第9課

「わたしは……イザヤの言葉を喜んでいる」

モルモン書:福音の教義クラス教師用手引き


目的

イザヤの預言を読むように励まし,それらの預言が自分たちの生活にどのように応用できるかを理解できるようにする。

準備

  1. 以下の聖句を読み,内容について深く考え,祈る。

    1. 2ニーファイ11章25:1-7。ニーファイはイザヤが書き記したものの重要性を証し,わたしたちがそれらを理解するための鍵を教える。

    2. 2ニーファイ12:1-12。イザヤは末日の神殿とイスラエルの集合を見る。

    3. 2ニーファイ15:26-2921:12。イザヤは主が旗を掲げてイスラエルを集められることを預言する。

    4. 2ニーファイ16章22章25:19-30。イザヤとニーファイは救い主の贖いの力について証する。

  2. そのほかの読書課題--『聖句ガイド』「イザヤ」の項,33-34

  3. 以下の資料を入手できれば,レッスンで使用する。「キリストの降誕について書くイザヤ」(『福音の視覚資料セット』113),「ソルトレーク神殿」(『福音の視覚資料セット』502),「イエス・キリスト」(『福音の視覚資料セット』240)

  4. イザヤの記録に対する教師の理解を深めるため,『旧約聖書福音の教義クラス教師用手引き』(35570 300)36-40課を復習するとよい。

レッスンの展開

導入

適切であれば,以下の活動または教師が考えた活動をレッスンの始めに行う。

モーサヤ8:17-18を読む。その後,生徒に以下の質問を尋ねる。

  • 聖見者は何を見ることができるでしょうか(過去,現在,将来の出来事)。なぜ聖見者はわたしたちにとって大切なのでしょうか。

イザヤは聖見者であったので,天における戦い,救い主の死後起こるエルサレムの滅亡,ハルマゲドンの戦い,救い主による福千年の統治などの出来事を示現の中に見ることができたと説明する。

イザヤの書いた記録の多くが理解しにくく感じるのは,象徴的な言葉を用いて広い範囲の過去と未来の出来事について述べているからである。しかし,祈りをもって読み,研究し続けるならば,それらを理解することができる。本課ではイザヤが記した最も重要な部分について話し合う。

聖句を使った話し合いと応用

クラスの生徒の必要に最も適した聖句,質問,そのほかの資料を祈りの気持ちで選ぶ。選んだ聖句を日常生活でどのように応用できるかを話し合う。聖句で述べられている原則に関連した適切な経験を分かち合うよう生徒に勧める。

1.ニーファイはイザヤが書き記したものについて証し,それらを理解する鍵を与える

2ニーファイ1125:1-7について話し合う。選んだ箇所を生徒たちに声を出して読んでもらう。「教えるためのそのほかのアイデア」の項1,を使う場合は,前もって頼んでおいた生徒にイザヤとその時代について簡単に発表してもらう。

  • ニーファイはイザヤの言葉が自分の記録にとってなぜ重要だと思ったのでしょうか(1ニーファイ19:232ニーファイ11:2-6,825:3参照。これらの箇所を何人かの生徒に声を出して読んでもらう。彼らが順番にこれらの箇所を一つ一つ読んでいく間に,一人の生徒に聖句の場所とイザヤを引用している理由を黒板に書いてもらう。以下に例を示す)。

    ニーファイはなぜイザヤを引用したか

    1ニーファイ19:23

    「主なる贖い主を信じるようにさらに十分に勧めるため」

    2ニーファイ11:2-4

    イエス・キリストについてのもう一人の証人を備えるため

    2ニーファイ11:5-6,8

    わたしたちが(イザヤの言葉に)喜びを感じるため

    2ニーファイ25:3

    神の裁きについて知らせるため

  • 今日のわたしたちにとってなぜこれらの理由は大切なのでしょうか。わたしたちはイザヤの言葉を理解することによって,どのように喜びを感じることができるでしょうか。

ニーファイはわたしたちがイザヤの記録をよりよく理解するうえで助けとなる幾つかの鍵を用意してくれたことを説明する。時間があれば,これらの鍵について生徒と話し合う。

鍵1--「すべての聖文を自分たちに当てはめ〔る。〕」(1ニーファイ19:232ニーファイ11:2,8も参照)イザヤの預言の多くは,末日の出来事に関連のあるものである。これらの預言が実現するのを目にしたり,預言の成就にかかわったりするとき,わたしたちはイザヤの教えをよりよく理解することができ,わたしたちの生活に当てはめることができる。例えば,2ニーファイ15章には主がイスラエルを集めるために「一つの旗を掲げ」られるというイザヤの預言が載っている(2ニーファイ15:26)。この預言は,あらゆる国民を主のもとへ導く旗,すなわち回復された福音を分かち合うことの大切さについて,わたしたちが理解を深めるうえで役立つ。

