1 さて、わたしニーファイは、主と話をしてから父の天幕に帰った。
2 そこで父は、わたしに次のように言った。「見よ、わたしは①夢を見た。その夢の中で主は、あなたと兄たちをエルサレムに戻らせるようにわたしに命じられた。
3 それは見よ、ラバンがユダヤ人の記録とわたしの先祖の①系図を持っているからであって、それらは真鍮の版に刻まれている。
4 それで主はわたしに、あなたとあなたの兄たちがラバンの家へ行ってその記録を何とか手に入れ、それを荒れ野の中のここまで持って来るように命じられたのである。
5 ところで、あなたの兄たちは、わたしの求めていることが難しいと言って、つぶやいている。しかし、わたしが彼らにそれを求めたのでは決してない。それは主の命令なのだ。
6 だからわが子よ、行きなさい。あなたは①つぶやくことがなかったので、主から恵みを受けるであろう。」
7 そこで、わたしニーファイは父に言った。「わたしは①行って、主が命じられたことを行います。主が命じられることには、それを成し遂げられるように主によって道が②備えられており、それでなくては、主は何の③命令も人の子らに下されないことを承知しているからです。」
8 さて、父はこの言葉を聞くと、わたしが主から祝福を受けていたことを知って非常に喜んだ。
9 それでわたしニーファイと兄たちは、エルサレムの地へ上って行くために天幕を持って荒れ野に旅立った。
10 そしてエルサレムの地に着くと、わたしと兄たちは相談した。
11 わたしたちは、だれがラバンの家に入って行くか、①くじを引いた。そして、そのくじがレーマンに当たった。それでレーマンはラバンの家に入って行き、座に着いているラバンと話をした。
12 そして彼は、真鍮の版に刻まれていて、父の①系図が載っている記録を譲ってくれるようにラバンに頼んだ。
13 そこで見よ、ラバンは、ひどく怒ってレーマンを自分のもとから追い出し、その記録を渡そうとはしなかった。またラバンはレーマンに、「おまえは盗賊だ。殺してやる」と言った。
14 しかしレーマンは、ラバンのもとから逃げ出して来て、ラバンのしたことをわたしたちに話した。それでわたしたちは大いに悲嘆に暮れ、兄たちは荒れ野にいる父のところへ帰ってしまおうとした。
15 しかし見よ、わたしは兄たちに言った。「主が生きておられ、またわたしたちが生きているように確かに、わたしたちは主から命じられたことを成し遂げるまでは、荒れ野にいる父のところへは下って行きません。
16 だから、主の命令を忠実に守りましょう。父の①受け継ぎの地へ行きましょう。まことに、父は金や銀など、あらゆる富を後に残してきているからです。そして父は、これをすべて②主の命令によってしたのです。
17 それは父が、民の悪事のためにエルサレムが必ず①滅ぼされることを知っていたからです。
18 まことに、エルサレムの民は預言者たちの言葉を①拒みました。だから、もし父がこの地から逃げるように②命じられながらこの地にとどまるなら、父もまたきっと滅びるでしょう。そういうわけで、父はこの地からどうしても逃れなければならなかったのです。
19 そしてまことに、これらの①記録を手に入れるのは、神の知恵です。そうすれば、先祖の言葉を子孫に残すことができるし、
20 また、世の初めから現在に至るまで、すべての聖なる預言者の口を通して語られ、神の御霊と力によって語られてきた御言葉を、子孫に①残すことができるのです。」
21 わたしは、兄たちが神の命令を忠実に守るように、このような言葉で説得したのであった。
22 さて、わたしたちは受け継ぎの地へ下って行って、わたしたちの①金や銀、貴重品を集めた。
23 そしてこれらの品々を集めてから、もう一度ラバンの家に行った。
24 さて、わたしたちはラバンのところに行って、金や銀やすべての貴重品を渡す代わりに、①真鍮の版に刻まれた記録をわたしたちに譲ってくれるように頼んだ。
25 そこで、ラバンはわたしたちの持っているものを目にし、しかもそれが大したものであるのを見て、①欲しくてたまらなくなった。それで彼は、わたしたちを追い出し、わたしたちの持っているものを自分のものにするために、召し使いにわたしたちを殺させようとした。
26 そこでわたしたちは、ラバンの召し使いたちの前から逃げ出した。そして、持っていたものは後に残してくるよりほか仕方がなかったので、それはラバンのものになってしまった。
27 さて、わたしたちは荒れ野に逃げ込み、またラバンの召し使いたちに追いつかれなかったので、とある岩の洞穴に身を隠した。
28 さて、レーマンはわたしと父に腹を立てた。またレムエルも、レーマンの言葉に聞き従ったのでともに腹を立てた。それでレーマンとレムエルは、弟であるわたしたちに多くの①荒々しい言葉を吐き、そのうえ棒でわたしたちを打った。
29 さて、彼らがわたしたちを棒で打っていると、見よ、一人の主の①天使が来て、彼らの前に立ち、このように言った。「なぜあなたがたは自分の弟を棒でたたくのか。主が彼を選んであなたがたを②治める者になさったこと、そしてこれがあなたがたの罪悪のためであることを知らないのか。さあ、もう一度エルサレムへ上って行きなさい。そうすれば、主はラバンをあなたがたの手に渡されるであろう。」
30 この①天使はわたしたちにこのように語ると、立ち去った。
31 天使が立ち去ってから、レーマンとレムエルはまたも①つぶやき始め、こう言った。「主がどのようにして、ラバンを我々の手に渡すことができるというのか。見よ、ラバンは力のある人で、五十人を指揮することができるし、まことに、五十人を殺すことさえできる。それならば、どうして我々を殺せないわけがあろうか。」