2000–2009
散らされたイスラエルの集合
2006年10月


散らされたイスラエルの集合

わたしたちは幕の両側で,主の選民を集めるのを手伝っているのです。

愛する兄弟姉妹,皆さんの信仰,献身,そして愛に感謝します。わたしたちは主が望まれている人物になり,主が望まれていることを行うという非常に大きな責任を共有しています。わたしたちは散らされたイスラエルを集めるという偉大な業に携わっています。今日(きょう)はこの教義について話します。なぜなら,イスラエルの集合は神の永遠の計画において特別に重要な意味を持っているからです。

アブラハムの聖約

古代において,主は父祖アブラハムに,その子孫を選ばれた民にすると約束されました。1 この聖約に関する聖句は,聖文の至る所にあります。この聖約には,アブラハムの血統に神の御子がお生まれになること,特定の地が受け継がれること,そしてアブラハムの子孫によって地上の国民と種族が祝福されることなどが含まれます。2 その聖約の幾つかはすでに成就していますが,このアブラハムの聖約は末日においてのみ成就する,とモルモン書には記されています。3 また,モルモン書には,わたしたちが主の聖約の民に含まれていることも強調されています。4 これらの約束の成就に個人的に携われることは,わたしたちの特権です。何とすばらしい時代に生きているのでしょう。

イスラエルの散乱

古代イスラエルの部族は,アブラハムの子孫として神権の権能と福音の祝福を受けていましたが,次第に背いていきました。彼らは預言者たちを殺し,そのために主に罰せられました。10の部族はアッシリアに捕らわれていきました。それ以降,彼らは人類の歴史記録から姿を消し,失われてしまいました。(主の目には「失われて」いないことは明らかです。)残りの二つの部族は短い間存続し,その後,背いたためにバビロンに捕らえられていきました。5バビロンから戻ったとき,彼らは主の厚い恵みを受けましたが,そのときも主を敬いませんでした。彼らは主を拒み,そしりました。愛にあふれる御父は悲しみながらこのようにはっきりと言われました。「わたしはあなたがたを国々の間に散ら〔す〕。」6主はそのとおりに,彼らをあらゆる国々へ散らされました。

イスラエルの集合

散らされたイスラエルを集めるという神の約束も同じように明確なものです。7

例えば,イザヤは末日において,「散らされ,はぎ取られた」それらの民に,主が「とく走る使者」を送られるのを予見しました。8

聖典の随所に記されている集合に関するこの約束は,イスラエルの散乱に関する預言と同じように確かに成就するでしょう。9

時の中間におけるイエス・キリストの教会と大背教

十字架におかかりになる前に,主イエス・キリストは御自身の教会を設立されました。教会には,使徒,預言者,七十人,教師などがおり10,主は御自身の福音を宣のべ伝えるために弟子たちを世に遣わされました。11

しばらくすると,主によって建てられた教会に霊的な腐敗が生じました。主の教えは曲げられ,儀式が変えられました。そして「まず背教のことが起おこ〔らなければ〕」主が再臨されないことを知っていたパウロが預言したように,大背教が起こりました。12

この大背教は,過去の各神権時代を終わらせたのと同じ足跡をたどりました。最初の神権時代はアダムの時代でした。それからエノク,ノア,アブラハム,モーセへと続きました。それぞれの預言者は,主イエス・キリストの神性と教義を教える使命を負っていました。各神権時代において,これらの教えは人々を助けるために与えられました。しかし,人々の不従順さが背教を生んだのです。そのため,過去のすべての神権時代はその期間と場所が限定されていました。それぞれの神権時代が背教で終わったため,一定の期間と,この地球の比較的小さな区域に限定されていたのです。

万物の回復

このため,完全な回復が必要でした。父なる神とイエス・キリストは,この神権時代の預言者としてジョセフ・スミスを召され__ました。過去の神権時代に存在した,神から与えられるすべての力がジョセフ・スミスによって回復されました。13 この時満ちる神権時代は,時期や場所が限定されま

せん。背教で終わることはなく,世界中を

真理で満たすのです。14

イスラエルの集合──万物の回復において不可欠な事柄

ペテロとパウロが預言したように,すべてのものがこの神権時代で回復されることになっていました。ですから,その回復の一部として,長い間待っていたイスラエルの集合が起きなければならないのです。15イスラエルの集合は,主の再臨の先駆けとして必要なものです。16

集合の教義は,末日聖徒イエス・キリスト教会の重要な教えの一つです。主はこう宣言されました。「わたしが自分の民,イスラエルの家を長年の離散した状態から集めて,彼らの中に再びわたしのシオンを設ける〔ことの〕……一つのしるしをあなたがたに示そう。」17 ルモン書の出現は,主がイスラエルを集め,アブラハム,イサク,ヤコブと交わされた聖約を成就し始められたことを全世界に示すしるしです。18 わたしたちはこの教義を教えるだけでなく,それに携わっています。幕の両側で主の選民を集めるのを手伝うことで,この業に携わっているのです。

