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新約聖書を研究する


「新約聖書を研究する」『聖文ヘルプ:新約聖書』

新約聖書を研究する

新約聖書とは

新約聖書は,イエス・キリストの生涯,教え,使命についての記録です。主の贖いの犠牲と復活について教え,証しています。また,福音を広め,主の教会を確立するという主の弟子たちの働きについても書かれています。

英語で旧約と新約聖書の「聖書」の部分を表す「testament」という言葉は,「聖約」と訳すこともできます。 従って,新約聖書は新たな聖約です。新約聖書は,イエス・キリストがモーセの律法,すなわち古い聖約を成就されたことを強調しています。救い主と弟子たちは,神の子供たちが神のみもとに戻って生活できるように,新しい聖約について教えられました。

新約聖書には27の書が収められています。これらの書は,専らそれだけではないものの,おもに主イエス・キリストの使徒たちによって書かれたものです。新約聖書は一般的に,福音書,使徒行伝,パウロの書簡,公同書簡,黙示録に分けられます。

新約聖書はどのようにして手に入ったのか

新約聖書の著者によって書かれた原本は残っていません。現存する,新約聖書に収められている個々の書の最も古い原稿は,紀元200年以降のものです。 現存する最古の新約聖書として知られているものは,4世紀までさかのぼります。

1世紀から,キリスト教徒は新約聖書の本文の写本を作成し始めました。写本は,旧約聖書の文書を書く際の慣習であった巻物ではなく,別々のページが装丁された冊子の形式でした。 これが,現在聖書として知られる集書の発展に至った一つの要因であったかもしれません。Bible(聖書)は,ギリシャ語のbibliaから来ており,逐語的に「書物」を意味します。 写本により,複数の書物の集書を一巻にまとめて作成することができました。

ギリシャ語写本のレプリカ

新約聖書の最も初期の書の中には,初期の教会における背教について警告しているものがあります。 背教とは,個人や集団が福音の原則に背くことです。イエス・キリストの使徒たちが殺された後,背教が加速しました。福音の真理と聖約はゆがめられ,変えられました。 背教が広まるにつれて,主は御自分の神権の鍵と権能を地上から取り去られました。

そして背教に伴い,競合するクリスチャンの団体が生まれます。各団体は,自分たちの異なる信条を聖書が裏付けていると主張しました。論争が激化するにつれ,キリスト教徒は,一般に受け入れられているキリスト教の文書を集める必要性を感じるようになりました。文書にも本物と疑わしいものがあり,その中にはほかよりも価値のある文書もあると確信していたのです。

やがて,3世紀と4世紀のキリスト教の指導者たちは,どの文書を聖文として受け入れるかを決定しようと努めました。彼らが用いた基準の一つは,文書が使徒によって書かれたものか,使徒と関連があるものかということでした。また,文書が伝統的なキリスト教の信念にどの程度一致しているかも検討しました。第3の基準は,文書がキリスト教徒のコミュニティの間で広く支持されているかどうかということでした。

これらの基準を用いて,紀元367年にエジプトのアレクサンドリアの司教アタナシウスは,ほとんどのキリスト教徒が使用している新約聖書に収められている27書を含むリストを推薦しました。このリストは広く受け入れられるようになったものの,すべてのキリスト教徒が使用し,すべてのキリスト教徒の賛意を得ている,そのような新約聖書の書のリストはいまだ存在しません。

何百年も経て,別の新約聖書が,今日わたしたちが使っている言語に翻訳されました。聖書を翻訳し世に出す責任を負った人々の多くは,「神の御言葉を暗黒からもたらすために,死をもいとわぬ」大きな犠牲を払いました。

なぜ末日聖徒は欽定訳聖書を使っているか

1604年から1611年にかけて,イングランド王ジェームズ1世により任命された約50人の学者が,聖書の新たな訳に取り組みました。これは欽定訳として知られるようになりました。

翻訳者たちは,それ以前の英語版聖書の翻訳を頼りにしました。また,ヘブライ語やギリシャ語の聖書の写本など,そのほかの有用な資料も参照しました。 ジョセフ・スミスが研究したのは欽定訳聖書でした。欽定訳聖書は,回復された末日聖徒イエス・キリスト教会において永続的な価値のあるものです。その語彙と文体は,モルモン書と教義と聖約の全体を通じて見受けられます。

聖書を読む若き日のジョセフ・スミス

大管長会は次のように書いています。

欽定訳聖書よりもほかの版の聖書の方が読みやすい場合もありますが,教義の面において,末日の啓示は英語で出版されているほかの訳文よりも欽定訳を支持しています。預言者ジョセフ・スミスに始まる教会の歴代大管長は皆,欽定訳聖書を支持し,教会におけるその継続的な使用を奨励してきました。これらすべてを踏まえて,末日聖徒イエス・キリスト教会では,英語の聖書として欽定訳聖書を採用しています。

聖書の英語以外の訳についてさらに詳しく知ることのできるリソースには,どのようなものがあるか

「福音ライブラリー」の「聖文」の項目に,Translations and Formats(英語版)があります。“Holy Bible”を選択すると,出版されている,または末日聖徒イエス・キリスト教会が推奨している聖書訳のリストが表示されます。

