セミナリー
ヤコブの手紙2章


ヤコブの手紙2章

信仰も,行いを伴わなければ,死んだものである

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Youth doing a service project in Australia

イエス・キリストを信じていると言う人と,イエス・キリストへの信仰を行使する人には,違いがあるのでしょうか。ヤコブは,イエス・キリストへの真の信仰は,考えや言葉だけではなく,行動にも現れる,という重要な区別を示しました。この課では,正しい行動を通して,イエス・キリストを信じる信仰をさらに行使する方法を考察します。

生徒が積極的に参加できるように助ける。教える準備をする際は,生徒の行動に焦点を当てます。聖典から学び,お互いから学び合う努力をするよう生徒を励ましましょう。そうすることで,生徒は聖典から学ぶ能力への自信が高まります。また,学んだことを応用する可能性も高くなります。

生徒の準備:生徒に,イエス・キリストを強く信じている身近な人を思い浮かべてもらいます。可能であれば,その人に以下のような質問をしてもらいます:「イエス・キリストへの信仰は,あなたの行動や言動にどのような影響を与えていますか。イエス・キリストを信じる信仰のために,違ったやり方をしていることはありますか。」生徒に,学んだことを発表できるように準備してきてもらいます。

学習活動案

火をつけるように,祝福を受ける

ホワイトボードにたき火の絵を描くとよいでしょう。

あなたは天の御父からの祝福や祈りへの答えを求めていますか。これらの祝福を求める過程を,明かりと暖を取るために火を起こすことにたとえると役立つかもしれません。

  • 火を起こすには,どのような手順を踏みますか。

  • マッチで火をつける行動は,どの程度重要ですか。

十二使徒定員会のデール・G・レンランド長老が語った次の言葉を読んで,祝福を受けることが火をつけることに似ている点を学びましょう。また,ChurchofJesusChrist.orgにあるビデオ「多くの祝福を得る」(タイムコード1:02-3:27)を見てもよいでしょう。

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Official portrait of Elder Dale G. Renlund of the Quorum of the Twelve Apostles, January 2016.

「天の祝福を積み重ねられた木にたとえてみましょう。……〔その〕木には,何日間もあかりと熱を発することが可能な大量の熱源が含まれています。 ……

この木に含まれるエネルギーを放出するには,マッチを擦りたきつけ用の小枝に火をつけなければなりません。すると小枝はすぐに燃え出し,より大きな木へと燃え広がります。 ……

マッチを擦って小枝に点火するというささやかな行為が,木の持つ潜在的なエネルギーの放出を可能にするのです。積み重ねられた木の大小にかかわらず,マッチを擦るまでは何も起きません。 ……

同様に,神がわたしたちに与えたいと望んでおられる祝福のほとんどは,イエス・キリストを信じる信仰に基づくわたしたちの行動を必要としています。……そして,最終的に受ける祝福と比べると,求められる行動は常にささいなものです。」

(デール・G・レンランド「多くの祝福を得る『リアホナ』2019年5月号,70)

  • レンランド長老のたとえから,どのようなことが分かりますか。

  • 「イエス・キリストを信じる信仰に基づく」行動を取るとは,どういう意味だと思いますか。

生徒に次の質問を深く考えて,学習帳に答えを書いてもらいます。

次の質問を深く考えてください:

  • あなたはどのような形でイエス・キリストへの信仰を持っていますか。あなたは,その信仰のゆえにどのような行動を取りますか。

  • イエス・キリストへの信仰を行使することによって,どのような答えやそのほかの祝福を神から授かりましたか。そのほかに,主があなたに信仰をもって行動することを望んでおられると感じることはありますか。それはなぜですか。

研究する間,これらの質問への答えを求めながら,天の御父が導いてくださるように祈りましょう。

イエス・キリストへの信仰

ヤコブは,イエス・キリストへの信仰をもって行動することの大切さを教えるために,別のたとえを用いました。

ヤコブの手紙2:14-16 を読んで,もしあなたがこの状況を目撃したらどう思うか想像してみてください( 第15節 の「裸」という言葉は,貧しい服装という意味です)。

