2000–2009
「永代教育基金」
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「永代教育基金」

「わたしたちの民の中には、貧困に苦しんでいる人々が大勢います。彼らが生活を向上させ、訓練を受けることによって得られる自立の基盤の上に生活を築けるよう、わたしたちはできる限りのことをしなければなりません。教育は機会を得るためのです」

兄弟の皆さん、わたしの話を始める前に、このメルキゼデク神権者の聖歌隊に心からの感謝をお伝えしたいと思います。様々な人生経験を持つ方々から成るこの聖歌隊は、シオンの賛美歌に対する証あかしに満ちた心で、声をそろえて歌ってくださいました。兄弟たち、ほんとうにありがとうございます。

さて、これから非常に重要だと思われる事柄について簡潔に話しますので、主の霊感を受けて話せるよう祈っています。

150年以上も前の1849年、わたしたちの先祖は深刻な問題に直面しました。わたしたちの民がソルトレークへ到着してから2年がたち、イギリスやヨーロッパで働いていた宣教師たちのおかげで、改宗者の数は増え続けていました。大勢の人々が教会へ入り、バプテスマを受け、シオンへ集合したいと望みました。シオンでは彼らの力や技能が求められ、彼らは集合を強く願いました。しかし、彼らの多くはひどく貧しく、旅費を工面することもできません。シオンへ行くにはどうしたらよいでしょうか。

主の霊感により、ある計画が立てられました。「永代移住基金」として知られる基金が設立されたのです。当時、深刻な貧困の状況にあったにもかかわらず、教会の資金によりこの計画が実施され、お金がほとんどない聖徒に貸し付けが行われました。改宗者がシオンへ到着し、仕事を見つけ、返済能力ができたときに返済するという了解によるものでした。返済された資金は、またほかの人へ貸し付けられ、移住の資金に充てられました。つまり、貸し出しと回収のバランスが取れた回転資金であり、真に「永代移住基金」と言えるものでした。

この基金のおかげで、3万人ほどの改宗者がシオンに集合できたと推定されています。彼らはシオンの業にとって大きな力となりました。石工などの必要な技能を持った人もいました。シオンへ来てから、そういう技術を習得した人もいました。ソルトレーク神殿やタバナクルを含む建物を建てたり、その他の専門的な技能を要する仕事をしたりして、偉大な奉仕を行うことができました。彼らは幌ほろ馬車や手押し車でやって来ました。1856年に手車隊が恐ろしい悲劇に遭遇し、約200人が寒さと病気のためワイオミングの平原で亡くなりましたが、無事に着いた人々は、山間の峡谷で教会という家族の重要な…員となりました。

例えば、ジェームズ・モイルはイギリスのプリマスの石切職人でした。17歳でバプテスマを受けましたが、そのときのことをこう書いています。「そのときわたしは、人によく言われようと悪く言われようと、主に仕えることを主に聖約しました。それはわたしの人生の分岐点でした。悪い仲間との交際を断つことができたからです。」(ゴードン・B・ヒンクレー、James Henry Moyle〔1951年〕18)

ジェームズは石工としての技能を持っていましたが、お金はほとんどありませんでした。そこで「永代移住基金」からお金を借りて、1854年にイギリスを出発し、船でアメリカへ渡り、大平原を越えました。到着すると間もなく、石工としてライオンハウスの建築の仕事に就き、1日3ドルで雇われました。借りた金額の70ドルをためると、すぐに返済し、こう言いました。「そのときわたしは、自分が自由になったと思いました。」(Moyle 24)

「永代移住基金」の必要がなくなったとき、基金は解体されました。ここにおられる方々の多くは、この基金による祝福を受けた人々の子孫ではないかと思います。今日こんにち、皆さんは、先祖のためになされたことのおかげで、豊かで安定した生活を送っておられるのです。

さて、兄弟の皆さん、現在わたしたちは教会の中で別の問題にぶつかっています。多くの若い男女が母国で宣教師として召されたり、メキシコや中米、南米、フィリピンなどで栄誉ある業に就いています。お金はほとんどありませんが、持てる力を使って貢献しています。彼らの大部分は、中央宣教師基金から援助を受けており、わたしたちは皆さんの多くが献金されていることに深く感謝しています。

