1 さて，ニーファイの民たみのさばきつかさの統とう治ち第だい二十六年ねんの一月がつ一つい日たちの朝あさ，見みよ，レーマン人じんは目めを覚さまし，見みよ，アマリキヤが彼かれの天てん幕まくの中なかで死しんでいるのを発はっ見けんした。また彼かれらは，テアンクムがその日ひ彼かれらと戦たたかう準じゅん備びをしているのも見みた。

2 レーマン人じんはこれを見みて驚おどろき恐おそれ，北ほっ方ぽうの地ちへ進しん軍ぐんする企くわだてを捨すてて，全ぜん軍ぐんがミュレクの町まちへ退しりぞき，とりでにこもって守まもりを固かためようとした。

3 そして，アマリキヤの兄きょう弟だいが民たみを治おさめる王おうに選えらばれた。その王おうの名なはアモロンという。このようにアマリキヤ王おうの兄きょう弟だいであるアモロン王おうが選えらばれ，アマリキヤ王おうに代かわって治おさめることになった。

4 そしてアモロン王おうは，血ちを流ながして奪うばい取とったそれらの町まちを守まもり通とおすように民たみに命めいじた。彼かれらが多おおくの血ちを失うしなわずに奪うばい取とった町まちは一つとしてなかったからである。

5 さて，テアンクムは，レーマン人じんがこれまでに奪うばい取とったそれらの町まちと，手てに入いれたそれらの土と地ちを守まもり通とおそうと決けつ意いしているのを知しり，また彼かれらの人にん数ずうがおびただしいのを見みて，とりでにこもっている彼かれらを攻こう撃げきしようとするのは得とく策さくではないと思おもった。

6 それでも彼かれは，戦たたかう準じゅん備びをしているかのように，兵へいをとりでの近ちかくにとどめておいた。そして，実じっ際さいはその間あいだに方ほう々ぼうに防ぼう壁へきを^①築きずき，身みを隠かくす場ば所しょを用よう意いして，レーマン人じんの来らい襲しゅうを防ふせぐ準じゅん備びを進すすめていた。

7 そして，彼かれが戦たたかいの準じゅん備びを続つづけていると，やがてモロナイからテアンクムの軍ぐん隊たいを強きょう化かする大おお勢ぜいの兵へいが送おくられてきた。

8 また，モロナイからテアンクムに，彼かれの手てに落おちた捕ほ虜りょは全ぜん員いんそのまま捕とらえておくようにとの命めい令れいも届とどいた。レーマン人じんも大おお勢ぜいを捕ほ虜りょにしていたので，レーマン人じんに捕とらえられている人ひと々びとと交こう換かんするために，レーマン人じんの捕ほ虜りょを全ぜん員いん残のこしておく必ひつ要ようがあったからである。

9 モロナイはまた，バウンティフルの地ちの防ぼう備びを固かためて北ほっ方ぽうの地ちに通つうじる^①地ち峡きょうを守まもり，レーマン人じんがその地ち点てんに達たっして四し方ほうからニーファイ人じんを攻せめ悩なやます力ちからを持もたないようにすることをテアンクムに命めいじた。

10 さらにモロナイは彼かれに伝でん言ごんを送おくり，忠ちゅう実じつにその地ち域いきを守まもるように，またニーファイ人じんの手てから奪うばい取とられたそれらの町まちを，計略けいりゃくやそのほかの方ほう法ほうで再ふたたび取とり返かえすことができるかもしれないので，できるかぎりあらゆる機き会かいを求もとめてその地ち域いきでレーマン人じんを苦くるしめ悩なやますように，さらに，レーマン人じんの手てに落おちていない方ほう々ぼうの町まちを防ぼう備びを固かためて強きょう化かするように求もとめた。

11 また，モロナイは彼かれに，「わたしはあなたのところに行いきたいが，まことにレーマン人じんが西にしの海うみに近ちかい境さかいの地ちでわたしたちを攻せめて来きており，まことに，わたしは彼かれらに立たち向むかっているので，あなたのところへは行いけない」とも述のべた。

12 さて，（アモロン）王おうはゼラヘムラの地ちを去さって，王おう妃ひに自じ分ぶんの兄きょう弟だいの死しについて知しらせ，大おお勢ぜいの兵へいを集あつめて，西にしの海うみに近ちかい境さかいの地ちでニーファイ人じんと戦たたかうために軍ぐん隊たいを進すすめていた。

