マタイ11－12章；ルカ11章

救い主は，バプテスマのヨハネの偉大さを称賛されました。主は，重荷を負って御自分のもとへ来る者に安息を与えると約束されました。イエスは安息日に人を癒されましたが，パリサイ人は，サタンの力によって悪霊を追い出したと言って主を非難しました。救い主は，聖霊を汚すことについて警告されました。主は祈りに関する導きを与え，悪霊を追い出す御自身の力について証されました。主はパリサイ人および律法学者の偽善を非難されました。

リソース

背景と文脈

マタイ11：2－6

バプテスマのヨハネはイエスがメシヤであられることを疑っていたのだろうか

獄中にいたバプテスマのヨハネは，二人の弟子を遣わし，イエスがメシヤであるかどうかを尋ねさせました。イエスはこの弟子たちに，ヨハネのところに戻り，救い主が行われた奇跡を目にしたことを証するように言われました。ヨハネが弟子たちを遣わしたのは，イエスがまことのメシヤであられることを弟子たち自身に学ばせるためだったのかもしれません。しかしながら，自分で証を受けていたとはいえ，ヨハネもまた，再び確信を抱くことを必要としていた可能性もあります。いずれにせよ，イエスはヨハネを預言者よりも偉大な者であると称賛されました。

マタイ11：7－15

バプテスマのヨハネがこれほど偉大な預言者であったのはなぜだろうか

預言者ジョセフ・スミスは，バプテスマのヨハネが最も偉大な預言者の一人と見なされている理由を説明しています。

「第1に，ヨハネは主の前に道を備えるという神聖な使命を託されました。そのような使命を託された人が彼以前に，あるいは彼以降にいたでしょうか。だれもいません。

第2に，ヨハネは重要な使命を託され，その手で「人の子」にバプテスマを施すように求められました。そのような栄誉を受けた人がいたでしょうか。そのような大いなる特権と栄光を受けた人がいたでしょうか。……

第3に，当時ヨハネは地上に存在していた王国の諸事において，律法に基づく唯一の管理者であり，力の鍵を持つ人物でした。……以上の3つの理由が，ヨハネを……最も偉大な預言者としているのです。」

マタイ11：14

バプテスマのヨハネはどのような点でエライアスだったのだろうか

次の項では，この質問が取り上げられています：「ルカ1：17。『エリヤの霊と力』とはどのような意味だろうか」および「ヨハネ1：19－28。『あなたはエリヤですか』」。マタイ11：15のジョセフ・スミス訳もさらなる洞察を与えてくれます：「もしあなたがたがそれを受け入れるならば，まことに彼は，来て万事を備えるべきエライアスであった。」

マタイ11：16－19

「子供たちが広場にすわって，ほかの子供たちに呼びかけ」という表現には，どのような意味があるのだろうか

イエスは当時のユダヤ人を，広場で遊びに興じる子供たちにたとえられました。結婚式のお祝いごっこをすると，子供たちは遊び友達が踊ってくれないと文句を言いました。お葬式ごっこをすると，遊び友達が悲しんでくれないと文句を言いました。この対比は，イエスの時代の人々が，宗教を子供じみた遊びのように扱っていたことを示唆しています：彼らは，自分たちの作り上げた規則や期待に従わないことに関して，バプテスマのヨハネとイエス・キリストに文句をつけていたのです。彼らは，信仰生活を送るに当たってヨハネはあまりに厳格であると不満を漏らしました。その一方でイエスが来られ，人々と自由に交流されると，イエスには厳格さや聖さが足りないと不平を言ったのです。

マタイ11：28－30

くびきは何を表しているのだろうか

聖書の時代，人々はしばしば重いものを肩に担いで運びました。水がめ，衣類，石，子羊などが挙げられます。非常に重いものは，牛などの大きな動物の肩に載せました。この文脈において，「肩は労働，重荷，責任の象徴となった」のです。

くびきは，牛の肩にかける首かせのようなものです。動物たちを横に並べてつなぎ，一頭では引いて行くことのできない積み荷を協力して運ぶことができるようにしてくれます。この文脈において，くびきはわたしたちを救い主に結びつける聖約の関係を象徴しています。キリストとともにくびきを負うことで，わたしたちは主の力を引き出すことができ，人生の重荷を独りで背負う必要がなくなるのです。

