1 さて，この手て紙がみを受うけ取とると，モロナイの心こころは奮ふるい立たち，またパホーランが自じ分ぶんの国くにの自じ由ゆうと大たい義ぎに^①背そむく者ものではなく忠ちゅう実じつであったので，非ひ常じょうに大おおきな喜よろこびに満みたされた。

2 しかし同どう時じに，パホーランをさばきつかさの職しょくから追つい放ほうした者ものたち，要ようするに，自じ分ぶんたちの国くにと神かみに背そむいた者ものたちの罪ざい悪あくを非ひ常じょうに嘆なげかわしく思おもった。

3 そこでモロナイは，パホーランの望のぞむとおり少しょう数すうの兵へいを伴ともない，軍ぐん隊たいの残のこりの兵へいに対たいする指し揮き権けんをリーハイとテアンクムに与あたえておいて，ギデオンの地ちに向むかって進しん軍ぐんした。

4 また彼かれは，行ゆく先さき々ざきのすべての地ち方ほうで^①自じ由ゆうの^②旗はたを掲かかげ，ギデオンの地ちへ向むかって進すすみながら，できるだけ多おおくの兵へいを集あつめた。

5 そこで，何なん千ぜんもの人ひと々びとが彼かれの旗はたの下もとに群むれを成なして集あつまり，奴ど隷れいにならないよう自じ由ゆうを守まもるために武ぶ器きを取とった。

6 このようにして，モロナイは行こう軍ぐん中ちゅうにできるだけ多おおくの兵へいを集あつめて，ギデオンの地ちにやって来きた。そして，彼かれの軍ぐん隊たいとパホーランの軍ぐん隊たいが連れん合ごうしたので，彼かれらは非ひ常じょうに強きょう力りょくになり，ペーカスの兵へいよりも強つよくなった。このペーカスとは，ゼラヘムラの地ちから^①自じ由ゆう党とうの人ひと々びとを追おい出だしてその地ちを占せん領りょうした，あの離り反はん者しゃたちの^②王おうである。

7 そしてモロナイとパホーランは，軍ぐん隊たいを伴ともなってゼラヘムラの地ちへ行いき，町まちを攻せめ，ペーカスの兵へいと相あい対たいして戦たたかった。

8 そして見みよ，ペーカスは殺ころされ，彼かれの兵へいは捕ほ虜りょとなり，パホーランは元もとのさばきつかさの職しょくに戻もどった。

9 ペーカスの兵へいは法ほう律りつによって裁さい判ばんを受うけ，また捕とらえられて牢ろうに入いれられた王おう政せい党とうの者ものたちも，法ほう律りつによって裁さい判ばんを受うけた。そして，彼かれらは法ほう律りつによって^①処しょ刑けいされた。まことに，ペーカスの兵へいと，王おう政せい党とうの者ものの中なかで国くにを守まもるために武ぶ器きを取とろうとせず，むしろ国こっ家かに反はん抗こうして戦たたかおうとした者ものたちは皆みな，だれであろうと処しょ刑けいされた。

10 このように，国くにの安あん全ぜんのためにこの法ほう律りつを厳きびしく執しっ行こうすることが必ひつ要ようになった。そして，人ひと々びとの自じ由ゆうを阻はばんでいることが明あきらかになった者ものはだれであろうと，法ほう律りつによって速すみやかに処しょ刑けいされた。

11 このようにして，ニーファイの民たみのさばきつかさの統とう治ち第だい三十年ねんが終おわった。この年としのうちに，モロナイとパホーランは自じ由ゆうの大たい義ぎに忠ちゅう実じつでないすべての者ものに死し刑けいを科かし，ゼラヘムラの地ちの彼かれら自じ身しんの民たみの中なかに平へい和わを回かい復ふくした。

12 さて，ニーファイの民たみのさばきつかさの統とう治ち第だい三十一年ねんの初はじめに，ヒラマンが国くにのその地ち方ほうを守まもるのを助たすけるために，モロナイは彼かれのもとにすぐに食しょく糧りょうを送おくらせ，また六千人にんの兵へいから成なる軍ぐん隊たいを派は遣けんさせた。

