第23課
職業技術の向上と改善
目的
主が労働を重視しておられることを理解し,賢明な職業選択をするにはどうしたらよいか,また職業上の技術を伸ばすにはどのような方法があるかを学ぶ。
導入
堕落後のアダムに与えられた最初の指示として記録に残されたのは労働に関する永遠の原則であった。主はアダムに告げられた。「あなたは顔に汗してパンを食べ,ついに土に帰る。」(創世記3:19)
天の御父はわたしたちにも同じ戒めを与えられた。大管長会は次のように宣言している。「わたしたちは働くように求められているが,これは祝福である。わたしたちは不平を言わずに進んで働くべきである。」(“First Presidency Urges Frugality,” Ensign,1975年3月号,75)労働は永遠の命に至る
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写真ページ23-a「労働は天の御父から与えられた祝福である」を見る。
賢明な職業選択
職業の選択は非常に重要である。情報を集め,祈りをもって決定し,訓練と経験を積み,それから家族を養うために自分にできる職業を探すのである。
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次の4段階を黒板に書く。
情報を集める
若いうちに,自分の才能や能力や興味を考慮して自分に最適の職業を決める。楽しみながらできる仕事であれば,さらに良い結果が得られることも忘れてはならない。すでに仕事に就いていて職業を選択する余地のない人もいるが,職業人としての自分を向上させるために同じステップを踏むとよい。
職業を決める前に,その仕事の将来性を考慮する。世の中は常に変化しており,それとともに多くの職業が消え去り,別の職業が生まれている。仕事の将来性を判断するための一つの方法は,友人や
仕事を選ぶ際には,教会から離れることのない仕事を探すべきである。仕事によっては長時間家庭を離れたり,福音に従った完全な生活を送るうえで妨げとなるような労働条件が要求される。そのような状態は,慎重に仕事を選択することにより避けられる。もし現在の職場に満足できなければ,自分に適したほかの職場で働くことができる。
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写真ページ23-b「主に求めるならば,職業に関するわたしたちの選択を確認してくださる」を見る。
祈り
職業を探すときに主の助けを求めることは非常に重要である。決定は自分自身が行うが,熱心に主に祈るならば,賢明な選択ができるように助けてくださる。しかし,祈りだけでは十分でない。ブリガム・ヤング大管長は次のように述べている。「わたしは信仰をもって考えるに,主がわたしたちに焼いた豚肉や,バターを塗ったパンを与えてくださるとは思えない。……主はわたしたちに穀物を育て,地の産物を収穫し,住居を建てる能力を与えてくださるのである。」(Discourses of Brigham Young,1954年,291)
最終的な決定を下すに当たってよく祈り,聖霊の導きを受けているときに感じる心の平安を得る必要がある。それから決定に従って行動するのである。日本のある兄弟は,この原則を適用して自分の生活と職業を変えた。
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次の話を読む。
この兄弟は床屋で働いていた。ある日,宣教師の訪問を受け,後にバプテスマを受けた。
福音を学ぶ中で安息日を
数人の生徒に,正しい決定をするうえで祈りがいかに役立つか話してもらう。
職業技術の向上
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写真ページ23-c「職業上の技術を向上させるには時間と努力が必要である」を見る。
職業技術を向上させるには,時間と努力が要求される。雇用条件を改善したいと望むならば,必要な技術と訓練を受けるために進んで研究し,働かなければならない。
職場実習,通信教育,現職訓練,専門学校,手引き類,書物などが技術の向上に役立つ。また,様々な経営者と話し合ったり,職場訪問やほかの仕事を実際に経験してみたりすることも知識や技術を高める。
読み書きの能力は職を得るための基本技術である。職を探してはいるが,読み書きができないというような人は,その能力を身に付けるために援助を求めるべきである。家族や教会,地域社会においてほかの人々の知識や情報を活用することに
目標を立てたら,それを達成するためには大きな犠牲を払う心構えをしなければならない。すなわち,技術を向上させるために必要なすべての事柄を進んで行うのである。成功は,求められるところを実行し,目標を目指して努力する人だけに与えられる。「人は自分のまいたものを,刈り取ることになる。」(ガラテヤ6:7)
南太平洋に住むある教会員は,家族を養い職業技術を向上させるための努力をし,結果を収めた。
ビリアミ・ハビリ兄弟は少年のころに,将来家庭を持ったときにその家族を養えるだけの技術を身に付け向上させるには,個人の努力が重要であることを学んだ。やがて結婚すると,ハビリ兄弟は一生懸命に働いて,安い農場を購入するだけの資金を蓄えた。
彼が購入した農場は海に近い丘の上にあったので,風で作物が傷みやすく,ほとんど価値がないと思われていた。しかし,彼は作物を植えるために熱心に土地を耕した。また,ありとあらゆる最新の農業技術を学ぶために多くの時間を費やした。彼が必要とする知識の中にはフランス語の書物にしか掲載されていないものがあった。そこで,農業について記された書物を読めるだけのフランス語を彼は独力で学んだ。
彼はそれらの書物から土壌を肥やす方法を知ったが,その地域のほかの農民たちは自分からそれを知ろうとはしなかった。また,作物を病気から守って害虫を殺す農薬の使用法についても学んだ。どの作物が高い値段で取り引きされ輸出されるかも分かった。多大の努力と主の助けにより,ハビリ兄弟が農場経営に成功したことは,少しも意外なことではなかった。
