2000–2009
シオンの丘
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シオンの丘

末日聖徒イエス・キリスト教会に進んで入り,その原則と儀式に忠実であろうとする人はだれでも,「シオンの丘」に立っています。

わたしは長生きをすると同時に,標準が一つずつ排除されるのを目まの当たりにしてきました。その標準とは,文明が存続するかどうかの要になるものです。

道徳,結婚,家庭,家族といったものの昔ながらの標準が,法廷や審議会で,議会や教室で次々とくつがえされる時代にわたしたちは生きています。幸福はまさにこの標準に従って生きることに左右されるのです。

使徒パウロは,この時代に,つまりこの終わりの時に,人は「親に逆らう者,……無情な者,……善を好まない者,……神よりも快楽を愛する者」になるであろうと預言しました(2テモテ3:2-4)。

そして「悪人と詐欺師とは人を惑わし人に惑わされて,悪から悪へと落ちていく」と警告しました(2テモテ3:13)。パウロは間違っていませんでした。しかしわたしは将来のことを思うと,前向きで楽観的な思いで胸がいっぱいになります。

パウロは若きテモテに,使徒たちから学んだところにとどまっているように,そうすれば守られるであろうと言いました。それはテモテが「幼い時から聖書に親しみ,それが,キリスト・イエスに対する信仰によって救すくいに至る知恵を,あなたに与えうる書物であることを知ってい」たからです(2テモテ3:15)。

聖文の知識は大切です。わたしたちは聖文から霊的な導きについて学びます。

「聖文として出版されるほどに啓示があふれていた教会初期の時代に生きていたら,わたしは喜んで迫害や試練に耐えたでしょう。どうして今は啓示がないのですか」と言う言葉を何度も聞いたことがあります。

預言者ジョセフ・スミスを通して与えられた啓示は,聖文として印刷され,教会の不変の基盤を据えました。この教会を通してイエス・キリストの福音は「あらゆる国民」に伝えられます(2ニーファイ26:13)1

預言者および大管長そして副管長の職,十二使徒定員会,七十人定員会,管理監督会,ステークやワードや支部が聖文の中で定義づけられています。メルキゼデク神権やアロン神権の職も定義づけられています。霊感や啓示が,指導者や教師,両親や個人に伝わる経路も聖文を通して確立されました。

今日こんにちでは逆境や試練にも違いがあります。どちらかと言えば,初期の時代よりも強さと危険性を増していて,教会よりもむしろ個人がねらわれています。初期の啓示は聖文として出版されており,教会に不変の導きを与え,また儀式や聖約を定めています。しかも現在でも有効です。

聖文にはこのような約束がなされています。「備えていれば恐れることはない。」(教義と聖約38:30)

備えるためになされてきたことをお話ししましょう。そうすれば,なぜわたしが未来を恐れず,それほど自信をもって前向きでいられるのか分かるでしょう。

大管長会と十二使徒定員会が近年行ってきたことを全部詳しく説明することはできません。項目だけ並べ挙げることすら不可能です。しかし何が行われてきたかを知れば,啓示が引き続き教会や各会員に与えられていることが分かるでしょう。ですからそのうちの幾つかを話します。

40年以上前,各教会員が簡単で容易に教義を研究できるように英語版の末日聖典を作成するという決定が下されました。教会は欽定訳聖書,モルモン書,教義と聖約,高価な真珠の相互参照に着手しました。欽定訳聖書の原文には一切変更を加えませんでした。

この時代に備えるための業は何世紀も前に行われました。欽定訳聖書の90パーセントはウィリアム・ティンダルとジョン・ウィクリフによって翻訳されました。このような初期の翻訳家で殉教者であった人々から,わたしたちは多くの恩恵を受けています。

ウィリアム・ティンダルはこう言っています。「鋤すきを引いて畑を耕している農家の子供でさえ,〔聖職者〕よりもはるかに聖書に精通させてみせよう。」2

アルマは大きな試練を経験した後,さらに大きな試練に直面しました。記録にはこう書かれています。「ところで,御言葉みことばを説き教えることは民に正しいことを行わせるのに大きな効果があり,まことにそれは,剣やそのほか,これまで民に起こったどのようなことよりも民の心に力強い影響を及ぼしたので,アルマはこの度も神の言葉の力を使うのが望ましいと思った。」(アルマ31:5)