13 このようにして，彼かれはニーファイ人じんを休やすみなく攻せめて，その地ち域いきにニーファイ人じんの軍ぐんの一いち部ぶを引ひき寄よせるようにした。その一いっ方ぽうで，彼かれは以い前ぜんに奪うばい取とった町まちを守まもるために残のこしてきた者ものたちにも，東ひがしの海うみに近ちかい境さかいの地ちでニーファイ人じんを休やすみなく攻せめ，兵へい力りょくの及およぶかぎりできるだけニーファイ人じんの地ちを占せん領りょうするように命めいじておいた。

14 ニーファイの民たみのさばきつかさの統とう治ち第だい二十六年ねんの終おわりに，ニーファイ人じんはこのような危あやうい状じょう況きょうにあった。

15 しかし見みよ，さばきつかさの統とう治ち第だい二十七年ねんには，モロナイは南みなみと西にしの境さかいを守まもる軍ぐん隊たいの組そ織しきを終おえ，以い前ぜんに失うしなった町まちをテアンクムと彼かれの兵へいが取とり返かえすのを助たすけるために，バウンティフルの地ちへ軍ぐん隊たいを進すすめた。

16 さて，テアンクムは，ミュレクの町まちに攻こう撃げきを加くわえて，できればそこを取とり返かえすようにという命めい令れいを受うけていた。

17 そこでテアンクムは，ミュレクの町まちに攻こう撃げきを加くわえる準じゅん備びをし，軍ぐん隊たいを率ひきいてレーマン人じんに攻せめかかる準じゅん備びを整ととのえた。しかし，レーマン人じんがとりでの中なかにいる間あいだは打うち負まかせないことを知しったので，その計けい画かくを断だん念ねんし，バウンティフルの町まちに引ひき返かえしてモロナイの到とう着ちゃくを待まち，軍ぐん隊たいを増ぞう強きょうすることにした。

18 そして，ニーファイの民たみのさばきつかさの統とう治ち第だい二十七年ねんの末すえに，モロナイが軍ぐん隊たいを率ひきいてバウンティフルの地ちに到とう着ちゃくした。

19 また，第だい二十八年ねんの初はじめに，モロナイとテアンクムと多おおくの連れん隊たい長ちょうたちが作さく戦せん会かい議ぎを開ひらき，レーマン人じんを外そとに出だして戦たたかわせるにはどうすればよいか，また何なんらかの方ほう法ほうで彼かれらをとりでから誘さそい出だし，彼かれらより優ゆう位いに立たって再ふたたびミュレクの町まちを取とり返かえすにはどうすればよいかを協きょう議ぎした。

20 そして彼かれらは，ミュレクの町まちを守まもっているレーマン人じんの軍ぐん隊たいに，すなわちヤコブという名なの彼かれらの指し揮き官かんに使し者しゃを送おくり，軍ぐん隊たいを率ひきいて出でて来きて二つの町まちの間あいだの平へい原げんで戦たたかいを交まじえるように求もとめた。しかし見みよ，ゾーラム人じんであったヤコブは，軍ぐん隊たいを率ひきいて出でて来きて平へい原げんで戦たたかいを交まじえようとはしなかった。

21 そこでモロナイは，対たい等とうの条じょう件けんで彼かれらと戦たたかいを交まじえる望のぞみを失うしなったため，策さくを用もちいてレーマン人じんをとりでから誘さそい出だすことにした。

22 彼かれはテアンクムに少しょう数すうの兵へいを連つれて海かい岸がんの近ちかくを下くだって行いかせた。また，モロナイと彼かれの軍ぐん隊たいは夜よるに紛まぎれてミュレクの町まちの西せい方ほうの荒あれ野のに進しん軍ぐんした。するとその翌よく朝あさ，レーマン人じんの見み張はりの兵へいたちがテアンクムを見みつけ，走はしって行いって，そのことを自じ分ぶんたちの指し揮き官かんであるヤコブに知しらせた。

23 そして，レーマン人じんの軍ぐん隊たいは，テアンクムの兵へいの数かずが少すくなかったので自じ分ぶんたちの手て勢ぜいで打うち負まかせると思おもい，テアンクムに向むかって進すすんで行いった。そこでテアンクムは，レーマン人じんの軍ぐん隊たいが自じ分ぶんに向むかって出でて来きたのを見みて，海かい岸がんの近ちかくを北ほっ方ぽうに退たい却きゃくし始はじめた。

24 さて，レーマン人じんは，彼かれが逃にげ出だしたのを見みて勇いさみ立たち，勢いきおいよく彼かれらを追おった。また，テアンクムが無む駄だな追つい跡せきをして来くるレーマン人じんをこのように誘さそい出だしている間あいだに，見みよ，モロナイは自じ分ぶんが率ひきいていた軍ぐんの一いち部ぶに，町まちに入はいってそこを占せん領りょうするように命めいじた。