モルモン書はこの業の中心を成しています。集合の教義を宣言し,19 また,イエス・キリストについて学び,主の福音を信じ,教会に加わるよう人々を促します。

実際のところ,もしモルモン書が出現しなければ,約束されているイスラエルの集合は起きないのです。20

わたしたちにとって,アブラハムという栄誉ある名は重要なものです。この名は聖書のすべての聖句よりも,回復された聖文の中に数多く登場します。21 アブラハムは末日聖徒イエス・キリスト教会のすべての会員と結び付いています。22 主は預言者ジョセフ・スミスを通して,現代に再びアブラハムの聖約について明言されました。23わたしたちは神殿の中で,アブラハム,イサク,ヤコブの子孫として究極の祝福を受けます。24

時満ちる神権時代

この時満ちる神権時代は神により,天と地の両方において集合する時代として予見されていました。ペテロは,大背教時代の後に回復が訪れることを知っていました。主とともに変貌の山にいたペテロはこう宣言しました。

「だから,自分の罪をぬぐい去っていただくために,悔い改めて本心に立ちかえりなさい。それは,主のみ前から慰めの時がきて,… …

神が聖なる預言者たちの口をとおして,昔から預言しておられた万物更新の時まで,天にとどめておかれねばならなかった。」25 近代では,使徒のペテロ,ヤコブ,ヨハネが「終わりの時代のために,また天にあるものと地にあるもののすべてを一つに集める時満ちる時代のために,〔主〕の王国の鍵(かぎ)と福音の神権時代」を携えて主から遣わされました。26

1830年に,預言者ジョセフ・スミスは「万物の回復」をもたらす鍵を持つ,エライアスという名の御使(みつか)いについて知らされました。27

6年後,カートランド神殿が奉献されました。主がその聖なる宮を受け入れられた後,天使たちが神権の鍵を持って訪れました。モーセが現れて28 「地の四方からのイスラエルの集合と北の地からの十部族の導きの鍵を……ゆだねた。44

この後,エライアスが現れ,わたしたちと子孫によってわたしたちの後の時代のすべての者が祝福を受けるであろうと述べて,アブラハムの福音の神権時代をゆだねた。」29それから預言者エリヤが来て,こう宣言しました。「見よ,マラキの口を通して語られたときがまさに来た。……主の大いなる恐るべき日が来る前に彼〔エリヤ〕が遣わされ,先祖の心を子孫に,子孫の心を先祖に向けさせ,全地がのろいをもって打たれることのないようにする。」30

これらの出来事は1836年4月3日に起き,31 マラキの預言を成就しました。32

の神権時代の神聖な鍵が回復されたのです。33

幕の向こう側で霊を集める

憐(あわ)れみにより,「キリストのもとに来る」34という招きは福音を知らずに亡くなった人々にも差し伸べられます。35 死者がみもとに来る備えをするには,他の人々の地上での働きが必要になります。わたしたちは個人を,主とその家族のもとに集めるために系図を集め,家族の記録を作成し,身代わりで神殿の業を行います。36

集合の業に携わる── 聖約による責任

この地上において,伝道活動はイスラエルの集合に欠かせません。福音はまず「イスラエルの家の失われた羊」に伝えられることになっていました。37 れに従い,__主の僕(しもべ)たちは出て行って,回復を宣言しました。教会の宣教師たちは多くの国で散らされたイスラエルを探してきました。古代と同じように,彼らを岩の裂け目から狩り出し,すなどってきました。38

キリストのもとに来るという選択は,物理的な場所の問題ではありません。個人の献身の問題なのです。人々は郷里を離れることなく「主……を知るようにな」39 ります。教会初期の時代,改宗はしばしば移民をも意味しました。しかし今日(こんにち)では,それぞれの国に民が集められます。主は聖徒たちに,各々の生まれた国においてシオン40 を打ち立てるよう命じられました。聖文には,人々が「彼らの受け継ぎの地に集め戻され,彼らに約束されたすべての地に定住する」41 と預言されています。「各国はその国民のための集合場所です。」42 ブラジルの聖徒の集合地はブラジル,ナイジェリアの聖徒の集合地はナイジェリア,韓国の聖徒の集合地は韓国なのです。シオンは「心の清い者」です。43 義にかなった聖徒がいる場所ならどこでもシオンです。各言語での出版物や,通信網の発達,集会所の建設のおかげで,ほとんどすべての会員が,居住している地域に関係なく,福音の教義,鍵,儀式,祝福を受けることができるようになっています。

霊的な安全は,わたしたちの住む場所ではなく,生き方にかかっています。各国の聖徒たちは,主の祝福に対して同等の権利を得ることができるのです。

全能の神によるこの業は真実です。主は生きておられます。イエスはキリストです。この教会は,約束されたイスラエルの集合を含め,その神聖な目的を果たすために回復されたのです。ゴードン・B・ヒンクレー大管長は今日の神の預言者です。イエス・キリストの御名(みな)により証((あかし))します,アーメン。