二人の生徒に前に出てきてもらいます。そのうち一人に物乞い役,もう一人には物乞いを助けられる人の役を演じてもらいます。3人目の生徒に ヤコブの手紙2:15-16 を声に出して読んでもらい,前の生徒二人にその聖句に書かれていることを演じてもらいましょう。

  • ヤコブのたとえからどのようなことが学べるでしょうか。

ヤコブの手紙2:17-18,26ヤコブの手紙1:22 も参照)を読んで,このたとえを通じてヤコブが示した真理を探してください。

  • ヤコブの教えを要約すると,どうなりますか。

ヤコブの教えた真理の一つの言い方は,イエス・キリストへの真の信仰には正しい(義にかなった)行いが求められる,ということです。

  • イエス・キリストはなぜ,わたしたちが信仰を行動に移すことを望んでおられると思いますか。

ヤコブの手紙の中で繰り返される教えの一つ,すなわちわたしたちは貧しい人,病んでいる人,乏しい人を助けなければならないことを( ヤコブの手紙1:272:1-95:14-15 参照)指摘すると役に立つでしょう。このような行動は,イエス・キリストへの信仰を示すものだからです。

  • 救い主イエス・キリストと主の慈しみを思い出すことで,どのようにわたしたちが信念に基づいて行動する動機になるでしょうか。

信仰をもって行動することの模範

イエス・キリストへの信仰に基づいて行動する人々の模範を考えることは,霊感を与えてくれるでしょう。 ヤコブの手紙2:21-25 を読んで,旧約聖書の中で信仰をもって行動した人々の模範を見つけてください。

役に立つようなら,以下のような質問をするとよいでしょう:

  • アブラハムは,その行いゆえに何と呼ばれていましたか( ヤコブの手紙2:23 参照)。アブラハムの忠実な行動は,なぜその称号につながったと思いますか。

  • わたしたちの行いは,わたしたちの信仰を強め,完成させるのに,どのように役立つと思いますか( ヤコブの手紙2:22 参照)。

また,ラハブが神の僕を守るために命をかけて信仰を行使したことを説明することも,役に立つかもしれません( ヨシュア2:1,36:17,23,25ヘブル11:31 参照)。

生徒に,以下の質問の答えを2枚の紙に書いてもらいます。生徒が準備してきたことを,この活動に使ってもよいでしょう。

  • イエス・キリストへの信仰を行動に移している人を,だれか思い浮かべられますか。自分の周りの人でも聖文の中からでもかまいません。その模範から何を学べますか。

  • イエス・キリストが正しい行いの模範であるのは,どのような点ですか。一つ挙げてください。正しい行いは,わたしたちがさらにイエスのようになるために,どのように役立つでしょうか。

生徒が答えを書いたら,紙を2枚とも折りたたみ,両手に1枚ずつ持ってもらいます。次に生徒は部屋の中を移動し,分かち合う相手を一人選びます。そして互いに相手の右手か左手を選んで,その答えを聞きます。これを別の生徒たちとも繰り返してください。

信仰に促された行動で祝福の鍵を開ける

ラッセル・M・ネルソン大管長は,わたしたちの信仰と行動に関して次のようにチャレンジしました:

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Official portrait of President Russell M. Nelson taken January 2018

「どんなことであれ良い結果を出すには努力が必要です。イエス・キリストの真の弟子になることも,例外ではありません。主を信じる信仰と信頼を増し加えるためには努力が必要です。 ……

……あなたにもっと信仰があれば,何をするでしょうか。考えてみてください。それについて書いてください。その後,何か信仰をもっと必要とすることを行うことによって,信仰をもっと深めてください。」

(ラッセル・M・ネルソン「キリストはよみがえられた—キリストを信じる信仰は山を動かす『リアホナ』2021年5月号,103)

以下の質問を深く考えてください:

  • もっと信仰があれば,あなたは何をしますか。

  • 印象に従って行動するには,どのような手順を踏めばよいでしょうか。

少し時間を取って,受けた印象を行動に移してください。例えば,自分が何をすべきと感じるかによって,メッセージを送信したり,祈りをささげたり,カレンダーにリマインダーを設定したり,次にするべきことを計画するとよいでしょう。