わたしたちが聖典事業に着手したときに考えていたのも,まさにこのことでした。教会のすべての会員が聖文に精通し,その中にある原則と教義を理解できるようにすることです。ティンダルやウィクリフがかつて行ったことを現代に再現しようとしたのです。

ティンダルもウィクリフも激しく迫害されました。ティンダルはブリュッセルで凍えるような寒い牢ろうに入れられました。服はぼろぼろになり,寒さは容赦なく襲ってきます。司教たちに手紙を書き,上着と帽子を送ってほしいと頼みました。そして「暗闇くらやみの中で一人座っているのはほんとうに疲れます」3 と書いて,ろうそくも求めました。この求めに激怒した司教たちは,ティンダルを牢から引き出し,群集の前で火あぶりの刑に処しました。

ウィクリフは生きている間は火あぶりを免れましたが,コンスタンツ公会議により遺体は墓から掘り返され,火で焼かれ,灰はばらまかれたのです。4

預言者ジョセフ・スミスは,16世紀のイギリスの聖職者ジョン・フォックスが書いた『殉教者列伝』(Book of Martyrs)を,七十人のエドワード・スティーブンソンの母親から借りました。ジョセフは読み終わってから,このように言いました。「わたしはウリムとトンミムの力を借りて,この殉教者たちを見ました。彼らの持つ光によると,正直で献身的なキリストの信奉者です。彼らは救われるでしょう。」5

7万節以上の聖句を相互参照したり,脚注や注解を作成したりすることは,とてつもなく困難で,不可能とさえ思われていました。しかし着手したのです。完成までに12年かかり,600人以上の人の手を借りました。中には,ギリシャ語,ラテン語,ヘブライ語の専門家や古代の聖文の知識を持つ人もいましたが,たいていは普通の忠実な教会員でした。

霊感の霊がこの業を覆いました。

コンピューターがなければこの計画は実現不可能でした。

すばらしいシステムが作られて何万もの脚注を整理し,畑を耕すどんな子供にも聖文が明らかになりました。

会員は項目別の索引を使えば,わずかな時間で「贖罪しょくざい」「悔い改め」「聖霊」などの言葉を調べることができ,標準聖典全部から意味深い参照聖句を見つけることができます。

この事業が始まって数年後,テーマをアルファベット順に並べていくという単調で骨の折れる仕事の進み具合を尋ねました。返事にはこう書いてありました。「『天国』(Heaven)も『地獄』(Hell )も通り過ぎ,『愛』(Love)も『肉欲』(Lust)も乗り越え,今は『悔い改め』(Repentance)に向かって進んでいるところです。」

モルモン書を印刷する前の原稿も入手しました。そのおかげで,翻訳された聖文を原稿から印刷するときに紛れ込んだ間違いを訂正することもできました。

英語版聖典の『項目別ガイド』(TopicalGuide)で最も注目すべきは,18ページにわたり,小さな文字で行間を開けずに印刷された「イエス・キリスト」の項です。これは,世界史上イエス・キリストの名で編さんされたあらゆる資料の中で,最も広範な情報を盛り込んだ聖文資料となっています。この参照聖句をたどってください。そうすれば,教会がどなたのものであり,何の権威でどのような事柄を教え,さらにはイエス・キリスト,神の御子,メシヤ,贖あがない主,わたしたちの主の聖なる御名みなにすべてが基づいていることが分かるでしょう。

教義と聖約に新しい啓示が二つ加えられました。エンダウメントを執行しているときに預言者ジョセフ・スミスが受けた啓示を記した第137章と,ジョセフ・F・スミス大管長に与えられた死者の贖いに関する示現,つまり第138章です。そしてこの作業が終わり,印刷に回るころ,神権に関するすばらしい啓示が授けられ,公式の宣言として発表され(教義と聖約公式の宣言二参照),聖文に終わりがないことが証明されました。

その後,教会で使われている様々な言語への翻訳という,けた外れの難題が待ち受けていました。現在までに『聖句ガイド』が集録された合本は24の言語で出版されていて,今後も増えていきます。モルモン書は106の言語で出版されていて,さらに49の言語で翻訳が進んでいます。