 鍵2--「ユダヤ人の預言の仕方を知〔る。〕」(2ニーファイ25:1)イザヤの預言はユダヤ人が読んだり聞いたりするのに慣れ親しんでいた形式で書かれている。イザヤは彼の時代のユダヤ人が慣れ親しんでいたであろう比喩や象徴を用いたということを心に留めておくと,イザヤの言葉をよりよく理解することができる。例えば,2ニーファイ12:1-3において,イザヤは「山」という言葉を高く霊的な場所,神からの啓示を受け,神に近づくことのできる場所,つまり神殿などの象徴として用いている。

鍵3--「神の裁きについて知る……。」(2ニーファイ25:36節も参照)イザヤはイスラエル王国とユダ王国がその悪事のために苦難に遭うのを予見したが,彼らが悔い改めてイエス・キリストに従うときに祝福が回復されることも預言した。イスラエルとユダに何が起こるかについての記述と,イスラエルの家が将来回復されるという預言から,わたしたちは,神がわたしたちの生活の中でどのように力を及ぼしておられるか,また国々の民は義にかなう行いをするならば,祝福を受けるということをよりよく理解することができる。

鍵4--「エルサレム……の周りの地方について知〔る。〕」(2ニーファイ25:6)イスラエルの地理と地名について知っていると,イスラエル王国やユダ王国,そして両国を脅かしていた国々についてのイザヤの預言をよりよく理解することができる。例えば,2ニーファイ20:28-34において,イザヤはアッスリヤの軍勢が通過する町の名前を挙げ,エルサレムに到着したときにどのように止められるかについて述べている。これらの出来事はすべてイザヤが預言したとおりに起こった。

鍵5--「預言の霊に満たされ〔る。〕」(2ニーファイ25:4

  • 預言の霊とは何でしょうか(黙示19:10参照)。どうすれば預言の霊を得ることができるでしようか。預言の霊はわたしたちが救い主についてのイザヤの教えを理解するのをどのように助けてくれるでしょうか。

2.イザヤは末日の神殿とイスラエルの集合を見る

2ニーファイ12:1-12を読んで話し合う。「ソルトレーク神殿」の絵があればここで見せる。

  • ソルトレーク神殿は2ニーファイ12:2-3に記録されているイザヤの預言の一部をどのように成就しているでしょうか。なぜイザヤはこの神殿を「主の山」と表現したと思いますか(古代の預言者はしばしば山へ行って,主と交わり,主から啓示を受けた)。どのような意味ですべての神殿はわたしたちの礼拝を行う「山々」となるでしょうか。

    末日聖徒イエス・キリスト教会は山々の頂で確立したこと,神殿は人々が来て,主について学ぶために建てられていることを強調する。

  • イザヤは神殿を暑さと嵐の「避け所」であると述べています(2ニーファイ14:6)。わたしたちがこの世で直面する霊的な嵐にはどのようなものがあるでしょうか。神殿はこれらの嵐からわたしたちをどのように守ってくれるでしょうか。

  • わたしたちは末日聖徒として,どうすれば2ニーファイ12:3-5に述べられているように神の王国を地上に確立するための助けができるでしょうか(教義と聖約133:7-14参照)。

  • イザヤはヤコブの家に向かって,「悪の道に迷」うのではなく「主の光の中を歩」むように勧告しています(2ニーファイ12:5)。2ニーファイ12:7-12では,具体的にどのような罪が挙げられているでしょうか。このような罪は今日でもどれほど広く行われているでしょうか。わたしたちはこれらの罪を避け「光の中を歩」むにはどうすればよいでしょうか。

3.イザヤは主が一つの旗を掲げてイスラエルを集められることを預言する

2ニーファイ15:26-2921:12を読んで話し合う。

  • イザヤは主が「国民に一つの旗を掲げ」られることを預言しました(2ニーファイ15:262ニーファイ21:12も参照)。旗は何を指しているでしょうか。イザヤはこの旗が掲げられるときにどのようなことが起こると言いましたか(2ニーファイ15:26-29参照)。

  • 天使モロナイはジョセフ・スミスに現れたとき,イザヤ11章(2ニーファイ21章に引用されている)はまさに成就されようとしていると言いました(ジョセフ・スミス--歴史1:40)。イエス・キリストの回復された福音はどのような点ですべての国民にとっての旗となるでしょうか(教義と聖約64:41-43105:39115:4-6参照)。

  • もろもろの国民が「集められる」という預言は今日どのように成就しているでしょうか(2ニーファイ21:12参照。宣教師たちは世界中に出て行って福音を教え,真理の下へと人々を集めている)。この預言が成就するのを助けるために,わたしたちにはそれぞれどのようなことができるでしょうか。

4.イザヤとニーファイはイエス・キリストの贖いの力について証する

2ニーファイ16章22章25:19-30から選んだ箇所を読んで話し合う。「キリストの降誕について書くイザヤ」の絵と「イエス・キリスト」の絵があればここで見せる。

  • 2ニーファイ16章には,イザヤが示現の中で主を見たことについて記されています。イザヤはこの示現を受けたときの状況についてどのように記しているでしょうか(2ニーファイ16:1-4参照)。イザヤは主の前にあって,どのように感じたでしょうか(2ニーファイ16:5参照)。

