望んでいます。3わたしたちが完全になることにおいて,心の病が妨げになり得ると感じることから,心の病はタブー視されることがよくあります。その結果,あまりに多くの人が無知でいたり,黙って苦しんだり,諦めたりしています。自分が基準を満たしていないという思いに圧倒されて,教会には自分の居場所がないと多くの人が思い込んでいます。

そのような欺きと闘うために,次の大切なことを忘れてはなりません。「救い主は御父の子供たち一人一人を愛しておられます。様々な心の健康の問題を抱えながら生きていく中で多くの人が経験する痛みや苦しみを,主は完全に理解しておられます。主は『あらゆる苦痛と苦難と試練を受けられ〔,〕……御自分の民の苦痛と病を身に受けられ』ました(アルマ7:11,強調付加。ヘブル4:15-162ニーファイ9:21も参照)。すべての苦難を理解しておられるので,主は『打ち砕かれた心を持つ者を癒す』方法を御存じなのです」(欽定訳〔英文〕ルカ4:18から和訳。イザヤ49:13-16も参照)。4試練によりさらにツールやサポートを必要とすることがよくありますが,これは性格の欠陥ではありません。

わたしたち家族が試練を経験したときに気づいたことを幾つか紹介したいと思います。

まず,多くの人はわたしたちとともに悲しんでくれ,裁こうとはしません。わたしたちの息子は激しいパニック発作や不安,うつ症状に襲われ,伝道に出てわずか4週間後に帰還しました。わたしたちは親として,息子の成功をずっと祈ってきたので,落胆や悲しみに対処するのは容易ではありませんでした。すべての親と同じように,子供たちの力強い成長と幸せを願っています。伝道は息子にとって人生の重要な出来事になるはずのものでした。ほかの人たちがどう思うかも心配しました。

知りえぬ間に,息子は帰還によりはるかに大きな衝撃を受けていました。主を愛し,主に仕えたいと願いながらも,自分では理解に苦しむ理由でそれができないのです。間もなく,息子は完全な絶望に陥り,深い罪悪感と闘っていました。自分は受け入れられていると感じられなくなり,霊的にまひし,繰り返し死について考え,衰弱していきました。

この理不尽な情況の中で,息子は自分に残された唯一の行為は自ら命を断つことだと信じるようになりました。息子を救うには,幕の両側における天使の群れが必要でした。

息子が自分の命をかけて闘っている間,この極めて困難な時期に,わたしたちの家族やワードの指導者,会員,友人たちが手を差し伸べて,ミニスタリングをしてくれました。

それまでわたしは,あふれ出るそのような愛を感じたことがありませんでした。慰めの要る者を慰めるとはどういうことか,私的な形で,これほど強烈に感じたことはありません。わたしたち家族は,差し出されたあの愛に永遠に感謝しています。

これらの出来事に伴って起こった無数の奇跡について述べることはできません。幸い,息子は生き延びましたが,心が癒されて,自分が愛され,大切な存在であり,必要とされていることを受け入れるまでには,長い時間と多くの治療,霊的なケアが必要でした。

こうした出来事がすべて,我が家のような結末を迎えるわけではありません。愛する人をまだ若すぎる年で亡くし,答えの得られない疑問を持ち悲嘆にくれる方々を思うと,わたしも悲しみを覚えます。

次に気づいたことは,親にとって子供がもがき苦しんでいるのを認めるのは難しいということです。しかし,学ばなければなりません。どうすれば,通常の成長に伴う困難と病気の兆候との違いを見分けることができるでしょうか。わたしたちは親として,子供が人生のチャレンジの中を進んで行くのを助けるという神聖な責任がありますが,ほとんどの人は心の健康の専門家ではありません。それでもなお,子供が適切な期待に応えようと努めるとき,自分の心からの努力に満足できるように助けることによって,子供を養う必要があります。だれでも自分自身の短所から分かるように,霊的な成長は進行中のプロセスなのです。

今では理解されているように,「〔心の〕健康のために,手軽に使える万能の薬はありません。わたしたちは堕落した世界で堕落した肉体を持って生きているため,ストレスや混乱を経験します。そのうえ,様々な要因が重なって,心の病と診断されることもあります。精神的および情緒的な健康の状態にかかわらず,成長に焦点を当てる方が,自分の短所にこだわるよりも健康的なのです。」5

妻とわたしにとって,一つ常に助けになったことは,極力主の近くにいることです。振り返ってみると,とても不確かな時期に,主がいかに忍耐強く教えてくださったか分かります。主の光が,暗闇の中を一歩ずつ導いてくれました。人の価値は永遠の計画において,地上で行ういかなる務めや業績よりもはるかに重要です。主はそのことを理解できるように助けてくださいました。

心の病について学ぶことは,自分自身や苦しんでいる人々を助ける備えになります。心を開いて正直に話し合うことにより,この重要なテーマに向けるべき注意を向けることができます。結局のところ,情報が霊感や啓示に先立つのです。目をそらされることの多いこれらの試練はだれもが経験する可能性があり,直面すると,乗り越えられないもののように思われます。

わたしたちが最初に学ぶべきことは,自分が決して独りではないということです。「福音ライブラリー」アプリの「ライフヘルプ」セクションで,「メンタルヘルス」の項目を学習するようお勧めします。学習することにより,よりよく理解し,受け入れ,思いやり,愛せるようになるでしょう。悲劇を減らし,その一方で,健全な期待と健全な相互関係を育み,実現できるでしょう。

最後に,わたしが気がついたことは,絶えず見守り合う必要があるということです。わたしたちは互いに愛し合い,裁くのを控えなければなりません。自分の期待がすぐには実現しないときは,特にそうです。子供や青少年が生活の中で,自分自身への愛を感じるのが難しいときでも,イエス・キリストの愛を感じられるように彼らを助けるべきです。十二使徒定員会の会員を務めたオーソン・F・ホイットニー長老は,もがき苦しむ子供を助ける方法について,親に次のように助言しています。「子供のために祈り,信仰をもって見守ってください。」6

信仰をもって彼らを見守るということはどういうことか,しばしば考えてきました。それには,愛,柔和,優しさ,尊敬のささやかな行いが含まれると思います。また,子供が自分のペースで成長できるようにし,救い主の愛を感じられるように証を述べることを意味します。自分やほかの人のことよりも,もっと子供について考えることが求められます。たいてい,話す量を減らし,聞く量をもっと,もっと増やすことを意味します。子供を愛し,自信を持たせ,成功への努力と神への忠実さを頻繁に褒める必要があります。最後に,自分が神に近くとどまるのと同じように,子供に近くいるために,力を尽くしてできることをすべて行うのです。

心の病を抱えている人はだれでも,たとえその時に神の愛を感じることができなくても,聖約を固く守ってください。力の限りすべてのことを行い,「神の救いを目にし,また神の腕が現されるのを見る」のを待ってください。7

イエス・キリストがわたしたちの救い主であられることを証します。主はわたしたちを御存じです。わたしたちを愛し,待っておられます。わたしは家族の試練の間に,主がいかに近くにおられるか知りました。主の次の約束は真実です。

「恐るな,われは汝が神

常に汝と共にあり

助け与え,強くして

わが正しき力をもて 汝れを支え,励まさん」

わたしたちがこの「堅き基」について知り,喜んでこう宣言できますように。

「主,われに頼るものの霊

敵の手には渡し得ず

地獄,彼に迫るとも……

必ずわれは見捨てず」8

イエス・キリストの御名により,アーメン。