教師養成スキル
学習者を知るように努め,彼らの境遇や長所,彼らに必要なことを理解する。


「学習者を知るように努め,彼らの境遇や長所,彼らに必要なことを理解する」『教師養成スキル:教える人々を愛する』

「学習者を知るように努め,彼らの境遇や長所,彼らに必要なことを理解する」『教師養成スキル:教える人々を愛する』

学習者を知るように努め,彼らの境遇や長所,彼らに必要なことを理解する。

スキル

生徒の関心を観察し,それについて質問する。

定義する

教師は,生徒の関心を観察し,それについて尋ねることを通して,生徒の状況について知り,生徒の学習上の必要を特定することができます。最も簡単なのはクラスの前後に会話をすることですが,クラス中に行うこともできます。様々な方法でこれを行うことができます。例えば,生徒がクラスに持ってくる本や課題,シール,スポーツの道具などに目を留めるとよいでしょう。あるいは,生徒が参加している行事を覚えておいて,それについて尋ねることもできます。わたしたちが尋ねる質問は,生徒と彼らの関心を知るうえで助けになります。以下はそのような質問の例です:

  • 「……について詳しく教えて。」

  • 「……のどんなところが好き?」

  • 「……についてぜひ教えて。」

教師は誠実に,正直に質問をするときに,生徒の状況や学習上の必要についてさらによく知ることができ,生徒は教師がほんとうに気にかけてくれていると感じるでしょう。生徒は,教師がほんとうに気にかけてくれていると感じると,学び,自分の意見や経験を教師やクラスの皆と分かち合う備えをしてクラスに来る可能性が高くなります。

  1. 南姉妹は,以前に裕子が重要なサッカーの試合を目前に緊張していたのを思い出しました。裕子に会った南姉妹は,立ち止まり,試合がどうだったか尋ねます。

  2. 誠司はテーブルに鍵を置いています。あなたは通り過ぎるときに,キーホルダーに外国の国旗がついているのに気がつきました。あなたは興味を持って言います。「誠司くん,このキーホルダーの国旗について教えてくれる?。」誠司は,姉が伝道でブラジルに行って,その伝道の終わりに家族と一緒に迎えに行った,と言いました。あなたはさらに話を続けてこう尋ねました。「伝道に出ているお姉さんに会いに行って,どんなことがよかった?」

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練習する

練習1:次のそれぞれの写真の中にあるもので,この生徒の状況や学習上の必要について知る助けとなるのは何ですか。

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バスケットボールをする若い女性
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ウクレレを弾く若い女性たち
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半円になって座る青少年

練習2:生徒の関心についてもっと知るために,どのような質問をすることができるでしょうか。

話し合う,または深く考える

  • 生徒の関心を観察し,それについて尋ねる練習をしてみて,これまでに何を学びましたか。

  • 生徒の関心を観察し,それについて尋ねることで,どのように生徒への愛を示すことができるでしょうか。

取り入れる

  • 今週のクラスで,生徒の関心や行事や状況について尋ねる機会を探してください。生徒から教えてもらうことに心から関心があることを示してください。その結果,生徒の学習体験にどのような影響を与えるかに目を向けてください。クラスの後で5分取って,生徒について分かったことと,改心や関連性,帰属感へと至る学習体験を作り出すうえでどのように役立つかを書き留めてください。

さらに深く知る

スキル

人との交わりの中で,キリストのような識別の精神や愛,共感を招けるようにと自分自身に問うべき質問ついて,立ち止まって深く考え,答えを探る。

この訓練では,生徒がわたしたちとは異なる前提から永遠の真理を見ることがあることを教師が理解するうえで役立つ,三つの関連し合うスキルの一つ目を採り上げます。わたしたちは生徒をより理解するようになるにつれ,生徒がイエス・キリストを信じる信仰を育むのを助けるときに,さらに愛と共感をもって生徒に対応できるようになるでしょう。

これらの訓練には以下が含まれます:

