第20課
家庭の問題を克服して一致を図る
目的
幸福な家庭生活を築くために問題を克服し,一致を目指すように励ます。
導入
写真ページ20-a「一致した家族の生活の基は愛である」を見る。
ジョセフ・F・スミス大管長は,理想的な家庭を築くために行わなければならないことを次のように述べている。
「理想的な家庭……とは一体どのような家庭を言うのであろうか。それは……父親が神の与えてくださった家族を第一に考えて献身し,家族が父親のことをいつも心に覚え,父親と母親,子供と両親の間に信頼,一致,愛,神聖な献身がある家庭である。」(『福音の教義』293)
すべての人は理想的な家庭を築こうと努めているが,時としていさかいを起こすことがある。預言者ジョセフ・スミスでさえ家庭の中に不一致を感じることがあった。
例えば,『モルモン書』の翻訳をしていたころのある朝,ジョセフは妻のエマがしたことに心を乱されていた。それからジョセフは『モルモン書』を翻訳しようとしたが,まったく進まなかった。そこでジョセフは森へ行って祈り,帰って来てエマに
家庭内の不和の原因を把握し,問題を解決するように主は望んでおられる。
家庭不和の原因
聖文によれば,不和と争いのおもな原因はサタンの影響によるものである。
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3ニーファイ11:29-30を読む。
争いの心が家庭内に入り込むと,主の
個人的な弱さが争いのもとになることもある(ヤコブの手紙4:1参照)。心に平安を感じていない人が,ほかの人と協調しながら生活することは非常に難しいことである。不和の原因になる弱点には,肉欲,金銭欲,不道徳な思い,党派心などがある。スペンサー・W・キンボール大管長は特に一つの弱点について述べている。「夫婦が貧困,病気,落胆,失敗,そして家族の死に遭遇しても,二人の平安を取り去ることはできない。結婚は,そこに自分本位な考えがないかぎり成功する。利己心を完全になくすならば,問題や苦難は崩れることのない一致へと夫婦を近づけるのである。」(Marriage and Divorce,1976年,19,22)
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スペンサー・W・キンボール大管長の言葉によれば,結婚生活の多くの不和と不幸の原因は何か。
キンボール大管長が述べているように,一般に不幸の原因と考えられている貧困や病気などの問題が実際には家族のきずなを強めることがある。
これまで話し合った中で,家庭に不和を招く3つの要因とは何か。(答えを黒板に書く。サタンの影響,個々の争い,利己心などが挙げられるであろう。)
家族の問題を処理する
次に挙げるのは,家族の問題を克服あるいは解決するために主が与えられた方法である。
責任を受け入れる
両親と子供は互いに対して責任がある。
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エペソ6:1-4からこの責任について読む。若人は両親に対してどんな義務があるか。両親の子供に対する義務は何か。これらの責任を受け入れることは家庭の一致を促進するうえでどのように役立つだろうか。
不親切な言葉を避ける
怒りや不親切な言葉が家庭の中にあってはならない。ボイド・K・パッカー長老は次のように勧告している。「結婚の聖約を交わしたら,意地の悪い言葉を〔決して吐いてはならない。〕一言たりとも。それは必要な言葉ではないし,また好ましいものでもない。結婚生活には口論や問題,争いが付き物であって当然のことであるという人々は多い。……しかし,意地の悪い言葉を一言も吐かずに愛に満ちた生活をしていくことができる。わたしはこれを知っている。」(Eternal Marriage, Brigham Young University Speeches of the Year,1970年4月14日,6)柔らかく理解ある答えは人を静め,激しい言葉はさらなる争いを引き起こすだけである(箴言15:1参照)。
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意見の相違を話し合うことと論争との違いは何か。
誤りを認める
スペンサー・W・キンボール大管長は次の勧告を与えている。
「人間であるあなたは,いつの日か,たとえささいな口論であれ,意見の相違という状態に遭遇するであろう。……仮に,傷を負わせられたとしよう。悪口を浴びせられたとしよう。あるいは心を傷つけられたとしよう。いずれの場合も,すべて悪いのは他人だと思い,傷をいやすための策を施さず,時が過ぎていく。夜もいらだつ心が収まらず,陰気で情けない,さらに誤解が募っていく一日である。傷の上にさらに傷が重なり,ついに弁護士が登場し,家庭は分裂し,親子の生活に大きな
しかし初期に服用すれば,数分間で正しい考えに戻ることのできる治療薬がある。……それは,あなたの愛,あなた自身,家族,理想,昇栄,永遠をかけて一か八かやってみるわけにはいかないことを知る薬である。プライドを制し,勇気を奮って〔あなたは妻に言う〕。『すまなかった。傷つけるつもりはなかった。どうか赦してくれ』と。すると〔妻は言う。〕『いいえあなた,わたしの方が悪かったのよ。どうぞ赦してください』と。そしてあなたがたは腕を組み合って,再び人生は〔穏やか〕になる。そして,夜休むとき,いさかいを忘れ,二人の間にはもはや一分の隔たりもなく,ともに家族の祈りをささげる。」(Faith Precedes the Miracle,1972年,134)
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誤解や口論の原因になるものは何か。問題の原因を明らかにすることは,問題を解決するうえでどのように役立つか。自分の誤りを認めることは,なぜそれほど難しいのか。
スペンサー・W・キンボール大管長は,誤りを認めて「わたしが悪かった」と言うように勧めている。真心からこれを行うならば,家庭内の不和の解消に向かって一段と進歩するのである。両親は二人の間だけでなく,子供に対しても同様に行う必要がある。
祈り
家庭の一致は,不和が解消するようにと家族の祈りや個人の祈りの中で願い求めるときに強められる。
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3ニーファイ18:19-21を読む。家族の中で祈る義務があることに注目する。祈りは家族の問題の解決にどのように役立つか。
親切