自分がやり始めたこと,計画していることを発表してもいい生徒がいるかどうか聞いてください。考えを発表することで,ほかの生徒に霊感を与えることにもなります。

イエス・キリストへの信仰がわたしたちの行動を形作る理由について,証や個人的な経験を分かち合うとよいでしょう。

注釈と背景情報

信仰と行いに関するヤコブの教えは,パウロの教えに反するものだったのでしょうか

ヤコブの手紙2:14 の中で,ヤコブは,使徒パウロとは違う形で,行いという語を用いました。パウロが行いという語を使ったとき,パウロはおもにモーセの律法の行いを指していました( ローマ3:27-31 および ガラテヤ2:15-16 参照)。ヤコブが行いという語を使ったとき,ヤコブは献身的な行いや義の行いを指していました。

行いを伴わない信仰が死んでいるなら,信仰を伴わない行いはどうでしょうか

十二使徒定員会のデビッド・A・ベドナー長老は,次のように教えています:

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Elder David A. Bednar, Quorum of the Twelve Apostles official portrait. 2020.

「ほんとうの信仰は主イエス・キリストを中心とし,常に義にかなった行動へ導きます。……単に行動することだけが救い主を信じる信仰なのではなく,正しい原則に従って行動することこそが信仰の中心的要素です。」

(デビッド・A・べドナー「信仰をもって願い求めなさい『リアホナ』2008年5月号,95)

補足学習活動

ヤコブの手紙1:22 。「御言を行う人になりなさい。……ただ聞くだけの者となってはいけない」

ChurchofJesusChrist.orgにある ヤコブの手紙1:19-27 を描いたビデオ,「御言葉を行う人」を見せるとよいでしょう。そして生徒に,イエス・キリストへの信仰をもって行動することの大切さを理解するのに役立つ教えを,探してもらいます。

ヤコブの手紙2:9 。「もし分け隔てをするならば,あなたがたは罪を犯すことにな〔る〕」

この原則は,わたしたちが自分の行いを通して信仰を示すことのできる例として教えることができます。無作為に生徒を一人選んで,その生徒に小さなお菓子を渡します。何らかの気まぐれな理由(着ていた服の色など)で,その生徒にお菓子をあげたとクラスに伝えます。「この生徒を特別扱いすることで,ほかの皆さんはどのような気持ちになりましたか。わたしたちはなぜ,特別扱いをしてしまうことがあるのでしょうか」といった質問を投げかけます。そして一人の生徒に, ヤコブの手紙2:1-4 を声に出して読んでもらいましょう。他の生徒には,聖句を目で追いながら,ヤコブが聖徒たちに警告した事柄を見つけてもらいます。生徒は何に気づきましたか。だれかをほかの人より優遇しないようにするためには,どうすればよいでしょうか。

生徒に ヤコブの手紙2:8 を黙読してもらい,ヤコブが聖徒たちに実践するよう思い出させた,特別扱いをなくすために役立つことを見つけてもらいます。そして周りにいる,異なる境遇の人を平等に愛するうえで模範となる人を思い浮かべてもらいます。それから生徒にだれのことが思い浮かんだか,それはなぜかを発表してもらいます。イエス・キリストは,ほかの人を平等に愛することをどのような模範によって示してくださったのでしょうか。ほかの人の見方や配慮の仕方について,どうすればもっとうまく救い主の模範に倣うことができるかを,生徒に考えてもらいましょう。

ヤコブの手紙2:19-20 。神への信仰を持つことは,単に神の存在を認めることではありません

この活動は,レンランド長老の言葉やビデオとその後の質問よりも後に,行うことができます。どうすれば生徒は,信仰と行いの関係をよりよく理解できるようになるでしょうか。生徒に, ヤコブの手紙2:19-20 を読んで,信仰を持たずに神を信じることができることを示すために,ヤコブが挙げた例を探してもらいましょう。生徒は何に気づきましたか。神への信仰を持つことと神を信じることの違いを,生徒はどのように説明するでしょうか。