ほかにもなされた事柄があります。モルモン書に副題が付き,「モルモン書――イエス・キリストについてのもう一つの証」となりました。

正しい根拠に基づいた教義はソルトレーク神殿の花崗かこう岩のように堅固で,だれでも手にすることができ,より多くの人が,教会に啓示が絶えず注がれているのを目の当たりにすることができます。「わたしたちは,神がこれまでに啓示されたすべてのこと,神が今啓示されるすべてのことを信じる。またわたしたちは,神がこの後も,神の王国に関する多くの偉大で重要なことを啓示されると信じる。」(信仰箇条1:9)

聖典の出版が進む一方で,別の大きな業が始まっていました。これもまた何年もかかるものです。教会の教科課程全体が再編成されたのです。神権組織と,子供や青少年,成人のための補助組織における学習過程はすべて,聖文とイエス・キリスト,また神権と家族を中心とするよう改訂されました。

何百人ものボランティアが何年も協力してくれました。中には,執筆や教科課程,教育など関連分野の専門家もいましたが,たいていは普通の教会員でした。すべては聖文に基づいており,神権の権能を強調し,神聖な家族の本質に着目しています。

大管長会と十二使徒定員会は「家族――世界への宣言」6を,その後「生けるキリスト――使徒たちの証」7を発行しました。

セミナリーとインスティテュートは世界中に広まっています。教師も生徒も御霊みたまによって学び,教えています(教義と聖約50:17-22参照)。聖典や預言者の言葉,救いの計画,イエス・キリストの贖罪,大背教と回復,それに回復された教会の比類ない立場を理解するように教えられ,そこに見られる原則と教義を確認するように教えられます。生徒は日々聖文を勉強することを習慣とするよう奨励されています。

月曜日の夜は家庭の夕べのために取っておかれています。教会のあらゆる活動を控えて,家族が一緒にいられるようにすべきです。

当然の流れとして,伝道の業は『わたしの福音を宣のべ伝えなさい』という表題の下,再び啓示に頼って行われています。宣教師は2年間,教義を学び,御霊によって教える方法を学び,証を伝えます。そうして解任されて148か国にある故郷に帰る宣教師の数は毎年,2万5,000人以上に上ります。

そして神権統治の原則が明確にされました。アロン神権もメルキゼデク神権も,定員会は尊ばれ,大いなるものとされてきました。いつでも,どこでも,監督や会長など鍵かぎを持つ指導者がいて,導きを与え,解釈の間違いを明らかにし,偽りの教義に気づいて訂正します。

神権会や扶助協会の成人に向けた学習過程は,教会の歴代大管長の教えに基づいています。

教会機関誌は再構成され,現在50の言語で発行されています。

すばらしい神殿建設の時代は続き,122の神殿で儀式が執行されており,さらに二つの神殿が昨日発表になりました。

系図は家族歴史と改められ,忠実な会員たちが最新のテクノロジーの助けを借りて,名前を準備し,神殿に提出しています。

このすべてが今も啓示があることを証しています。ほかにもたくさんの事柄があります。細かな点まで語れないほどの数に上ります。

教会にはプログラムや集会や組織よりも意味深い,中核になる力があります。それは変わることがありません。腐食することもあり得ません。一定した確実なものです。縮小することも色あせることもありません。

教会には集会を開く場所として教会堂がありますが,同時に末日聖徒一人一人の心と魂に息づいています。

世界中の至る所で,謙遜けんそんな会員は聖文から霊感を受け,生涯にわたって導きを得ています。しかし,主が弟子たちに言われた「高価な真珠」を見いだしていることを(マタイ13:46),会員たちは十分には理解していません。

預言者ジョセフの妻エマ・スミスが最初の賛美歌集を編集していたときに,「導きたまえよ」という祈りの歌を集録しました。

「地のどよめくとき

恐れを救い

地の裁きの日は

シオンに救いませ」8

(訳注――英語版の賛美歌では

「シオンの丘」)

末日聖徒イエス・キリスト教会に進んで入り,その原則と儀式に忠実であろうとする人はだれでも,「シオンの丘」に立っています。

一人一人が霊感を通して確信を受けることができます。その確信は,イエスがキリストであり,神の御子であられること,末日聖徒イエス・キリスト教会は,主がまさに「全地の面に唯一まことの生ける教会」と宣言された教会であることを証するものです(教義と聖約1:30)。イエス・キリストの御名により,アーメン。