1ところで、わたしニーファイは、イザヤの口を通して語られた御言葉をこれまで書き記してきたが、今これらについて少し話をしよう。見よ、イザヤが語った多くの事柄は、わたしの民の多くの者にとって理解しにくいものである。それは、彼らがユダヤ人の預言の仕方を知らないからである。
2それは、ユダヤ人が闇の業にふけり、忌まわしい行いに走っていたので、わたしニーファイはユダヤ人の風習について多くのことを民に教えなかったからである。
3それで、わたしは自分の民に、また、わたしが今書いているこれらのものを将来受けるすべての人に書き記して、彼らが神の語られた御言葉のとおりに、すべての国民に及ぶ神の裁きについて知ることができるようにしよう。
4したがって、聴きなさい、おお、イスラエルの家に属するわたしの民よ。わたしの言葉に耳を傾けなさい。イザヤの言葉はあなたがたには分かりにくいが、預言の霊に満たされている人々には分かりやすい。わたしはあなたがたに、わたしの内にある御霊によって預言する。すなわち、父とともにエルサレムを出たときから絶えず示してきた、分かりやすい言葉で預言する。見よ、わたしは、民が学べるように分かりやすい言葉で話すことを喜びとしているからである。
5また、わたしは自分がエルサレムから出て来た者であり、この目でユダヤ人にかかわることを見てきたので、イザヤの言葉を喜んでいる。ユダヤ人は、預言者たちの述べた事柄をよく理解している。しかも、ユダヤ人に話された事柄をユダヤ人ほどよく理解できる者は、ユダヤ人の風習を教わっていないかぎり、ほかにいない。このことをわたしは知っている。
6しかし見よ、わたしはユダヤ人の風習について自分の子供たちに教えなかったが、見よ、わたし自身はかつてエルサレムに住んでいたので、その周りの地方について知っている。また、わたしは子供たちに、イザヤが語ったすべての事柄のとおりに、すでにユダヤ人に神の裁きが下ったことを告げた。それについてはここには書かない。
7しかし見よ、わたしは分かりやすい言葉で自分の預言を続けよう。分かりやすく述べれば、だれも誤解しようがないことを知っているからである。しかし、イザヤの預言が成就する日に、すなわちそれらの預言が事実となるときに、人々はそれが確かであることを知るであろう。
8それゆえ、イザヤの預言は人の子らにとって価値がある。価値がないと思う者に特にわたしは語ろう。また、わたしの民に対してだけ語る。それはイザヤの言葉が、終わりの時に、彼らにとって大いに価値のあるものとなることを知っているからである。彼らはその日に、イザヤの言葉を理解するからである。それゆえ、わたしは彼らのためにそれらを書き記してきたのである。
9ユダヤ人の中で一代の人々がすでに罪悪のために滅びたように、代々のユダヤ人も彼らの罪悪のために滅びてきた。彼らの中には、主の預言者たちから予告を受けることなしに滅びた者は、これまでにまだ一人もいない。
10さて、ユダヤ人は、わたしの父がエルサレムを去ったすぐ後に滅亡が及ぶことを告げられていた。にもかかわらず、彼らは心をかたくなにした。囚われの身となってバビロンへ連れ去られた者以外は、わたしの預言どおりに滅ぼされてしまった。
11わたしは今このことを、わたしの内にある御霊によって語る。彼らは連れ去られたにもかかわらず、将来再び帰って来て、エルサレムの地を所有する。彼らの受け継ぎの地に再び戻されるのである。
12しかし見よ、彼らの中には戦争と戦争のうわさがある。また、御父の独り子、すなわち天地の父が肉にあって彼らに御自身を現される日が来ると、見よ、彼らは罪悪を犯し、心をかたくなにし、強情になって、その御方を拒む。
13見よ、彼らは独り子を十字架につける。しかし、独り子は三日間墓に横たえられた後、御自分の翼にある癒しによって死者の中からよみがえられる。そして、独り子の名を信じる者は皆、神の王国に救われる。わたしは、この独り子について預言することに喜びを感じる。それは、わたしはすでにこの独り子の生涯を見たからである。したがって、わたしの心は独り子の聖なる名を賛美する。
14そして見よ、メシヤが死者の中からよみがえり、御自分の民に、すなわち御名を信じる多くの者に御自身を現された後、見よ、エルサレムは再び滅ぼされる。神と神の教会の聖徒たちに逆らって戦う者は、災いを受けるからである。
15これによって、ユダヤ人はすべての国民の中に散らされる。また、バビロンも滅ぼされるので、ユダヤ人はほかの国民によって散らされる。
