教え、学ぶ
聖文の背景を理解する


「聖文の背景を理解する」『聖文研究のスキル』

聖文の背景を理解する

定義する

背景を知ると聖文をさらによく理解できるようになることを説明します。特定の聖句の前後の節を読むことで,直接の背景が分かるようになります。より広い背景には,文化的,歴史的,または地理的背景を含む聖句の状況と背景情報があります。背景を理解することは,以下の助けとなります。(1)著者の意図を汲み取る;(2)何がその教え,出来事,話につながったのかを考える;(3)誤った解釈をしないようにする。

モデルを示したり,練習したりする準備として,次の配付資料に生徒と一緒に目を通します。

聖文の背景を理解する

聖文の背景を知るとは,特定の聖句を,その聖句の状況,出来事,教えと関連づけて研究することを意味します。以下の異なるレベルの背景がどのように役立つかを考えてください。

  1. 直接の背景。前後の節を読み,その聖句の状況を学んでください。どのような出来事や状況が,重要な背景情報を教えてくれるでしょうか。その節で尋ねられた質問は,あなたに考え,答えるように促していますか。多くの聖句では,だれが,だれに,なぜ語っているかが分かるようになっています。

  2. より広い背景。歴史的,文化的,地理的背景について学ぶことで,特定の聖句が,それが記されている章や書に書かれた意味が分かるようになります。そうすることで,その聖句がさらによく理解できるようになります。また,その聖句を福音という背景に当てはめて理解できるようになるかもしれません。

読者は,以下のリソース(福音ライブラリーで利用可能)で聖句の背景を理解できるようになります:学習ヘルプ教会歴史トピックと質問インスティテュートまたはセミナリー教師用手引き『わたしに従ってきなさい—家庭と教会用』

モデルを示す

以下は,「直接の背景」と「より広い背景」が,特定の聖句にどのように洞察をもたらすかの実例を示しています。例1の表を見せるか,配付資料として配ります。聖句を読んだ後,「直接の背景」を読み,その後「より広い背景」セクションを確認します。別の日に例2にある表を使って,このスキルを復習するとよいでしょう。

例1

聖句

直接の背景

より広い背景

聖句

創世25:33を読んでください。

直接の背景

直接の背景は,前後の聖句を読むことによって見つけられます。創世25:21-34には,エサウとヤコブが双子であると記されています。エサウは長子であり,長子の特権を持つ息子です。彼らが生まれる前に,主はリベカに,末の息子ヤコブが長子の特権を得ることを明らかにされました(創世25:23参照)。エサウは父に愛され,ヤコブは母に愛されました。ある日,とてもおなかがすいていたエサウは,スープ(赤いあつもの)をくれるようヤコブに頼みます。ヤコブはエサウの長子の特権と引き換えにスープを与えることに同意します。エサウは取り引きを受け入れ,長子の特権は重要ではないと感じていることを示しました。

より広い背景

以下の資料が,この節に対する,より幅広い背景としてどのように役立つかを考えてください。

「エサウは長子の特権をヤコブに売り(創世25:33),それによって部族の指導者としての地位と聖約の祝福の両方を失った(創世27:28-29,36ヘブル12:16-17)。」(Bible Dictionary, “Esau”より和訳)

「古代の族長の時代においては,長男は長子の特権を受け(創世43:33),父親の死とともに家族を統率する任務を引き継いだ。長子はこの責任を引き受けるにふさわしくなければならず(歴代上5:1-2),不義な行いをすれば長子の特権を失うこともあった。」(『聖句ガイド』「長子」 scriptures.ChurchofJesusChrist.org)

『聖句ガイド』の「長子の特権,生得権」scriptures.ChurchofJesusChrist.org を読むのもよいでしょう。

洞察

創世25:33の背景を知ることで,長子の特権を受けることは大きな名誉と責任であったことが理解できるようになります。この背景から,エサウが長子の特権を重んじていなかったことも分かります。これらの洞察は後のレッスンで,イサクから長子の特権の祝福を得る方法をリベカがヤコブへ伝えたことを学ぶときに,重要な背景情報となります(創世27:1-33参照)。

例2

聖句

直接の背景

より広い背景

聖句

教義と聖約121:1-3を読んでください。

直接の背景

直接の背景は,教義と聖約121:4-8を読むことによって見つけられます。ここでジョセフ・スミスは,彼と聖徒たちが苦しんでいることについて神に心を注ぎ出します。ジョセフは主の声を聞き,自分の苦しみは「つかの間」に過ぎず,もしよく堪え忍ぶならば,〔自分の〕敵に打ち勝つ(7-8節)と告げられます。

より広い背景

教義と聖約121章の前書きは,1-3節のより広い背景を提供しています:「千八百三十九年三月二十日付けの,教会にあてた手紙に預言者ジョセフ・スミスが書いた祈りと預言。このとき,預言者はミズーリ州リバティーの監獄において囚われの身であった。預言者と数人の同僚たちは,これまで数か月間拘留され,行政官や司法官にあてた彼らの請願や上訴も彼らを救助するには至らなかった。」

リバティーの監獄の中で」(特に段落8-16参照)という記事には,囚人が耐えなければならなかった嘆かわしい状態について述べられています(ジャスティン・R・ブレイ『啓示の背景』〔2016年〕258-260参照)。

教会歴史の写真にあるリバティーの監獄の画像を見るとよいでしょう。

洞察

リバティーの監獄の悲惨な状況と,ミズーリ州から追い出された聖徒たちの苦しみを理解するとき,ジョセフ・スミスの嘆願からさらに意味と力を感じられます。わたしたちは最もひどい逆境に置かれたときにも,助けを求めて神に頼り,神から慰めと導きを受けられると学ぶことができます。

練習する

研究している聖句ブロックから聖句を一つ選ぶか,次のいずれかを使ってください:サムエル上16:7マルコ2:16アルマ39:5教義と聖約138:11。その後,配付資料「聖文の背景を理解する」を生徒に配り,それを使って,あなたが選んだ聖句の「直接の背景」や,「より広い背景」を見つけてもらいます。生徒に次の表に記入してもらうとよいでしょう。

背景を理解する

聖句

直接の背景

より広い背景

聖句

直接の背景

より広い背景

洞察

招き,フォローアップする

個人学習の中で,聖文の背景を理解するという原則を用いるよう生徒を励まします。フォローアップを行い,必要に応じて,生徒がスキルを分かち合い,練習する時間を取ることを忘れないでください。一週間を通して,これらの原則を聖文研究に使うことについて,生徒にフォローアップする機会を探るとよいでしょう。