25 そこで彼かれらは，町まちに入はいってそこを占せん領りょうし，町まちを守まもるために残のこっていたすべての者もの，すなわち武ぶ器きを引ひき渡わたそうとしないすべての者ものを殺ころした。

26 このようにしてモロナイは，自じ分ぶんの軍ぐんの一いち部ぶをもってミュレクの町まちを手てに入いれるとともに，自じ分ぶんはテアンクムの追つい跡せきから戻もどって来くるレーマン人じんと戦たたかいを交まじえるために，残のこりの兵へいを率ひきいて進しん軍ぐんした。

27 さて，レーマン人じんはテアンクムを追つい跡せきし，ついにバウンティフルの町まちの近ちかくまでやって来きた。そして，彼かれらはそこで，バウンティフルの町まちを守まもるために残のこっていたリーハイと少しょう数すうの軍ぐん隊たいに出で会あった。

28 さて見みよ，レーマン人じんの連れん隊たい長ちょうたちは，リーハイが彼かれの軍ぐん隊たいを率ひきいて向むかって来くるのを見みたとき，自じ分ぶんたちがミュレクの町まちに帰かえり着つく前まえにリーハイに追おいつかれるのではないかと大おお慌あわてで逃にげ出だした。彼かれらは行こう軍ぐんのために疲つかれているのに，リーハイの兵へいたちは元げん気きであったからである。

29 さて，このときレーマン人じんは，モロナイが彼かれの軍ぐん隊たいを率ひきいて彼かれらの後こう方ほうに迫せまっていたのを知しらず，ただリーハイとその兵へいだけを恐おそれていた。

30 ところでリーハイは，モロナイとその軍ぐん隊たいに出で会あうまで，彼かれらに追おいつこうとしなかった。

31 そしてレーマン人じんは，遠とおくへ退しりぞく前まえにニーファイ人じんに取とり囲かこまれてしまった。一いっ方ぽうにはモロナイの兵へい，もう一いっ方ぽうにはリーハイの兵へいがいて，どちらも皆みな，元げん気きで力ちからに満みちあふれていた。それに引ひき替かえ，レーマン人じんは長ながい行こう軍ぐんで疲つかれ切きっていた。

32 そこで，モロナイは兵へいに，彼かれらが武ぶ器きを引ひき渡わたすまで攻こう撃げきを続つづけるように命めいじた。

33 さて，レーマン人じんの指し揮き官かんヤコブは^①ゾーラム人じんであり，不ふ屈くつの精せい神しんを持もっていたので，レーマン人じんを率ひきいてモロナイに向むかって猛もう烈れつな戦たたかいを仕し掛かけてきた。

34 モロナイがレーマン人じんの行ゆく手てを遮さえぎっていたので，ヤコブはモロナイの兵へいを殺ころし，道みちを切きり開ひらいてミュレクの町まちへ帰かえろうと決けつ意いしたのであった。しかし見みよ，モロナイとその兵へいの方ほうが強つよく，レーマン人じんに道みちを譲ゆずらなかった。

35 そして彼かれらは，どちらも非ひ常じょうに激はげしく戦たたかった。そして，双そう方ほうともに多おおくの者ものが殺ころされ，モロナイは負ふ傷しょうし，ヤコブは死しんだ。

36 また，リーハイが屈くっ強きょうな兵へいを率ひきいて激はげしくレーマン人じんの後こう方ほうを攻せめ立たてたので，後こう方ほうのレーマン人じんは武ぶ器きを引ひき渡わたした。また残のこりの者ものたちもひどくうろたえ，どこへ行いけばよいのか，どこを攻せめればよいのか分わからない有あり様さまであった。

37 それでモロナイは，彼かれらがうろたえているのを見みて，「もし武ぶ器きを持もって進すすみ出でて，それを引ひき渡わたすならば，見みよ，おまえたちの血ちを流ながすのをやめよう」と彼かれらに告つげた。

38 さて，レーマン人じんがこの言こと葉ばを聞きくと，まだ殺ころされていないその連れん隊たい長ちょうたちは皆みな進すすみ出でて，武ぶ器きをモロナイの足あしもとに投なげ出だし，兵へいたちにも同おなじようにすることを命めいじた。

39 しかし見みよ，そうすることを望のぞまない者ものも多おおかった。そこで，剣つるぎを引ひき渡わたそうとしない者ものたちは捕とらえられて縛しばられ，武ぶ器きを取とり上あげられた。そして，彼かれらの仲なか間まとともにバウンティフルの地ちへ引ひっ立たてられて行いった。

40 捕とらえられた捕ほ虜りょの人にん数ずうは，殺ころされた者ものの数かずよりも，まことに両りょう軍ぐんの殺ころされた者ものの数かずよりも多おおかった。