  1. 立ち止まり,深く考え,レッスンの準備の際や,クラスで生徒の意見や質問に集中する際にわたしたちが自問することへの答えを見つけることにより,生徒が前提としている思いを見つける。

  2. 生徒の疑問や気持ち,信じていることの真の意図を明確にし,理解しようとする。

  3. 生徒が永遠の視点から自分の前提を吟味し,見直せるよう助ける。

二つ目と三つ目の訓練は,後ほど行います。

この訓練では,次のスキルに焦点を当てます:

  • 立ち止まり,深く考え,レッスンの準備の際や,クラスで生徒の意見や質問に集中する際にわたしたちが自問することへの答えを見つけることにより,生徒が前提としている思いを見つける。

定義する

クラスにやって来る生徒はそれぞれ,福音の真理に対する考え方や感じ方を形成している,異なる人生経験や人間関係を持っています。これらのものの見方により開始地点が決まります。これはよく,個人の思考の前提と呼ばれます。それぞれの生徒の前提を知ることにより,わたしたちはイエス・キリストがされたように,共感と愛をもって真理を教えることができます。前提が異なっていても教義は何ら変わりません。むしろ前提が異なっていることにより,ほかのだれかの視点を理解できるようになり,それぞれの学習者がイエス・キリストを信じる信仰を増すために何が必要なのか,さらに理解できるようになります。

レッスンの準備の際,教師は,立ち止まって深く考え,次の質問への答えを探りながら,永遠の真理について検討するとよいでしょう:

  • 生徒の経験や人間関係は,これらの真理についての考え方や感じ方,実践の仕方をどのように形成するだろうか。

  • この真理を学ぶ際,生徒のうちのだれかが自分の状況のためにのけ者にされたと感じたり,不安になったり,傷ついたりする可能性はないだろうか。

クラスの時間や会話の中で,生徒の意見や質問に集中する際,教師は以下のことを自問するとよいでしょう:

  • 「この生徒がわたしとは異なる考え方をするのは,この生徒のどのような経験や人間関係からだろうか。」

  • 「この生徒の背景をよく理解するために,わたしがほかに知る必要があるのはどのようなことだろうか。」

このような質問は聖霊を招き,生徒との交わりにおいて,識別と愛,共感といったキリストのような精神を招きます。また,生徒に対して,否定的な,あるいは手厳しい,または自己防衛をするような対応をしてしまうことを避けるうえでも役立つでしょう。これらの質問は,クラスに祝福をもたらし,人々がイエス・キリストを信じる信仰を育む助けとなるような方法で真理を教えるのを助けてくれます。

例(レッスン準備中)

聖霊の促しに従うことについてのレッスンの準備をしている際,わたしは次の質問について考えます:「生徒の経験や人間関係は,どのように生徒の考え方や感じ方,真理の実践の仕方を形成してきただろうか。」「この真理を学ぶ際に,生徒の中に,この教義との関係において理想的な状況にないために悩んだり,のけ者にされたと感じたり,不安に思ったり,傷ついたりする可能性のある人がいないだろうか。」

その後,次のように答えます:「これまでに一度も促しを受けたことがない,あるいは聖霊が自分に語りかけられることはない,と感じている生徒がいるかもしれない。自分はふさわしくないと感じている生徒がいるかもしれない。生徒が,促しが聖霊から受けたものであるかどうかはっきりと分からないことが時折あるかもしれない。御霊に従うことについてだれかの話を聞くと,そういった話はあまりに奇跡的で,自分に起こることなどなさそうだと,投げやりな気持ちになってしまう生徒がいるかもしれない。」

練習する(レッスン準備中)

1ニーファイ3:7の「わたしは行って,主が命じられたことを行います」についてのレッスンを準備する際に:

  • 深く考え,答えを探る:「生徒の経験や人間関係は,どのように生徒の考え方や感じ方,真理の実践の仕方を形成してきただろうか。」「この真理を学ぶ際に,生徒の中に,この教義との関係において理想的な状況にないために,悩んだり,のけ者にされたと感じたり,不安に思ったり,傷ついたりする可能性のある人がいないだろうか。」