13 彼かれはまた，リーハイとテアンクムの軍ぐん隊たいにも十じゅう分ぶんな食しょく糧りょうとともに六千人にんの兵へいから成なる軍ぐん隊たいを送おくった。これはレーマン人じんに対たいして国くにの防ぼう備びを固かためるために行おこなわれたことであった。

14 さて，モロナイとパホーランは，ゼラヘムラの地ちに大おお勢ぜいの兵へいを残のこしておいて，ニーファイハの町まちにいるレーマン人じんを打うち破やぶろうと決けつ意いし，大おお勢ぜいの兵へいを率ひきいてニーファイハの地ちを指さして進しん軍ぐんした。

15 そして彼かれらは，その地ちへ進しん軍ぐんしながら，途と中ちゅうでレーマン人じんの兵へいを大おお勢ぜい捕とらえ，多おおくの者ものを殺ころし，また彼かれらの食しょく糧りょうと武ぶ器きを奪うばった。

16 そして彼かれらは，これらの者ものを捕とらえた後のち，二に度どとニーファイ人じんに対たいして武ぶ器きを取とらないという誓ちかいを彼かれらに立たてさせた。

17 そして，これらの者ものが誓ちかいを立たてると，彼かれらはこれらの者ものをアンモンの民たみとともに住すめるように送おくり出だした。このときに殺ころされなかった者ものは，およそ四千人にんであった。

18 さて，彼かれらはこれらの者ものを送おくり出だしてしまうと，ニーファイハの地ちを指さして進しん軍ぐんを続つづけた。そして，ニーファイハの町まちに着つくと，町まちに近ちかいニーファイハの平へい原げんに天てん幕まくを張はった。

19 モロナイは，レーマン人じんが出でて来きて平へい原げんで戦たたかうことを望のぞんだ。しかしレーマン人じんは，モロナイの兵へいが非ひ常じょうに勇ゆう敢かんであるのを知しっており，また人数にんずうも非ひ常じょうに多おおいのを見みたので，あえて出でて来きて戦たたかおうとせず，その日ひは戦たたかいがなかった。

20 夜よるになると，モロナイは暗くら闇やみの中なかを出でて行いき，城じょう壁へきの上うえに登のぼって，レーマン人じんが町まちのどこに軍ぐん隊たいを宿しゅく営えいさせているかを探さぐった。

21 さて，彼かれらは，東ひがしの方ほうの入いり口ぐちのそばにおり，全ぜん員いん眠ねむっていた。そこでモロナイは自じ分ぶんの軍ぐんへ引ひき返かえし，兵へいたちに急いそいで丈じょう夫ぶな縄なわとはしごを幾いくつも準じゅん備びさせた。城じょう壁へきの上うえから内うち側がわに降おろすためであった。

22 そしてモロナイは，兵へいを出だして城じょう壁へきの上うえに登のぼらせ，レーマン人じんが軍ぐん隊たいを宿しゅく営えいさせていない町まちの西にしの方ほうに彼かれらを降おろした。

23 そして彼かれらは皆みな，夜よるの間あいだに丈じょう夫ぶな縄なわとはしごを使つかって町まちの中なかに降おりたので，朝あさには，全ぜん員いんが町まちの城じょう壁へきの内うち側がわに入はいっていた。

24 そしてレーマン人じんは目めを覚さまし，モロナイの軍ぐん隊たいが城じょう壁へきの内うち側がわに入はいっているのを見みると，非ひ常じょうに驚おどろき恐おそれ，間かん道どうを通とおって外そとへ逃にげ出だした。

25 モロナイは，彼かれらが自じ分ぶんの前まえから逃にげるのを見みて，兵へいを彼かれらに向むかわせた。兵へいは多おおくの者ものを殺ころし，また多おおくの者ものを取とり囲かこんで捕ほ虜りょにした。そのほかの者ものたちは海かい岸がんに近ちかい地ち方ほうにあるモロナイの地ちへ逃にげた。

26 このようにして，モロナイとパホーランは味み方かたを一人ひとりも失うしなうことなく，ニーファイハの町まちを手てに入いれた。しかし，レーマン人じんは多おおくの者ものが殺ころされた。

