2019
糖尿病のジレンマ
2019年9月


糖尿病のジレンマ

「信じていのる」(Children’s Songbook,14)

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糖尿病のジレンマ

ジョーの妹のサライアは病気でした。せきが出たり,おなかがいたくなるような病気ではありません。お母さんとお父さんは,糖尿病かもしれないと言いました。

ジョーは糖尿病がどんなものか知りませんでしたが,名前を聞いてこわくなりました。そこでお母さんとお父さんは,糖尿病になると,人の体は食べ物にふくまれているさとうを上手に使えなくなると説明してくれました。サライアは,糖尿病かどうかを調べるために,何日か入院しました。

サライアは時々ジョーの気にさわることをします。ジョーの友達と遊ぼうとしたり,テレビゲームのコントローラーをなくしたこともありました。それでも,ジョーはサライアが大好きでした。サライアには病気になってほしくない,と思い,なみだがこみあげてきます。

ジョーのお姉さんたちはサライアの入院のじゅんびを手伝いました。メアリーはサライアのリュックを出してきました。ハンナはパジャマをつめるのを手伝いました。リリーはふわふわの毛布を入れました。ジョーも手伝いたいと思いましたが,どうすればよいか分かりませんでした。

そのうちに,サライアの荷物がつめ終わりました。

「行く前にいのろう」とお父さんが言いました。「ジョー,いのってくれるかい?」

ジョーはうなずきました。「愛する天のお父様。」ジョーはいのり始めました。「サライアが糖尿病ではないように祝福してください。サライアが大丈夫なように祝福してください。」いのると,ジョーは少し気分がよくなりました。

家族が集まってハグをすると,ジョーはいいことを思いつきました。

「待って!」と言うと,自分の部屋に行き,誕生日にもらったポータブル音楽プレーヤーを取ってきました。サライアの好きな音楽が入っているのをかくにんしました。

そして,「はい」と言ってサライアにわたしました。「病院に持って行っていいよ。」サライアはにっこり笑うと,それをしっかりとにぎりしめて車の方に歩き出しました。

次の日,お母さんはジョーとお姉さんたちを連れて,サラのお見舞いに病院に行きました。ジョーは病院の中を歩きながら,ドキドキしました。もう100回くらい「サライアが糖尿病ではありませんように」といのっている気がします。

サライアの病室に着くと,サライアはたくさんのチューブをうでにつけて,ベッドの上で起き上がっていました。みんなを見ると,少しほほえみました。

「けんさの結果が出たんだ」とお父さんが言いました。「お医者さんによると,1がたの糖尿病だそうだ。家族で食べる食事を変えて,サライアが薬を飲むのを助ける必要があるけれど,サライアは大丈夫だ。」

ジョーはドキッとしました。廊下に出ると,ドアの横にすわりこみ,うでで顔をおおいました。

「どうしたの,ジョー。」お母さんはジョーのとなりにすわって言いました。

「サライアは糖尿病じゃありませんようにっていのったのに」とジョーは言いました。「天のお父様はなぜ,ぼくのいのりにこたえてくださらなかったんだろう。」

お母さんはうでをジョーに回して言いました。「天のお父様は,いつでもいのりにこたえてくださるわ。でも,わたしたちの望みどおりではないこともあるのよ。時には,大変なことを取りのぞく代わりに,平安をくださったり,わたしたちが強くなれるよう助けてくださったりすることで,こたえてくださることもあるの。天のお父様はきっとサライアを助けてくださるわ。」

ジョーはゆっくりとうなずきました。ジョーは今はまだ平安や強さを感じませんでした。でも,家族でいのったときに感じたよい気持ちを思い出しました。

ジョーはお母さんと一緒に病室にもどりました。ジョーのお姉さんたちは,いつも家でやるようにカードゲームで遊んでいました。お姉さんたちも,サライアさえも幸せそうでした。

そのとき,ジョーはあることに気づきました。サライアの首にはヘッドフォンが,ひざにはジョーの音楽プレーヤーがありました。

「サライアはあなたが選んでくれた音楽をずっと聞いてるのよ」とお母さんは言いました。「聞いてるとサライアはほんとうにおだやかになれるの。」

ジョーはむねが温かくなるのを感じました。天のお父様は,もうすでに助けてくださっていることが分かりました。