彼らは合衆国やカナダ出身の長老や姉妹たちと一緒に、すばらしい働きをしています。奉仕を通して、教会がどのように運営されているか知るようになります。福音への理解も深まります。英語も幾らか話せるようになります。信仰と献身の精神をもって働いています。そして、解任の日が来ると、大きな希望をもって故国へ戻ります。ところが、多くの場合、技能がないために、仕事を見つけるのに苦労します。そしてすぐに、以前と同じ貧困の淵ふちに沈んでしまうのです。

能力が限られているために、教会で指導者になることもあまりありません。そして、たいていは福祉の援助を受けるようになるのです。結婚して家族を養育しますが、家族もそれまでと同じ悪循環を続けます。彼らの将来はほんとうに暗いのです。貧困の淵から立ち上がるための技能を身に付けることができない状況にいるため、伝道に出られない人もいます。

こうした状況を改善するため、わたしたちはある計画を提案いたします。主から霊感を受けたものだとわたしたちは信じています。教会は、忠実な末日聖徒の献金を主体とする基金を設立します。彼らはこれまでも献金をしてくださいましたが、今後もこのような目的で献金してくださるでしょう。わたしたちは彼らに深く感謝しています。「永代移住基金」と同じような原則に従い、それを「永代教育基金」と呼ぶことにいたします。

この基金を元にして生み出された利益から、高い理想を持った男女は、その多くは帰還宣教師ですが、学校へ通うためのお金を借りることができます。そして、就職の資格を得たら、借りたお金と、返済の動機づけとして付加された小額の利子を返すよう期待されます。

彼らは地元の地域社会にある学校に通います。自宅から通学することができます。これらの国々には、教会から離れないようにすばらしい教会教育システムがあります。インスティテユートのディレクターは、地元の教育機関についてよく知っています。最初は、学生は専門学校へ通い、コンピューターの操作や冷凍技術など、需要が高く、資格を得られるような技能を学びます。後に、専門的な高等教育を身に付けられるように、基金の対象範囲を拡大することもできるでしょう。

これらの若い男女は、インスティテユ一トに出席し、ディレクターに進捗しんちょく状況を監督してもらいます。教育基金を受けたいと望む人は、インスティテユートのディレクターに申し込みます。ディレクターは、地元の監督とステーク会長を通して、ふさわしさと必要度の判断と承認を受けます。続いて、申込者の名前と支給額がソルトレークへ通知され、教育資金が支給されます。ただし、個人に対してではなく、教育機関へ支払われるので、ほかの目的にお金を使うという誘惑に駆られる心配はありません。

ソルトレークには、強力な管理委員会を設置し、ビジネスの経験や専門的な能力のある名誉中央幹部がボランティアとしてこの責任を引き受け、ディレクターを務めます。

組織を新設する必要もなく、ボランティアのディレクターと秘書以外には、新たに人を雇う必要もありません。基本的に、管理費用はまったくかかりません。

今年の秋から少しずつ始めますが、相当数の人々がその恩恵にあずかる時が来ると予想されます。

就職に役立つ技能を身に付ければ、こうした若い男女は、代々続いてきた貧困から抜け出すことができます。家族に、より豊かな暮らしをさせることができます。また、教会で奉仕し、指導者として責任を果たすこともできるようになります。返済を済ませ、自分が受けたのと同じ祝福をほかの人に与えることもできます。こうして、回転資金となるのです。彼らは忠実な教会員として、什分じゅうぶんの一と献金を納めるでしょう。そして、彼らの影響力により、彼らの住む地域の教会はさらに強くなるでしょう。

人に魚を与えるなら、その人は1日の食事を得るが、魚のとり方を教えるなら、一生食べることに困らなくなる、という古いことわざがあります。

これは大胆な試みですが、わたしたちはその必要性と成功の可能性を信じています。これは教会の公式プログラムとなり、それに伴うすべての事柄とともに実施されます。若い男女、彼らが将来養う家族、強力な地元の指導者が養成されるために祝福される教会員など、そのおかげで生活が潤うすべての人にとって祝福となるでしょう。

教会にはこれを行う余裕があります。当初の運営に必要な資金は、すでに献金されたお金で十分賄うことができます。神権系統を通して行われ、地元の教会をベースとして運営するため、問題はないでしょう。実用的な技能と必要とされる専門分野に焦点を当てます。また、このプログラムを利用するのは、何ら恥ずかしいことではありません。むしろ、誇りにしてよいのです。福祉援助ではなく、教育の機会を与えるものです。その努力は称賛に値するものです。受益者は資金を返済し、そうするときに、晴れ晴れとした自由な気持ちを味わうでしょう。助成金や寄贈ではなく、借りて返済することにより、生活を改善することができるからです。自立の精神で頭を高く上げることができるのです。生涯忠実で活発な会員となる可能性は非常に高くなるでしょう。