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わたしたちの地域で将来性のある職業は何か。
これらの仕事は,必要な技術を身に付けた人だけが得られるであろう。
求職
才能のある人も雇用主と接触しなければ雇われることはない。自営して製品やサービスを売ろうとする人は,買い手と接触しなければならない。したがって,職のない神権者は仕事を求めて出向かなければならない。
もし仕事を見つけることが難しければ,神権定員会から援助を得る必要がある。ある教会の指導者は次のように述べている。「求職者や雇用の状況に関する情報が流れるのは神権の系統を通してである。定員会は仕事を探している人やさらによい仕事に就きたいと願っている人々を知り,彼らが仕事を見つけることができるように助けなければならない。」(ハワード・W・ハンター “Prepare for Honorable Employment”Ensign,1975年11月号,123)
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仕事を探している兄弟を助けるために定員会としてどのようなことができるか。
仕事の改善
使徒パウロは教会の兄弟たちに「熱心で,うむことなく」(ローマ12:11)働くように勧告した。わたしたちは常に最善を尽くし,仕事のやり方を改善する方法を探すべきである。このためには,正しい態度で仕事に臨まなければならない。次のチェックリストは,より大切な仕事上の心構えを保つために役立つであろう。
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わたしは時間を有効に使っているか。
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わたしは雇用主,管理者,同僚と協調して仕事を進めているか。
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私用や教会の用で会社の設備や備品を,無許可あるいは代価を払わずに使っていないか。
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出社時間や休憩から戻る時間をもっと早くできないか。
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わたしは最善の方法で仕事をしているか。
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わたしは同僚や管理者,雇用主に気持ちよく接しているか。
次の話を読む。
ヒーバー・J・グラント大管長は,職業上の技術を伸ばし,人より余計に努力することの大切さを10代のときに学んだ。ある日友達とビー玉で遊んでいると,一人の少年が銀行の帳簿係を見て言った。「あの人は月に150ドルもらうんだ。」ヒーバーは,それだけのお金を得るには1か月の間に毎日120足の靴を磨く計算になると思った。そして,いつの日にか銀行の帳簿係になろうとその場で決心した。
当時の銀行の記録や帳簿はすべてペンで記入されたので,有能な帳簿係の条件の一つに書き方の能力が挙げられていた。この仕事に就くために,ヒーバーはまず習字の練習を始めた。
最初のうちはとても下手で,友達からあざけられた。彼は自尊心を奮い立たせてこう言った。「いつか君たちに習字を教えられるようになるよ。」この努力の結果,彼は大学では習字の教師になった。お祝いのカードや結婚式の招待状,保険証書,株券,法律書類などを代筆した。
ヒーバーはこのように述べている。「わたしはある年の元日に40ダースのカードに“Happy New Year”という文とその人の名前を書いて,20ドルを手にしたことがある。次の年のおおみそかには,遅くまで事務所で名刺を書いていた。すると上司のワスワース氏が入って来て,仕事は順調だと愉快そうに言った。彼は,わたしが無報酬でほかの会社の帳簿を付けたことについて語った。彼の称讃の言葉を聞いて,わたしはとても幸福だった。それから,ワスワース氏はわたしに100ドルを手渡した。これは時間外の仕事量の2倍に当たる金額だった。雇用主から親切な思いやりと信頼を示されて,わたしが味わった満足感は100ドルの2倍以上の価値があったのである。」(ブライアント・S・ヒンクレー,Heber J. Grant: Highlights in the Life of a Great Leader,1951年,39—42)
まとめ
働く能力があるのは祝福である。主は預言者を通じて,働いて家族を養う責任は神権者にあると告げられた。わたしたちは,経験を積んだ人々から,あるいは訓練によって仕事について良い心構えと技術を身に付けることができる。価値ある仕事を探すには,情報を集め,決定について祈り,職業上の技術を向上させなければならない。
チャレンジ
この課で学んだ,働くうえでの心構えを改善するためのチェックリストの中から一つの項目を選んで向上を図る。
参照聖句
教義と聖約31:5(働く者が報酬を受けるのは当然)
教義と聖約42:42(怠惰な者は働く者の祝福を得ることができない)
教師の準備
レッスンの前に以下のことを行う。
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『福音の原則』第27章「労働と個人の責任」を読む。
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本書第12課「家族の福利に対する父親の責任」を復習する。
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黒板とチョークを用意する。
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働く機会を活用し,技術を向上させるうえで役立つ地域の学校や施設を生徒に探してもらってもよい。
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レッスンの中で引用文や聖句を読む割り当てを生徒に与える。