2010–2019
道を備える

道を備える

与えられている使命と権能は違いますが,アロン神権とメルキゼデク神権は,救いの業において互いに切り離すことのできない存在です。

30歳のころ,わたしはフランスにある小売業の会社で働き始めました。ある日のこと,社長からオフィスに呼ばれました。社長は別の宗教を奉じる善良な男性でした。社長からの次のような質問に驚きました。「たった今知ったんだが,君は教会の司祭(訳注―英語では“priest”で,当教会では「祭司」と訳されている)だそうだね。ほんとうかい?」

わたしはこう答えました。「ええ,そのとおりです。神権を持っています。」

わたしの答えに明らかに興味をそそられた社長は,さらにこう尋ねてきました。「神学校(訳注―英語では“theological seminary”)で学んだのかい?」

「もちろんです。14歳から18歳まで,ほぼ毎日,セミナリーのレッスンで学びました。」わたしはそう答えました。社長は椅子からずり落ちそうになりました。

非常に驚いたことに,数週間後,社長から再びオフィスに呼ばれ,系列会社の一つで取締役を務めてくれないかと言われました。わたしは仰天し,あまりにも若く,経験が乏しいので,そのような重要な役職に就くのは難しいと不安を伝えました。社長は優しくほほえみながら,こう言いました。「そうかもしれないが,それはどうでもいいことだ。君の主義は承知しているし,君が教会で学んできたことについても理解している。わたしには君が必要なんだよ。」

教会でわたしが学んだことについて社長が言ったことの意味は後で分かりました。その後の何年かはいばらの道でしたが,若いころから教会で奉仕することによって得た経験がなければ職責を全うできたかどうか分かりません。

わたしにとって祝福だったのは,ある小さな支部で子供時代を過ごしたことです。人数が少なかったため,青少年は支部のあらゆる面で積極的な参加を求められました。非常に忙しかったのですが,人の役に立てることがとても好きでした。日曜日になると,聖餐のテーブルで儀式を執行し,神権定員会で奉仕し,そのほかにも様々な召しを受けて働きました。週日は,父や大人の神権者の同僚としてホームティーチングを行い,病気の人や苦しんでいる人を慰め,困っている人々を助けました。わたしが若すぎて奉仕できない,あるいは指導できない,などと思う人は一人もいませんでした。自分にとってもすべてが普通であり,当然のことでした。

そのような10代のころに行った奉仕が,自分の証を築き,人生を福音にしっかりとつなぎ止めるうえで役立ちました。わたしの周りには,全力で神権を行使してほかの人たちの生活を祝福する,善良で,思いやりのある男性たちがいました。わたしも彼らのようになりたいと思いました。その当時はあまり理解していませんでしたが,彼らと一緒に奉仕するうちに,わたしは教会,そしてこの世においても指導者となることを学んだのです。

今晩,この集会に出席している,あるいは視聴しているアロン神権者の若い男性がたくさんいます。聴衆の皆さんを見渡したところ,皆さんの多くが年配の男性の隣に座っているのが見えます。恐らくは,父親,祖父,兄,あるいは神権指導者たちで,全員がメルキゼデク神権者でしょう。彼らは皆さんを愛しています。またほとんどの人たちは,皆さんと一緒にいるために,今晩ここにやって来たのです。

様々な世代がこのように集まることによって,神の二つの神権の間に存在する一致と兄弟愛のすばらしい光景を目にすることができます。与えられている使命と権能は違いますが,アロン神権とメルキゼデク神権は,救いの業において互いに切り離すことのできない存在です。密接に関係し合い,相互になくてはならない存在です。

二つの神権の間にある密接な関係の完璧な模範は,イエスとバプテスマのヨハネの相互関係に見いだすことができます。イエスがおられない場合のバプテスマのヨハネを想像することができるでしょうか。ヨハネが行った備えの業がなければ,救い主の使命はどのようなことになっていたでしょうか。

バプテスマのヨハネは,かつて存在した中で最も気高い召しの一つを与えられました。すなわち,「主の道を備え」1,イエスに水でバプテスマを施し,人々に主を受け入れる備えをさせるという召しです。この「正しくて聖なる〔人〕」2 は,小神権に聖任されていましたが,自分の使命と権能が持つ重要性と限界を完全に自覚していました。

大勢の人々がヨハネのもとにやって来て,彼の言葉を聞き,彼からバプテスマを受けました。その正当な権能により,ヨハネは神の人として敬われ,あがめられました。しかし,イエスが姿を現されたとき,ヨハネは自分よりも偉大な御方にへりくだって従い,こう宣言しました。「わたしは水でバプテスマを授けるが,……〔一人の〕かたが,あなたがたの中に立っておられる。それがわたしのあとにおいでになる方であって,わたしはその人のくつのひもを解く値うちもない。」3

御父の独り子であられ,より高位の神権を持っておられるイエス・キリスト御自身も,へりくだってヨハネの権威をお認めになりました。ヨハネについて,救い主はこう言われました。「女の産んだ者の中で,バプテスマのヨハネより大きい人物は起らなかった。」4

それぞれの神権を持っている神権者間の関係が,イエスとバプテスマのヨハネによって確立された模範に触発されるとしたら,神権定員会で何が起きるか考えてみてください。アロン神権を持つ若い兄弟の皆さん,ヨハネと同様,皆さんの役割は,メルキゼデク神権の偉大な業のために「道を備える」5ことです。皆さんは様々な方法でこれを行っています。バプテスマと聖餐の儀式を執行します。福音を宣べ伝え,「各会員の家を〔訪れ〕」6,「教会員を〔見守〔る〕」7ことによって,人々を主のために備えます。断食献金を集めることによって貧しい人や助けの必要な人を援助し,教会の集会所やそのほかの物質的な資源の手入れを行います。皆さんの役割は大切で必要とされており,神聖なものです。