わたしたちはすでに、教会の福祉プログラムの下、特定の分野で雇用サービスを実施しています。これはおもに就職口の照会サービスです。教育の問題は「永代教育基金」の範疇はんちゅうです。雇用セン'ターの運営は、福祉プログラムの範躊に入り、就職口を探していて、技能はあるが適当な照会を得られない男女のためのものです。前者は、技能を身に付けられるようにするための回転資金であり、後者は、すでに就職のために必要な技能を持っている人が、より良い仕事に就けるようにするためのものです。

クラーク副管長は総大会の神権部会でよく次のように述べました。「もしわたしたちが一致協力して働き、人に祝福を与えるために作られたプログラムを推進するならば、神権によって達成できないことは何一つない。」(J・ルーベン・クラーク・ジュニァ、 Conference Report、 1950年4月、180参照)

会員たちにとって霊的な面だけでなく、物質的な面でも助けとなる事柄を行うための洞察力と理解力を、主がわたしたちに与えてくださいますように。わたしたちは今、大変重要な義務を自らに課しています。100年ほど前、ジョセフ・F・スミス大管長は、現世において人のために助けとならない宗教は、恐らく来世においても助けとならないであろう、と述べました("The Truth about Mormonism、” Out West Magazine、 1905年9月号、242参照)。

わたしたちの民の中には、貧困に苦しんでいる人々が大勢います。彼らが生活を向上させ、訓練を受けることによって得られる自立の基盤の上に生活を築けるよう、わたしたちはできる限りのことをしなければなりません。教育は機会を得るための鍵です。こうした教育は、自分が住んでいる地域で受ける必要があります。そうすれば、その地域にある機会に合った教育を受けることができるからです。また、合衆国やカナダ、ヨーロッパで受けるよりも費用が少なくて済みます。

これは途方もない夢などではありません。わたしたちには、物惜しみしないすばらしい友人たちの善意と親切により築かれた財源があります。教会の組織があり、人力と、これを成功させるために献身的に働く主の僕しもべたちがいます。これはすべてボランティアによるもので、教会にはほとんど何の負担もかかりません。先祖が作った「永代移住基金」がその機会にあずかった人々の生活に数え切れない祝福をもたらしたように、この新たな基金に伴う努力が実り、大勢の人々に豊かですばらしい祝福がもたらされるよう、神が助けてくださいますように、へりくだり感謝を込めて祈っています。

この基金は、元金から生み出される利益が人々の必要を満たすために用いられますが、先ほど申しましたように、すでに何人かの方々が元金を作るためにかなりの額の献金してくださいました。しかし、もっと多くの元金が必要です。ほかにも献金を望まれる方がおられましたら、ぜひ献金してください。

わたしたちは返済ができなくなる場合があることも予想しています。しかし、大部分の人は期待されたとおり返済し、何世代もの人々が祝福されるものと確信しています。将来の世代の人々が経済的に困ることも予想されます。なぜなら主は、「貧しい人たちはいつもあなたがたと共にいる」と言われたからです(ヨハネ12:8)。それゆえに、これは回転資金でなくてはなりません。

兄弟の皆さん、「弱い者を助け、垂れている手を上げ、弱くなったひざを強め」ることは(教義と聖約81:5)、わたしたちの厳粛な義務であり、確かな責任です。わたしたちは人々が自立し成功するよう助けなくてはなりません。

主は、主の民が貧困の中に閉じ込められるのを御覧になりたくはないと思います。主は、忠実な人々に地の良いものを享受させたいと望んでおられることでしょう。主はわたしたちに彼らの助けとなる事柄を行ってほしいと思っておられるでしょう。そして、わたしたちがそうするならば、主はわたしたちを祝福されることでしょう。この試みが成功するよう、へりくだってお祈りします。また、そのために皆さんが関心を向け、信仰を示し、祈りをささげ、心を砕いてくださいますように、心からお願いします。主イエス・キリストの御名みなによりお祈りいたします。アーメン。