その他のリソース
第5課:執事の義務


第5課

執事の義務

目的

執事の義務を理解する。

導入

教会の管理監督は,執事に次の勧告を与えた。

「すべての人間は神の子供であるが,皆さんはそれ以上のものを持っている。それは,神の名により行動する権能である。これが世の人々と皆さんを明確に区別している。この権能は,皆さんを自動的にほかの人より優れた人間にするのではなく,より良い生活を送る責任を皆さんに課するのである。

皆さんは自分が神権を持つ神の子供であることを知っている。したがって,この偉大な祝福にあずかれない人々よりいっそう多くの期待が皆さんに寄せられているのである。」(ビクター・L・ブラウン「アロン神権-確かな土台」『聖徒の道』1973年1月号,37)

執事の義務

執事は主の用向きを受けており(教義と聖約64:29参照),主の業に携わる。義務を遂行して神権を尊重するならば,それは救い主を尊ぶことになる。救い左への愛を表す最善の方法の一つに,執事としての義務を遂行することがある。この義務には教会員を見守り,聖餐せいさんのパスを行うことが含まれる。

黒板に「教会員を見守る」「聖餐のパス」と書く。

教会員を見守るとは,特に教会員が物質面での必要を満たせるように助けることである。衣食住は物質面での必要である。執事は断食献金を集め,福祉事業で働き,困窮者に奉仕することにより,教会員の物質面での世話をする監督を助ける。

次に挙げるのは,一人の若い執事が断食によるささげ物を集めることを通して,その責任の大切さを学んだ物語である。この話は,困窮者に分与するため食料,衣服,燃料を断食によるささげ物としてささげていた何年も昔のことである。

「執事であるわたしには,近所の家から断食によるささげ物を集める責任があった。管理者のピーター・ライド兄弟は,ほおひげのある中年の紳士で,彼の責任は断食によるささげ物を集めて貧しい人に施す手配をすることであった。……

わたしの仕事は決められた家を一軒一軒訪問し,……貧しい人々のためのささげ物を受け取ることであった。ある家では大きな石炭の塊,ほかの家ではまき,そのほか小麦粉,果物,砂糖,べーコンといったふうであった。……

ある土曜日のこと,わたしが属しているフットボールチームは試合をすることになっていた。わたしは試合に出たくて仕方がなかった。ささげ物を集めるのは自分の責任であり,それを怠るのは悪いことだというのも分かっていた。しかしどうしても試合に出場したかったのである。わたしは責任よりもフットボールの試合を選んだ。……

翌朝早く,ライド兄弟が裏口の戸をたたき,わたしに会いにやって来た。わたしは良心の呵責かしゃくを感じ,逃げ出してどこかに隠れたいと思った。わたしは彼の前で顔を上げることができなかった。しかしライド兄弟は一言こう言っただけであった。『ウィラード,少し散歩する時間はあるかい。』

秋の肌寒い日であった。

わたしは彼について行くと,初めに街角に近いある小さな板張りの家に向かった。ライド兄弟が入り口の戸を静かにたたくと,背の低いやせた婦人が出て来た。

『ライド兄弟,昨日食べ物を頂けませんでした。今は何も食べ物がありません。』

ライド兄弟はすまなそうに答えた。『申し訳ありません。今日中に必ずお持ちします。』

庭を渡って次の家を訪れた。戸をたたくと,『どうぞ』という声が聞こえた。

家の中では老夫婦がベッドに横たわっていた。『ライド兄弟,石炭がないので,こうして寒さをしのぐしかありません。』

別の家では,小さな子供たちと母親が体を寄せ合っていた。赤ん坊は泣き,子供たちの顔は涙でぬれていた。

もう十分だった。……

わたしは務めを怠ったことを悔やみ,泣きたい思いだった。……その日の午後には,食物と石炭が届けられた。わたしは貴重な教訓を学んだのである。」(Willard R. Smith, quoted in “Program Outline for Teaching Observance of the Law of the Fast,” 1965年,19—20)