成人の兄弟の皆さん,父親であれ,ビショップであれ,若い男性アドバイザーであれ,あるいは一般のメルキゼデク神権者であれ,皆さんは救い主の模範に従って,小神権を持つ兄弟たちを頼りにし,ともに働くよう招くことができます。実際には,この招きは主御自身から来るものです。主はこう言われました。「それゆえ,あなたがたは小神権に聖任されている者を伴い,彼らをあなたがたに先立って行かせて,約束を取りつけさせ,道を備えさせ,あなたがた自身の果たせない約束を果たさせなさい。」8

「道を備え〔る〕」よう年若い兄弟たちに勧めるときに,自分たちが持っている神聖な権能を理解し,尊ぶよう助けてあげることができます。そうすることによって,彼らが自分自身の方法で,より高位の神権を受け,行使する日に備えることができるよう助けることができるのです。

もの静かで,思いやりがあり,聡明な若い祭司であるアレックスの実話を紹介させてください。ある日曜日のこと,ビショップは独りで教室にいるアレックスに気づきました。アレックスはひどく落ち込んでいました。その若い男性は,父親が会員ではないため,父親と一緒に教会に来られないのがとてもつらい,と話してくれました。それから涙を流しながら,教会をやめた方がいいかもしれないと言うのです。

この若い兄弟のことを心から心配したビショップは,彼を助けるため,すぐにワード評議会を招集しました。ビショップの計画は単純明快でした。アレックスを教会にとどめ,福音についての心からの証を育むことができるよう助けるために,「アレックスの周りに善良な人々を配置し,彼に大切な仕事を与える」必要がありました。

直ちに,神権指導者とすべてのワード会員がアレックスを助けるために協力し,愛と支援の気持ちを表明しました。信仰深く愛にあふれた大祭司グループリーダーが,彼のホームティーチングの同僚に選ばれました。ビショップリックはアレックスを擁護し,親密な関係を築きました。

ビショップはこう語っています。「アレックスにいつも割り当てを与えました。彼は結婚式や葬儀でアッシャーを務め,墓の奉献でわたしを助け,何人かの新しい会員のバプテスマを執行し,若い男性をアロン神権の職に聖任し,青少年のレッスンを教え,宣教師とともに教え,大会のために教会の建物の鍵を開け,大会の終了後,夜遅くに鍵を閉めました。奉仕プロジェクトを行い,ホスピスに入院している年配の会員を訪問するときにわたしに同行し,聖餐会で話をし,病気で病院や家にいる人のために聖餐を執行するなど,わたしがビショップとして全幅の信頼を置く一握りの人々の一人となりました。」

少しずつ,アレックスは変わっていきました。主を信じる信仰が深くなりました。自分自身と自分が持っている神権の力に自信を持つようになりました。最後にビショップはこう語りました。「ビショップだったころ,アレックスはわたしにとって最大の祝福の一つでした。これからもずっとそうでしょう。彼との関係を築けたことはほんとうに大きな特権でした。若い男性で,アレックスほど神権の奉仕によって備えられて伝道に出た若い男性はいないと心から思います。」9

愛するビショップの皆さん,ワードのビショップとしての皆さんの聖任と任命に含まれていますが,皆さんはアロン神権および祭司定員会の会長として奉仕する神聖な召しを受けています。わたしは皆さんが担っている重荷を知っていますが,皆さんは青少年に対するこの務めを最優先の一つにすべきです。この務めを怠ったり,この責任に含まれる役割をほかの人に委任したりすることはできません。

皆さんにお願いします。どうぞワードのアロン神権者一人一人についてよく考えてください。だれ一人として,疎外感や無力感を抱くようなことがあってはなりません。皆さんや神権指導者が助けることのできる若い男性はいませんか。そのような若い男性に,皆さんと一緒に奉仕するよう勧めてください。神権を尊んで大いなるものとすることが福音に対する信仰や愛を育む最も効果的な方法であるにもかかわらず,わたしたちは多くの場合,若い男性を楽しませることだけを考えたり,傍観者の立場に追いやったりしようとします。救いの業に積極的に携わることで,若い男性は天とつながり,自分の神聖な可能性に気づくことができるのです。

アロン神権は,単なる年齢別グループ,レッスンや活動のためのグループ,あるいは教会の若い男性を特定する名称ではありません。神権を持つ若い男性と,彼らが仕える人々の両方を救う偉大な業に加わるための力と権能です。教会のすべての若い男性のために,アロン神権を本来の場所,えりすぐりの場所,そして奉仕,備え,達成の場所に位置づけましょう。

メルキゼデク神権を持つ愛する兄弟の皆さん,わたしは皆さんにお勧めします。どうぞこの二つの神の神権を結びつける大切な関係を強めてください。皆さんに先立って道を備えることができるよう,アロン神権を持つ青少年を力づけてください。自信をもってこう伝えてください。「わたしには君が必要なんだよ。」若いアロン神権者の皆さん,皆さんが年上の兄弟たちとともに奉仕するとき,次のように語る主の声が聞こえるよう祈ります。「あなたは大いなることを行うので,祝福されている。見よ,あなたはヨハネのようにわたしの前に道を備えるために,……遣わされた。」10イエス・キリストの御名により,アーメン。