聖書のジョセフ・スミス訳とは

預言者ジョセフ・スミスは,生涯を通して聖書に対する深い愛を示していますが,聖書の文に問題があることも知っていました。ジョセフは次のように言っています。「わたしは原著者の筆によって書き記されたままの聖書を信じています。無知な翻訳者や不注意な転写者,あるいは腹黒く腐敗した聖職者たちが多くの間違いを犯してきました。」

1830年の夏,預言者は欽定訳聖書の英訳の改訂,すなわち翻訳に着手しました。ジョセフはそれを自分の預言者としての召しの一部だと考えていました。ジョセフは1833年7月までにほとんどの作業を終えましたが,1844年に亡くなるまで,原稿に小さな変更を加え続けました。

預言者は聖書をある言語から別の言語に翻訳したのではありません。ヘブライ語やギリシャ語の資料を使用したり,辞書に頼ったりすることもありませんでした。そうではなく,欽定訳聖書の聖句を読み,研究し,それから聖霊による霊感に従って修正し,書き加えたのでした。初期の翻訳の結果,聖書の記述や教えが膨らみ,より長い文章になりました。その例として,モーセ書やジョセフ・スミス—マタイなどがあります。そのほかの改訂部分には,「文法を改善し,意味を明確にし,現代の言葉遣いに直し,教義の要点を訂正し,矛盾点を緩和する小さな変更」が含まれていました。

聖書の翻訳に取り組むジョセフ・スミスとシドニー・リグドンを描いた,画家による絵

「ジョセフとシドニー」アニー・ヘンリー・ネーダー画

ダリン・H・オークス管長は,聖書のジョセフ・スミス訳は「聖文の王族の一員です。…それは,それが存在するいかなる機会にも注目され,尊重されるべきものです」と述べています。

預言者が霊感を受けて行った多くの改訂は,「福音ライブラリー」の「学習ヘルプ」にある「ジョセフ・スミス訳付録」に収められています。また,末日聖徒版聖書の脚注や付録にも掲載されています。

さらに学ぶ

  • M・ラッセル・バラード「聖書という奇跡『リアホナ』2007年5月号,80-82

  • Neal A. Maxwell, “The New Testament—a Matchless Portrait of the Savior,” Ensign, Dec. 1986, 20–27

  • Shon D. Hopkin, “How New Testament Disciples Built on Old Testament Foundations” (digital-only article), Liahona, Jan. 2023, Gospel Library

  • 教会歴史のテーマ「聖書のジョセフ・スミス訳」,「福音ライブラリー」

メディア

  • 聖文の祝福」(3分03秒)は,聖書を英語に翻訳し,出版するまでのウィリアム・ティンダルの貢献について描いています。

    3:6
  • History of the Translation of Biblia Sagrada”(5分41秒)〔英語版〕は,ポルトガル語聖書の翻訳者であるジョアン・フェレイラ・アンネス・デ・アルメイダの物語です。

    5:41

  1. See Bible Dictionary, “Covenant,” Gospel Library.

  2. See Richard Neitzel Holzapfel and others, Jesus Christ and the World of the New Testament: An Illustrated Reference for Latter-day Saints (2006), 7.

  3. See Lincoln H. Blumell, “The Greek New Testament Text of the King James Version,” in New Testament History, Culture, and Society: A Background to the Texts of the New Testament, ed.Lincoln H. Blumell (2019), 702–3.

  4. See Daniel Becerra, “The Canonization of the New Testament,” in Learn of Me: History and Teachings of the New Testament, ed.John Hilton III and Nicholas J. Frederick (2022), 778; Holzapfel and others, Jesus Christ and the World of the New Testament, 7.

  5. 『聖句ガイド』「聖書」の項,「福音ライブラリー」参照

  6. 使徒20:29-301コリント1:10-13ガラテヤ1:6-82ペテロ2:1-33ヨハネ1:9-10ユダ1:3-4,18-19参照

  7. 1ニーファイ13:26-29参照

  8. ダリン・H・オークス「背教と回復『聖徒の道』1995年7月号,90-93;M・ラッセル・バラード「回復された真理『聖徒の道』1995年1月号,71-74参照

  9. See Becerra, “The Canonization of the New Testament,” 780–81.

  10. See Becerra, “The Canonization of the New Testament,” 782.

  11. D・トッド・クリストファーソン「聖文の祝福『リアホナ』2010年5月号,32

  12. See Lincoln H. Blumell and Jan J. Martin, “The King James Translation of the New Testament,” in Blumell, New Testament History, Culture, and Society, 673–74, 677.

  13. See Blumell and Martin, “The King James Translation of the New Testament,” 674–75.

  14. See “History of the Scriptures,” in About the Scriptures, ChurchofJesusChrist.org.

  15. First Presidency Statement on the King James Version of the Bible,” Ensign, Aug. 1992, 80.

  16. 『歴代大管長の教え—ジョセフ・スミス』207

  17. 『聖句ガイド』「ジョセフ・スミス訳」の項,「福音ライブラリー」参照

  18. 教会歴史のテーマ「聖書のジョセフ・スミス訳」,「福音ライブラリー」

  19. Dallin H. Oaks, “Scripture Reading, Revelation, and the JST,” in Plain and Precious Truths Restored: The Doctrinal and Historical Significance of the Joseph Smith Translation, ed.Robert L. Millet and Robert J. Matthews (1995), 13.