マタイ12：1－13

「安息日に良いことをするのは，正しいことである」とは，どのような意味だろうか

「マルコ2：23－28。律法学者とパリサイ人が，安息日における弟子たちの行動に抗議したのはなぜだろうか」を参照してください。

マタイ12：24

ベルゼブルとは何者だろうか

聖書において，ベルゼブルは悪霊の長，すなわちサタンの称号として用いられています。

マタイ12：29

「強い人」が縛られることは，どのようなメッセージを伝えているのだろうか

この節において，「強い人」は悪魔を表し，強い人を縛る者はイエス・キリストを表しています。救い主は悪魔を追い出された際に，御自分がサタンを支配する力をお持ちであることを示されました。ジェームズ・E・タルメージ長老は次のように説明しています：「キリストはまずサタンのとりでを攻撃された。そして人の体の中に不当に侵入している悪霊を追い出された。もしキリストがまず，『強い人』すなわち悪霊の頭であるサタン自身を征服しなかったら，どうして悪霊を追い出すことがおできになったであろうか。」

マタイ12：31－32，43－45

「聖霊を汚す言葉」とは何だろうか

「聖霊を汚す言葉」という罪は，聖文では「聖霊を否定する」，あるいは「赦されない罪」とも表現されています。

預言者ジョセフ・スミスは次のように教えています：「赦されない罪を犯すとは，何をすることなのでしょうか。それは，聖霊を受け，天が自分に開かれ，神を知った後に，神に背くことです。」預言者はこのように続けています：「聖霊に逆らう罪以外のすべての罪は赦されるでしょう。……聖霊に逆らう罪を犯した者には，まったく悔い改めの余地はありません。このような者は輝く太陽を見ていても太陽は輝いていないと言い，自分にもろもろの天が開かれているのにイエス・キリストを否認し〔ます。〕……そうして彼らは敵となり始めるのです。」

ジョセフ・スミス訳では，43－45節において，救い主が聖霊に対する冒涜の罪について教えられたことを明らかにしています。

マタイ12：39－40

しるしを求めることのどのような点がよくないのだろうか

あるとき，預言者ジョセフ・スミスはこのように教えました。「信仰はしるしによってではなく，神の言葉を聞くことによってもたらされるのです。」

わたしたちが信仰をもって行動するなら，主はあらゆる福音の真理を確認する証をもたらしてくださいます。しかし，神の力の目に見える証拠を信じる条件とする人々は，信仰を避けることになります。彼らは代価を支払うことなく証拠を求め，責任を負うことなく結果を求めているのです。

マタイ12：41－42

「ニネベの人々」および「南の女王」とはどのような意味だろうか

「ニネベの人々」という言葉は，イスラエルの敵であった古代ニネベの住民を指しています。イスラエル人であるヨナは，彼らに悔い改めを説くために召されました。ニネベの人々はその警告を聞き入れ，悔い改めました。「南の女王」とは，シバの女王を指します。イスラエル人ではありませんでしたが，彼女はイスラエルの王ソロモンを大いに尊敬していました。

救い主は，救い主を信じないパリサイ人を叱責されたとき，ニネべの人々とシバの女王について言及されました。イエス・キリストは「ヨナにまさる者」，「ソロモンにまさる者」であられます。ところがイスラエルの子孫であり，より多くの知識を得ていたはずのユダヤ人指導者らは，イエス・キリストを敬い従うことを拒んだのです。

ルカ11：5－10

真夜中にやって来た友人のたとえは，どのようなメッセージを伝えているのだろうか

当初，たとえ話に出てくるこの友人は，夜遅い時間であったことを理由に，相手にパンを与えることを拒みました。彼は子供たちとすでに床に就いていたのです。最終的に起き上がってパンを渡すよう友人を駆り立てたのは，友情ではなく，やって来た男性の執拗な要求でした。

男性がパンをもらいにいった友人は，天の御父を表しています。このたとえは，天の御父は確かにわたしたちを愛しておられますが，天の扉を開くのは，わたしたちの粘り強く，義にかなった，信仰深い祈りであることを教えています。ジョセフ・スミス訳では，このメッセージを明確なものとするために，このたとえに前書きが加えられています：「あなたがたの天の御父は，何であれあなたがたが求めるものをあなたがたに与えないことがあろうか。」