しかし,断食献金を集めることは,教会員を見守る方法の一つにすぎない。そのほかにも例えば,未亡人を助けて菜園に種をまき,水をやり,除草する。収穫の時期には刈り入れや食糧の貯蔵の手伝いもできる。こうして,彼女の物質的な必要を満たせるように援助するのである。

  • 写真ページ5-a「断食献金を集めることは執事の義務の一つである」,5-b「福祉事業で定員会として働くことは,教会員を見守る執事の責任の一つである」を見る。

教会員を見守ることには,会員が戒めを守れるように助けることも含まれている。

  • 会員が戒めを守れるように助けるにはどうしたらよいだろうか。(わたしたちの言葉と行いを通して福音を会員に教える。)

  • 生徒に教義と聖約20:58-59を読ませる。警告し,説き明かし,勧め,教えて,キリストのもとに来るようにすべての人を招くために何ができるだろうか。

警告し,勧め,教えるときに,教会員の霊的な必要を満たすのである。そのための一つの方法は,教会で話をすることである。十分な祈りをもって話を準備するならば,聖霊は,話す言葉が真実であることを会員にあかししてくださる。また,集会について会員に知らせたり,ホームティーチャーとして召された場合にその責任を果たすことも,執事の義務を遂行する方法である。

会員の霊的な必要を満たす最も神聖な義務の一つに,聖餐のパスがある。この責任を果たすときには,主の御霊みたまを受けて儀式の重要性を自覚すべきである。主に代わって聖徒に聖餐を配るのであるから,主の代表者としてふわしく備え,主が望まれる態度と服装で臨まなければならない。

ある中央幹部は,執事として働いたことを思い返して次のように語った。「わたしは,そのような神聖な〔聖餐〕式に参加することをいかに名誉と考えていたかを覚えている。また,よく両親がこの儀式に仕えるにふさわしいよう手や心をいつも清潔にするように教えてくれたことを思い出す。」(ビクター・L・ブラウン「アロン神権-確かな土台」『聖徒の道』1973年1月号,37)

正しい方法で聖餐のパスを行うならば,もう一つの執事の義務も果たすことになる。それは,互いに教化し合うこと,すなわち強め合うことである(教義と聖約107:85参照)。会員は熱心にパスを行う姿を見て教化され,それぞれの義務を遂行しようと強い望みを抱くであろう。

  • 写真ページ5-c「聖餐のパスは神聖な責任である」を見る。

執事がその召しを完全に果たすためにはどのようなことをなすべきだろうか。答えを黒板に列記する。(「教師の準備」の項に記載された義務を含めるようにする。)

執事の義務を学ぶ

執事がその義務を学ぶ方法や場所はたくさんある。一つの方法は,個人の勉強と祈りである。一人になれる時間と場所を決めて,自分に与えられた義務を学ぶために聖文を研究し理解力を求めて祈るのである。

家庭で両親や兄から学ぶこともできる。家庭の夕べでこの義務について学び,日曜日の神権会で執事定員会の会長から指導を受けることもできる。執事定員会会長は定員会の執事を統轄し,その義務を教えるように主から命じられている(教義と聖約107:85参照)。執事の職にあって取るべき行動と義務を理解できるように助けるのである。そのために会長は神権アドバイザーや監督会/支部長会の一員から執事の義務について訓練を受ける。(アロン神権定員会が組織されていなければ,監督会/支部長会または神権役員がアロン神権者を統轄し,各アロン神権定員会の会長としての義務を遂行する。)

義務を学ぶ最善の方法は実行である。実際に義務を遂行するときに,さらに理解を深め主を喜ばせるのである。そして,主はわたしたちに聖霊を通して多くのことを明らかにされる。執事はいつも聖霊を伴侶はんりょとすることができるようにふさわしい生活を送る必要がある。