27 さて，捕ほ虜りょになったレーマン人じんの多おおくは，^①アンモンの民たみに加くわわって自じ由ゆうな民たみになることを願ねがった。

28 そして，願ねがった者ものは皆みな，願ねがいどおりに認みとめられた。

29 そこで，捕ほ虜りょのレーマン人じんは皆みな，アンモンの民たみに加くわわって，土と地ちを耕たがやし，あらゆる穀こく物もつを栽さい培ばいし，あらゆる家か畜ちくを飼かい，大おおいに働はたらき始はじめた。このようにしてニーファイ人じんは大おおきな重おも荷にを取とり除のぞかれた。まことに，レーマン人じんのすべての捕ほ虜りょの監かん視しから解かい放ほうされたのである。

30 さて，モロナイはニーファイハの町まちを手てに入いれ，多おおくの者ものを捕ほ虜りょにしてレーマン人じんの軍ぐん隊たいを大おおいに減へらし，また捕ほ虜りょになっていたニーファイ人じんの多おおくを奪うばい返かえして自じ分ぶんの軍ぐん隊たいを大おおいに増ぞう強きょうした後のち，ニーファイハの地ちからリーハイの地ちへ向むかった。

31 そこでレーマン人じんは，モロナイが攻せめ寄よせて来くるのを見みて，またもや肝きもをつぶし，モロナイの軍ぐん隊たいの前まえから逃にげ出だした。

32 そこで，モロナイと彼かれの軍ぐん隊たいは町まちから町まちへと彼かれらを追つい撃げきし，追おわれたレーマン人じんはリーハイとテアンクムに出で会あうことになった。そしてレーマン人じんは，リーハイとテアンクムからも逃にげて海かい岸がんに近ちかい地ち方ほうへ逃のがれて行いき，ついにモロナイの地ちに至いたった。

33 このようにして，レーマン人じんの軍ぐん隊たいはすべて集あつまり，モロナイの地ちで一いち団だんとなった。レーマン人じんの王おうアモロンも彼かれらとともにいた。

34 そして，モロナイとリーハイとテアンクムが彼かれらの軍ぐん隊たいを率ひきいてモロナイの地ちの境さかい一いっ帯たいに陣じんを張はったので，レーマン人じんは南なん方ぽうの荒あれ野のによって，また東とう方ほうの荒あれ野のによって，その地ちに包ほう囲いされてしまった。

35 この状じょう態たいで，夜よるニーファイ人じんは宿しゅく営えいした。見みよ，ニーファイ人じんもレーマン人じんも強きょう行こう軍ぐんで疲つかれ切きっていたので，その夜よるは何なんの戦せん略りゃくも決きめず，ただテアンクムだけがそれを考かんがえていた。彼かれはアモロンのことをひどく怒いかり，アモロンと彼かれの兄きょう弟だいのアマリキヤこそがニーファイ人じんとレーマン人じんの間あいだのこの長ちょう期きの大たい戦せんの^①もとであり，このようにひどい戦せん争そうと流りゅう血けつと，またこのようにひどい飢き饉きんのもとであると考かんがえた。

36 そしてテアンクムは，怒いかってレーマン人じんの宿しゅく営えいに入はいって行いき，町まちの城じょう壁へきを越こえて下したに降おりた。そして彼かれは，縄なわを持もってあちらこちらへ行いき，ついに王おうを捜さがし出だした。そこで彼かれは，王おうをねらって投なげ槍やりを^①投なげ，心しん臓ぞうのそばを貫つらぬいた。しかし見みよ，王おうが死しぬ前まえに部ぶ下かを起おこしたので，テアンクムは彼かれらに追おわれて殺ころされてしまった。

37 さて，リーハイとモロナイは，テアンクムが死しんだことを知しって非ひ常じょうに悲かなしんだ。見みよ，テアンクムは自じ分ぶんの国くにのために勇いさましく戦たたかった人ひとであり，自じ由ゆうのまことの友ともであったからである。彼かれはこれまで非ひ常じょうに多おおくのひどい苦く難なんに耐たえてきた。しかし見みよ，今いまは死しんで，世よのすべての人ひとの行いく道みちを行いった。

38 そして翌よく日じつ，モロナイは進しん軍ぐんしてレーマン人じんを攻せめ，モロナイの兵へいはレーマン人じんを大おお勢ぜい殺ころし，その地ちからレーマン人じんを追おい払はらった。そして，レーマン人じんは逃にげ出だし，そのときには，戻もどって来きてニーファイ人じんと戦たたかうことはしなかった。