家庭生活をいっそう幸福にするための原則の一つに親切があると聖文は教えている。事実わたしたちは,愛し,赦し,親切にするように命じられており,家庭の中では大人も子供も,敬意と,キリストが示された親切心をもって互いに接するように勧告されている。以上の事柄において,わたしたちは常にキリストを模範とすべきである(エペソ4:29-32参照)。
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割り当てておいたアロン神権者に,若い男性が家庭の一致を促すためにできることについて話してもらう。
スペンサー・W・キンボール大管長は,家族の幸せを築く方法について次のように述べている。「『幸せを得るための代償は何であろうか。』あなたはこの問いの答えを聞いたら,それが簡単であることに驚くことだろう。次のような
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親切と祈りは,家庭の問題を予防し解決するうえでどのように役立つか。
次に挙げるのは,家庭の中に一致を打ち立てた母親の話である。
「それは,わたしたちが教会のインディアン学生紹介制度を通じて10歳のウェインを我が家に引き取ってから1週間後の出来事でした。ウェインは賢いかわいい少年でしたが,御多分に漏れず,ほかの子たちに自分を証明してみせなければなりませんでした。彼は少年たちとよくけんかをし,いちばん強い子にも負けませんでした。
そんなウェインの担任の先生から電話が来たのです。先生は学校でウェインとの間に問題があると教えてくださいました。ウェインは先生がたに対して乱暴を働くということでした。それは大きなショックでした。自分の子には一度もなかった問題なので,わたしは動転してしまいました。もう頭に血が上ってしまって,ウェインが学校から帰ったらどう言おうかと,その下げいこを始めました。わたしは大ごとになる前に是が非で食い止めなければと自分に言い聞かせました。
悪いことは重なるもので,ウェインは隣の子とけんかをして帰宅が遅くなりました。バス停から道々ずっとけんかをしてきて,我が家の玄関先の芝生の上て二人は取っ組み合いを始めました。わたしは少しの間見ていましたが,けんかがひどくなってきたので,ドアの所へ行って家に入るようウェインを呼びました。
彼はわたしを無視し,相手の少年から離れようとしませんでした。それを見てわたしはますます怒りが募ってきました。わたしはウェインに,家に入りなさいと命令しました。かっとなっていたので,これではさっきの問題は話せないと思い,読書をしなさいと言ってウェインを自室に行かせました。
わたしは怒りに震えながら自分の寝室に退き,ひざまずいて祈りました。問題をどう処理したらよいかの知恵を求め,
ウェインの部屋のドアを開け,彼が本を手にしてベッドの端に座っているのを見たとき,様々な思いがわたしの頭をよぎりました。その部屋に座っているウェインは場違いに見えてきました。彼はここに来るまで,野原を自由に駆け回っていたのです。瞬間わたしの胸には目の前の一人ぼっちの少年に対する思いが込み上げてきました。懐かしい土地から突然引き離されて別世界に投げ込まれ,まるで違った規則の下での生活を強いられている少年。彼は仲間の少年たちに,それより優れはしなくても,せめて同じくらいに強い子であることを示して見せなければならなかったのです。
わたしはベッドに並んで腰かけ,彼の肩に手をかけました。口を突いて出た最初の言葉に,わたしは自分でも驚きました。『ウェイン,怒ってごめんなさいね』と言ったのです。わたしはそれから,先生からの電話のことを話し,説明の機会を与えました。とてもよい話し合いができました。ウェインはわたしを信頼してくれました。わたしたちはほんのささやくような小声で話をしたのです。その話し方は,わたしが助けを求めて天の御父に祈る前に下げいこをしたものとはずいぶん違っていました。ほんとうに霊的な経験で,ウェインとわたしの関係は何よりもそのことでとてもよくなりました。
祈ることのありがたさと,求めたときにわたしたちを導いてくださる聖霊の
まとめ
家庭の問題を予防し,解決を促す要因
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責任を受け入れる
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不親切な言葉を避ける
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誤りを認める
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祈り
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親切
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福音に完全に従う
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自分以上に伴侶を愛する
チャレンジ
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家庭内の不和の原因を明らかにして,さらに幸福な家庭を築く。
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家庭で不親切な言葉を使ったら,自分の誤りを認める。
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思いやりをもって家族と接する。
参照聖句
マタイ7:12(ほかの人との関係)
ガラテヤ5:22(御霊の実)
教義と聖約88:119-26(主から教会員への勧告)
教師の準備
レッスンの前に以下のことを行う。
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『福音の原則』第36章「家族は永遠に」を読む。
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黒板とチョークを用意する。
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アロン神権者に,家庭内の一致を促すために若い男性にできる方法について話す割り当てを与えてもよい。
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閉会に「家庭の愛」を歌う。
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レッスンの中で引用文や聖句を読む割り当てを生徒に与える。