16そして、彼らが散らされ、主なる神が何世代もの間、すなわち、彼らが神の御子キリストと全人類のための無限の贖罪を信じるようになるまで、代々ほかのもろもろの国によって彼らを鞭打たれた後、やがて彼らがキリストを信じ、純真な心と清い手をもってキリストの名により天の御父を拝し、もうほかのメシヤを待ち望まない日が来る。そのときには、彼らはこれらの事柄を信じざるを得なくなる。
17やがて主は御自分の民を、迷い堕落した状態から元の状態に戻す業を再び始められる。そのために、主は驚くべき業と不思議を人の子らの中で行われる。
18そして主は、彼らに御自分の言葉を伝えられる。それらの御言葉は彼らに、かつてユダヤ人が拒んだまことのメシヤを信じさせ、また、もうほかのメシヤがおいでになるのを待ち望む必要がないことを確信させるために与えられるものであるから、彼らは終わりの日にこれらの御言葉によって裁かれるのである。預言者たちの語るメシヤはただ一人であって、ユダヤ人はそのメシヤを拒むのであるから、ほかにメシヤが来るとすれば、それは民を惑わす偽りのメシヤにほかならない。
19預言者たちの言葉によれば、メシヤはわたしの父がエルサレムを去ってから六百年で来られる。また、預言者たちの言葉と神の天使の言葉によれば、その御名は神の御子イエス・キリストととなえられる。
20さて、わたしの同胞よ、わたしはあなたがたが誤解しないように分かりやすく語ってきた。イスラエルをエジプトの地から導き出し、また、民が毒蛇にかまれたときにはモーセが彼らの前に上げた蛇を見れば癒されるようにモーセに力を与え、さらに、岩を打てば水が出るようにモーセに力を授けられた主なる神が生きておられるように、まことに見よ、これらのことが真実であり、主なる神が生きておられるように、わたしが語ってきたイエス・キリストのほかに、人に救いを与えることのできる名は天下に与えられていないということを、あなたがたに言っておく。
21さて、このような理由で、主なる神は、わたしが書き記すこれらのものが保存され、残されて、代々わたしの子孫に伝えられると約束してくださった。それによって、ヨセフの子孫は大地のあるかぎり決して滅びることはないという約束が、ヨセフに対して果たされるのである。
22それゆえ、これらのものは大地のあるかぎり代々伝わる。神の御心と思いのままに伝わるのである。そして、これらのものを所有する国民は、書き記されている言葉によって裁かれるのである。
23わたしたちは子孫と同胞に、キリストを信じ、神と和解するように説き勧めるために、熱心に記録し続けようと努めている。それは、わたしたちが自分の行えることをすべて行った後に、神の恵みによって救われることを知っているからである。
24また、わたしたちはキリストを信じているが、今はモーセの律法を守り、律法が成就するまで確固としてキリストを待ち望む。
25この目的のために律法が与えられたからである。それゆえ、律法はわたしたちにとってすでに無用となって、わたしたちは信仰により、キリストによって生かされている。それでも、神の戒めに従って律法を守るのである。
26わたしたちはキリストのことを話し、キリストのことを喜び、キリストのことを説教し、キリストのことを預言し、また、どこに罪の赦しを求めればよいかを、わたしたちの子孫に知らせるために、自分たちの預言したことを書き記すのである。
27それゆえ、律法について語るのは、わたしたちの子孫に律法が無用であることを知らせるためである。また彼らが、律法が無用であることを知って、キリストの内にある命を待ち望み、律法が何の目的で与えられたかを知ることができるようにするためである。さらに、キリストによって律法が成就して律法が廃されるときに、彼らがキリストに対して心をかたくなにすることがないようにするためである。
28さて見よ、わたしの民よ、あなたがたは強情な民であるから、誤解しようのないように、わたしは分かりやすく語ってきた。わたしが語ってきた言葉は、どんな人にでも正しい道を教えるのに十分であるから、あなたがたを責める証になる。正しい道とは、キリストを信じること、キリストを否定しないことである。キリストを否定すれば、預言者と律法も否定することになる。
29さて見よ、わたしはあなたがたに言っておく。正しい道とはキリストを信じること、キリストを否定しないことである。そして、キリストとはイスラエルの聖者である。それゆえ、あなたがたはキリストの前にひれ伏し、あなたがたの勢力と思いと力を尽くし、全身全霊を込めてキリストを拝さなければならない。これを行えば、あなたがたは決して追い出されることはない。
30モーセに与えられた律法が成就するまで、必要なかぎり、あなたがたは神の勤めと儀式を守らなければならない。