  1. .創世12:1-2;教義と聖約132:29-32;アブラハム2:6-11参照

  2. .創世26:1-4,24,28;35:9-13;48:3-4;ヨハネ8:33,39;使徒3:25;1ニーファイ17:40;2ニーファイ29:14;モルモン書ヤコブ5章;エテル13:7-8;教義と聖約52:2参照

  3. .例として,1ニーファイ15:12-18参照

  4. .1ニーファイ14:14;15:14;2ニーファイ30:2;モーサヤ24:13;3ニーファイ29:3;モルモン8:15;教義と聖約133:26-34参照

  5. .レビの部族は民の間に祭司を提供したため,部族として数えられることはなく,部族としての受け継ぎもなかった。ヨセフの二人の息子,マナセとエフライムは受け継ぎの土地を与えられた。この二人はヨセフの代わりに部族の中に数えられた。これにより,十二部族の数は保たれた。

  6. .レビ26:33;エレミヤ9:16も参照

  7. .創世22:16-18;3ニーファイ20-22章;アブラハム2:10-11参照

  8. .欽定訳イザヤ18:2,7から和訳

  9. .レビ26:44;申命4:27-31;28章;29章;30:2-5;ネヘミヤ1:9;イザヤ1 1:1 1 - 1 2;エレミヤ31:7-8,10-12;エゼキエル37:21-22;アモス9:14-15;マタイ24:31;モルモン書ヤコブ6:2参照。ラッセル・M・ネルソン「出エジプトの再現」『リアホナ』2002年4月号,30-39も参照

  10. .ルカ10:1,17;エペソ4:11;信仰箇条1:6参照

  11. .マタイ28:19-20;マルコ16:15参照

  12. .2テサロニケ2:3。英語の「F a l l i n g away(背教)」は「apostasy(背教)」という意味の「apostasia」から訳されている。

  13. .教義と聖約128:18;132:45参照

  14. .イザヤ27:6参照

  15. .1ニーファイ15:18参照;モルモン書タイトルページ,第2段落も参照

  16. .教義と聖約133:17参照

  17. .3ニーファイ21:1

  18. .創世12:2-3;26:3-4;35:11-12;および3ニーファイ21,29章の前書きを参照

  19. .イスラエルの家の散乱と集合に関する教義は,モルモン書で教えられている最初の教えの一つである。「イスラエルの家は散らされてから,再び集められる。……オリーブの木の自然の枝,すなわちイスラエルの家の残りの者たちは接ぎ木される。すなわち彼らの主であり贖い主であるまことのメシヤを知るようになる。」(1ニーファイ10:14)

  20. .ブルース・R・マッコンキー,A N e w Witness for the Articles of Faith,1985年,554参照

  21. .アブラハムは聖文の506か所(節)に登場する。聖書には216か所あり,回復された聖文には290か所ある。

  22. .聖約は養子縁組によっても受けられる(マタイ3:9;ルカ3:8;ガラテヤ3:26-29;4:5-7;アブラハム2:9-10参照)

  23. .教義と聖約124:58;132:31-32参照

  24. .教義と聖約84:33-40;132:19;アブラハム2:11参照

  25. .使徒3:19,21

  26. .教義と聖約27:13。パウロはまたこう預言している。「時の満ちるに及んで……神は天にあるもの地にあるものを,ことごとく,キリストにあって一つに帰せしめようとされ〔る〕。」(エペソ1:10)

  27. .教義と聖約27:6

  28. .神の子供たちを最初に受け継ぎの地に導いたモーセが,回復された教会にイスラエルの集合の鍵をゆだねたことは適切であった。モーセは変貌の山でペテロ,ヤコブ,ヨハネのもとに来て,彼らの時代に同じ神権の鍵を授けた。1840年の教会の大会で,預言者ジョセフ・スミスはオーソン・ハイドにエルサレムへ行き,ユダヤ人と散らされたイスラエルの帰還のためにその地を奉献するように任命した。441841年10月24日の日曜,ハイド長老はオリブ山の上でひざまずき,ユダヤ人とイスラエルが先祖の受け継ぎの地に集合するように,その地を奉献した。

  29. .教義と聖約110:11-12

  30. .教義と聖約110:14-15

  31. .モーセ,エライアス,エリヤが過ぎ越しの始まりである復活祭の日曜日に訪れたことには重要な意味がある。

  32. .マラキ4:5-6

  33. .教義と聖約110:16参照

  34. .モルモン書ヤコブ1:7;オムナイ1:26;モロナイ10:30,32;教義と聖約20:59

  35. .教義と聖約137:6-8参照

  36. .1コリント15:29;1ペテロ4:6参照

  37. .マタイ10:6;15:24

  38. .エレミヤ16:16参照

  39. .3ニーファイ20:13

  40. .教義と聖約6:6;11:6;12:6;14:6参照

  41. .2ニーファイ9:2

  42. .ブルース・R・マッコンキー,Conference Report,メキシコおよび中央アメリカ地域総大会,1972年,4参照

  43. .教義と聖約97:21

  44. .2ニーファイ9:2;10:7-9;25:16-17,20;3ニーファイ21:22-28;教義と聖約29:7-8参照