執事定員会が執事を助ける方法

定員会の会員は様々な方法で助け合える。定員会の集会に集って友情を深め,執事の義務を互いに教え,それを果たすために活動を計画するのである。執事の義務には,教会員の物質面での必要を満たす,伝道に備え参加する,系図を調べて死者のためのバプテスマを受ける,定員会の会員となるにふさわしい年代の若い男性の活発化を図る,福音を学ぶ,などが含まれる。定員会は,これらの義務を遂行するためにともに働く場を提供するのである。そして義務を果たすことによって,わたしたちは神の王国の建設を助けるのである。

定員会での奉仕は,個々の会員に福音にあって成長する機会も与える。福音の中にあって責任を果たすときに知識を増し,定員会の役員として働くことにより指導力を伸ばすのである。

管理する権能を持つ人々が定員会会長を選び,その職に召す。会長は2名の副会長を推薦し,彼らは権能を持つ人が承認したうえで召される。定員会アドバイザーは役員にその義務を教え,定員会集会で福音のレッスンを行う。定員会の役員は,会員に彼らの神権に関する義務について指示を与える。このようにして,定員会の会員は教会員を見守る方法を学ぶのである。

また定員会は,必要な助けを与え友情をはぐくむ場を提供する。真理に対する確信を失ったり落胆したりしたときには,定員会の会員から励ましを受けて問題の解決方法を見いだすことができる。次の話は,互いに関心を示すことによってどれほど強め合うことができるかを表すものである。この話では,定員会のあまり活発でない会員に関心が向けられた。

教会にあまり活発でない執事がいた。彼は神権会や教会の集会にまったく姿を見せなかった。日曜日には家の周りで仕事をするのが普通であり,そんなときに彼はよく神権会について考え,友達が来てくれたらと思った。しかし,だれも神権会に誘ってくれなかったので,行きたい気持ちにもならなかった。ある日曜日に彼が部屋の壁を塗っていると,執事定員会の会長会が訪問した。彼らは次の日曜日の神権会に出席できるかどうか尋ねた。彼は,できないと答えた。その返事に3人はがっかりしたが,決してあきらめなかった。それから3人は毎週日曜日に,神権会に誘うために彼の家を訪問した。

この少年は執事として教会に出席したことはなかったが定員会会長会の愛と関心に深い印象を受け,啓発された。このような関心が後に少年の心を動かして教会に行きたいと思わせたのである。現在彼は教会に活発で,神権の義務を果たしている。

まとめ

執事としての義務を学び,神権の召しを尊んで大いなるものとするならば,自分自身を強め,ほかの人も同じことができるように助けるのである。これが「教会員を見守り,教会の常任教職者となる」(教義と聖約84:111)ということの意味である。

チャレンジ

  1. 福音に従って生活し,模範的な神権者となる。

  2. 執事の義務について教える聖句を研究し祈る。

  3. 依頼を受けたら,断食献金を集める。

  4. 聖餐の儀式の間,敬虔けいけんな態度を保つ。聖餐のパスは,主の代理人としてふさわしい態度と服装で行う。

教師の準備

レッスンの前に以下のことを行う。

  1. 教義と聖約20:38-60107を読む。

  2. クラスで話し合う間に,以下の執事の義務を黒板に書く準備をする。黒板が使えない場合は,表にする。

執事の義務

  1. 教会員を見守る。

  2. 聖餐のパスをする。

義務を果たす方法

  1. 言葉と行いにより福音を教える。

  2. 会員に集会について知らせる。

  3. 会員の物質面での必要を満たす。

    1. 断食献金を集める。

    2. 福祉事業で働く。

  4. 聖餐式でパスの責任を受ける。

画像
断食献金を集める

5-a 断食献金を集めることは,執事の義務の一つである

画像
福祉事業で定員会として働く

5-b 福祉事業で定員会として働くことは,教会員を見守る執事の責任の一つである

画像
聖餐のパス

5-c 聖餐のパスは神聖な責任である