「性別と永遠のアイデンティティー」というタイトルのレッスンで,性別はわたしたちの永遠の行く末と目的に欠かせない特徴であるというレッスンを準備する際に:

  • 深く考え,答えを探る:「生徒の経験や人間関係は,どのように生徒の考え方や感じ方,真理の実践の仕方を形成してきただろうか。」「この真理を学ぶ際に,生徒の中に,この教義との関係において理想的な状況にないために,悩んだり,のけ者にされたと感じたり,不安に思ったり,傷ついたりする可能性のある人がいないだろうか。」

例(クラス中)

  • 安息日の教義について話し合っているときに,生徒がこう発言しました。「わたしの家族は日曜日にスポーツ観戦を楽しんでいます。」生徒の発言に焦点を当てながら,こう考えます。「この生徒がわたしとは異なる考え方をするのは,この生徒のどのような経験や人間関係からだろうか。」「彼女の背景をよく理解するために,わたしがほかに知る必要があるのはどのようなことだろうか。」

練習する(クラス中)

伝道活動について話し合っていたときに,ある生徒がこう尋ねました。「若い男性は皆伝道に出るのが大切なのはなぜですか。」

  • 心の中でこのように考えます。「この生徒がわたしとは異なる考え方をするのは,この生徒のどのような経験や人間関係からだろうか。」「彼の背景をよく理解するために,わたしがほかに知る必要があるのはどのようなことだろうか。」

預言者と啓示について話し合っていると,ある生徒がこう尋ねました。「教会の方針は,いつになったら世の中に追いつくんですか。」

  • 心の中でこのように考えます。「この生徒がわたしとは異なる考え方をするのは,この生徒のどのような経験や人間関係からだろうか。」「彼女の背景をよく理解するために,わたしがほかに知る必要があるのはどのようなことだろうか。」

ここをクリックして,このモデルのビデオを御覧ください。

話し合う,または深く考える

  • クラスの前に,あるいはクラス中に,生徒の前提を見つける練習をしながら,共感をもって真理を教えることについてどのようなことを学んでいますか。

  • さらにイエス・キリストのように教えられるよう,この練習はどのように役立つでしょうか。

取り入れる

これから2週間集中的に行う練習を,上記の中から一つ選んでください。これらのスキルの練習をどのように継続するか,計画を立ててください。以下はその例です:

  • あなたが準備する真理一つにつき5分間取って,立ち止まり,考え,生徒の前提としている思いを見つける助けとなる質問の答えを探る。

  • クラスの前に一人の生徒を選び,その生徒がそれぞれの真理について発言するかもしれないことや質問するかもしれないことについて考える。その後,心の中でこのように考える。「この生徒がわたしとは異なる考え方をするのは,この生徒のどのような経験や人間関係からだろうか。」「彼の背景をよく理解するために,わたしがほかに知る必要があるのはどのようなことだろうか。」このようにすると,クラスの中で生徒の発言や質問に焦点を当てる際にこれを行う備えとなるでしょう。

さらに深く知る

  • チャド・H・ウェッブ「共感」(宗教教育セミナリー・インスティテュート年次訓練放送,2021年6月26日)broadcasts.ChurchofJesusChrist.org

  • ジーン・B・ビンガム「愛の言葉で真理を教える」(宗教教育セミナリー・インスティテュート年次訓練放送,2021年1月26日)broadcasts.ChurchofJesusChrist.org

スキル

生徒の疑問や気持ち,信じていることの真の意図を明確にし,理解しようとする。

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生徒を教えている男性

この訓練では,生徒がわたしたちとは異なる前提から永遠の真理を見ることがあることを教師が理解するうえで役立つ,三つの関連し合うスキルの二つ目を採り上げます。わたしたちは生徒をより理解するようになるにつれ,生徒がイエス・キリストを信じる信仰を育むのを助けるときに,さらに愛と共感をもって生徒に対応できるようになるでしょう。これらの訓練は,生徒からの難しい質問に対応する最初のステップを改善させる助けにもなります。これらの訓練には以下が含まれます:

  1. 立ち止まって深く考え,レッスンの準備の際や,クラスで生徒の意見や質問に集中する際にわたしたち自信に問うべき質問への答えを探ることにより,生徒が前提としている思いを見つける。

  2. 生徒の疑問や気持ち,信じていることの真の意図を明確にし,理解しようとする。

  3. 生徒が永遠の視点から自分の既成概念を吟味し,見直せるよう助ける。

定義する

生徒の質問,気持ち,信じていることの真意を明確にし,理解しようと努めることには,質問のきっかけとなった,経験や状況,気持ちについてさらに知ることが含まれます。生徒が質問や気持ち,信じていることについて話してくれたら,話してくれたことに感謝し,その後補足質問に答えてもらうことはできるか尋ねてみてもよいでしょう。断られた場合は,断っても問題がなかったことを再度強調し,元の質問や意見に応じます。生徒が了承してくれた場合には補足質問をして,その質問や意見を抱くきっかけになった事柄についてさらに話してくれるよう招きます。そうすることで,あなたとクラスの参加者は互いをよりよく理解し,共感と愛をもって対応することができます。

  1. 平田姉妹が聖典の中から神権について教えているとき,一人の生徒が,「なぜ黒人男性は1978年まで神権を持つことが許されなかったのですか」と尋ねました。

    • 平田姉妹:尋ねてくれてありがとうございます。それは多くの人が感じたことのある疑問かと思います。まず,わたしの方から幾つか訊いても良いですか。

    • 生徒:はい。

    • 平田姉妹:この質問を訊きたいと思ったきっかけは何かありますか。

  2. 山口兄弟が聖典の中から神権について教えているとき,一人の生徒が,「なぜ黒人男性は1978年まで神権を持つことが許されなかったのですか」と尋ねました。

    • 山口兄弟:尋ねてくれてありがとうございます。それは多くの人が感じたことのある疑問かと思います。まず,わたしの方から幾つか訊いても良いですか。

    • 生徒:嫌です。

    • 山口兄弟:分かりました。大丈夫ですよ。質問してくれたことを嬉しく思います。では,質問について話し合いましょう。

尋ねるとよいその他の補足質問には次のようなものが挙げられます。

  • 話してくれてありがとうございます。そのような〔疑問,思い,信念〕を持つきっかけとなった経験や状況はありますか。

  • 聞いてくれてありがとうございます。どのようなことがきっかけでこの疑問を抱くようになったのか教えてくれますか。

  • 聞いてくれてありがとうございます。そのような質問をしたいと思うようになった理由や,そのようなことを知りたいと思うようになった理由は何かありますか。

練習する

次の状況で,疑問や思い,または信念を持つようになったきっかけを理解し,明確にするように努めてください。

  1. 男女の間の結婚が神によって定められていることについて教えるレッスンで,ある生徒から,「教会がLGBTQコミュニティーに属する人々を嫌う理由は何ですか。互いに愛し合っているのに,なぜ結婚してはいけないのでしょうか」と尋ねられました。

  2. 伝道活動についての話し合いの中で,ある生徒が,「若い男性は伝道に出るか出ないかは選ぶことができないのに,若い女性は選択できると思っていました」と発言しました。

話し合う,または深く考える

  • 生徒の話を明確に理解するために時間を取る必要があるのはなぜだと思いますか。生徒の真意を明確に理解しようと努めることで,クラスでの経験にどのような影響があると思いますか。生徒の真意を理解することは,生徒をキリストにつなげるうえでどのような助けとなるでしょうか。

取り入れる

  • 教室で,生徒の話によく耳を傾け,もっと明確に理解したいポイントについて注意深く考えます。その質問をした生徒に感謝を伝えた後,生徒の真意を明確にできるよう,補足質問をします。

さらに深く知る