39 このようにして，ニーファイの民たみのさばきつかさの統とう治ち第だい三十一年ねんが終おわった。ニーファイ人じんは長なが年ねんの間あいだ，戦せん争そうと流りゅう血けつと飢き饉きんと苦く難なんに遭あってきたが，それは以い上じょうのとおりである。

40 ニーファイの民たみの中なかには，殺さつ人じんと争あらそいと不ふ和わとあらゆる罪ざい悪あくがあった。それでも^①義ぎ人じんがいたために，まことに，義ぎ人じんの祈いのりのおかげで彼かれらは救すくわれた。

41 しかし見みよ，ニーファイ人じんとレーマン人じんの間あいだの戦せん争そうが非ひ常じょうに長ちょう期きに及およんだため，多おおくの者ものがかたくなになった。戦せん争そうが非ひ常じょうに長ちょう期きに及およんだためにそうなったのである。しかし，^①苦く難なんを受うけたために柔にゅう和わになった者ものも多おおく，彼かれらは神かみの前まえに心しん底そこ謙けん遜そんにへりくだった。

42 さて，モロナイは，レーマン人じんの攻こう撃げきをきわめて受うけやすい何なんか所しょかの地ち方ほうの防ぼう備びを固かため，それらの地ち方ほうが十じゅう分ぶん堅けん固ごになると，ゼラヘムラの町まちへ帰かえった。また，ヒラマンも彼かれの受うけ継つぎの地ちへ帰かえった。そして，ニーファイの民たみの中なかに再ふたたび平へい和わが確かく立りつされた。

43 モロナイは，軍ぐんの指し揮き権けんをモロナイハという名なの息むす子この手てにゆだねた。そして彼かれは家いえに引ひきこもり，余よ生せいを安やすらかに送おくることにした。

44 パホーランは元もとのさばきつかさの職しょくに戻もどった。またヒラマンも，神かみの言こと葉ばを民たみに宣のべ伝つたえる務つとめに就ついた。このように多おおくの戦せん争そうと争あらそいがあったので，再ふたたび教きょう会かい内ないの統とう一いつを図はかることが必ひつ要ようになった。

45 そこで，ヒラマンと彼かれの同どう僚りょうたちは出でて行いって，多おおくの人ひとに各かく自じの悪あくを^①自じ覚かくさせるため，非ひ常じょうに力ちから強づよく神かみの言こと葉ばを告つげ知しらせた。その結けっ果か，人ひと々びとは罪つみを悔くい改あらためてバプテスマを受うけ，主しゅなる神かみの民たみとなった。

46 そして，ヒラマンと彼かれの同どう僚りょうたちは，全ぜん地ちの至いたる所ところに再ふたたび神かみの教きょう会かいを確かく立りつした。

47 そして，法ほう律りつについて数かず々かずの条じょう例れいが定さだめられた。また，民たみの^①さばきつかさたちと大だいさばきつかさたちが選えらばれた。

48 ニーファイの民たみは再ふたたび地ちで^①栄さかえ始はじめ，増ふえ始はじめ，再ふたたび非ひ常じょうに力ちからをつけるようになった。そして彼かれらは大たい変へん豊ゆたかになった。

49 しかし彼かれらは，富とみと力ちからと繁はん栄えいを得えたにもかかわらず，高こう慢まんな目めをもって高たかぶることなく，主しゅなる神かみを忘わすれることもなく，主しゅの前まえに深ふかくへりくだった。

50 まことに彼かれらは，主しゅが自じ分ぶんたちのためにどれほど大おおいなることを行おこなってくださったかを忘わすれず，主しゅが自じ分ぶんたちを死しから，束そく縛ばくから，牢ろうから，あらゆる苦く難なんから救すくい出だしてくださったこと，また敵てきの手てからも救すくい出だしてくださったことを忘わすれなかった。

51 そして彼かれらは，主しゅなる神かみに絶たえず祈いのったので，主しゅは御み言こと葉ばのとおりに彼かれらを祝しゅく福ふくされた。そのため，彼かれらはその地ちで力ちからをつけ，栄さかえた。

52 さて，これらのことはすべて以い上じょうのとおりになった。そしてヒラマンは，ニーファイの民たみのさばきつかさの統とう治ち第だい三十五年ねんに死しんだ。