  • 天使がイザヤの唇に燃え盛る炭を当てたことは,何を象徴しているのでしょうか(2ニーファイ16:6-7参照。イザヤの罪が赦された)。イザヤは主の声を聞いたとき,どのように答えましたか(2ニーファイ16:8参照)。このような言葉は聖文の中でほかにどこに出てくるでしょうか(アブラハム3:27参照)。わたしたちはどのようなときに主に対してこのような返事をしなければならないでしょうか。

  • 生徒に2ニーファイ22:1-6を読んでもらう。これらの節には福千年の間すべての人がどのように救い主をほめたたえるかについてのイザヤの記述が載っていることを説明する。これらの節の中で,どのようなことが印象に残っていますか。救い主はどのような「すばらしいこと」をわたしたちのためにしてこられたでしょうか(2ニーファイ22:5)。

  • 生徒に2ニーファイ25:19-30に目を通してもらい,ニーファイの救い主に対する証について話し合う。ニーファイの証について,どのような印象を受けたでしょうか。わたしたちがニーファイのように「子孫……に,キリストを信じ……るように説き勧めるために,熱心に……努め」るためにはどうすればよいでしょうか(2ニーファイ25:2326節も参照)。

  • ニーファイは「わたしたちが最善を尽くした後,神の恵みによって救われる」と教えました(2ニーファイ25:23)。この言葉は,イエス・キリストの恵みとわたしたちの行いの関係についてどのようなことを教えているでしょうか(2ニーファイ10:24-25教義と聖約20:29-31参照)。この言葉はあなたが最善を尽くすうえでどのように励みとなるでしょうか。

  • 生徒の一人に2ニーファイ25:29を声に出して読んでもらう。「勢力と思いと力を尽くし,全身全霊を込めて」主を拝しなさいというニーファイの勧めに全面的に従うために,あなたは今週どのようなことをしようと思いますか(この質問について,生徒たちに答えてもらうよりもむしろ考えるように勧めるとよい)。

結び

救い主がイザヤの教えに対し,次のような言葉で承認を与えておられることを指摘する。「まことにわたしは,これらのことを熱心に調べるようにという戒めを,あなたがたに与える。イザヤの言葉はまことに偉大だからである。」(3ニーファイ23:1

本課で話し合われた事柄が真実であることを,御霊に導かれるままに証する。

教えるためのそのほかのアイデア

以下の資料はレッスンの概要を補足するためのものである。この中の幾つかをレッスンに取り入れてもよい。

1.イザヤと彼の時代(生徒による発表)

本課を教える1週間前に,生徒の一人に『聖句ガイド』の33-34ページに書かれている説明を基に,イザヤについて簡単に発表するように頼んでおく。本課の項目1を始めるときにその生徒に発表してもらう。

2.賛美歌

2ニーファイ15:26について話し合う中で,生徒の一人に「山の上に」(『賛美歌』2番)を歌ってもらうか,歌詞を読んでもらう。この賛美歌がどのように福音の回復に関するイザヤの預言の成就をたたえているかについて生徒と話し合うとよい。

2ニーファイ15:203.「悪を善と呼び,善を悪と呼」ぶ()

  • わたしたちはどのように,古代イスラエルの民のように「悪を善と呼び,善を悪と呼」ぶという過ちを犯すことがあるでしょうか(2ニーファイ15:20)。わたしたちはどうすれば自分が善と呼んでいるものがほんとうに善で,悪と呼んでいるものがほんとうに悪であることを確認できるでしょうか(モロナイ7:12-17参照)。

4.モルモン書はイザヤに対するわたしたちの理解をどのように深めてくれるか

わたしたちにとってモルモン書はイザヤが書き記したものを理解するための,最も価値あるガイドの一つである。わたしたちがイザヤを理解するうえでモルモン書がどのように助けとなるかについて,以下の事柄を生徒に紹介する。

  1. モルモン書にはイザヤ書66章中22章からの全体あるいは一部の引用があり,これらの章についての解説も付け加えられている。モルモン書の預言者たちが生きていたのはイザヤの時代に近かったので,彼らの解説はわたしたちがイザヤの教えを理解するうえで役立つ。

  2. モルモン書に引用されているイザヤの言葉の中には,イザヤ書を扱うほかの書物には見られない言葉,文,説明が含まれている。

  3. 世に知られている最も古いイザヤ書は,死海写本の中で発見されている。この「イザヤの巻」は紀元前200年のものである(Bible Dictionary, “Dead Sea Scrolls,” 654)。しかし,モルモン書の中にあるイザヤの章はニーファイの時代,紀元前約600年にまでさかのぼる。ジョセフ・スミスにより翻訳されたモルモン書は,死海写本より400年も古いイザヤの記録を世にもたらしたのである。

  4. イザヤ書の前半の33章は後半の33章とは文章の響きが異なることから,多くの人がイザヤ書は二人の人物によって書かれたと信じている。モルモン書にはイザヤ書の前半・後半両方からの引用があり,どちらもその著者はイザヤであるとしている。このようにイザヤ書はイザヤによって書かれたことを証言している。