1 さて,第五十四年に教会内に多くの不和があった。また,民の中にも争いがあり,多くの流血があった。
2 そして謀反を起こした者たちは,殺されたり,国から追放されたりした。そこでこれらの者は,レーマン人の王のもとへ行った。
3 そして彼らは,レーマン人を扇動してニーファイ人と戦わせようとしたが,見よ,レーマン人は非常に恐れて,離反者たちの言葉を聴こうとしなかった。
4 ところが,さばきつかさの統治第五十六年にも,ニーファイ人のもとからレーマン人のもとへ行った離反者たちがおり,彼らはほかの者たちとともに,レーマン人を扇動してニーファイ人に対して怒りを抱かせるのに成功した。そこで,彼らはその年の間,戦争の準備をした。
5 第五十七年に,彼らはニーファイ人のもとに来て戦い,死の業を開始した。そして,さばきつかさの統治第五十八年に,彼らはゼラヘムラの地と,またバウンティフルの地に近い地方まですべての地を占領することに成功した。
6 そして,ニーファイ人とモロナイハの軍隊は,バウンティフルの地に追い込まれた。
7 そこで彼らは,西の海から東の海に至るまで,その地でレーマン人に対する防備を固めた。彼らが北の地を守るために防備を固めて軍隊を配備したその境界線上では,西の海から東の海まで,ニーファイ人が一日旅をすれば行ける距離であった。
8 このようにして,ニーファイ人の離反者たちは,レーマン人の大軍の助けを得て,南方の地にあるニーファイ人の領土をすべて手に入れたのであった。これはすべて,さばきつかさの統治第五十八年と第五十九年にあったことである。
9 さて,さばきつかさの統治第六十年に,モロナイハは軍隊をもってその地の多くの地方を手に入れることに成功した。まことに,彼らはレーマン人の手に落ちていた多くの町を取り返した。
10 そして,さばきつかさの統治第六十一年には,彼らは自分たちの全領土の半分まで取り返すことに成功した。
11 ところで,ニーファイ人の被ったこの大きな損害と,彼らの中で行われたひどい殺戮は,彼らの中にあった悪事と忌まわしい行いがもしもなかったならば,起こらなかったであろう。この悪事と忌まわしい行いは,神の教会に属していると公言する者たちの中にもあった。
12 彼らは非常に富んでいたために心が高慢になり,また飢えている者に食物を与えず,着る物のない者に着る物を与えず,謙遜な同胞の頬を打つなどして貧しい者を虐げ,神聖なものをあざけり,預言と啓示の霊を否定し,人を殺し,略奪し,偽りを言い,盗み,姦淫を犯し,ひどい争いを起こし,ニーファイの地へ逃げて行ってレーマン人に加わったために,
13 すなわち,彼らはこのように大きな悪事を行ったために,また自分の力を誇ったために,自分の力しか頼れない状態に置かれたのであった。したがって,彼らは栄えることなく,苦しめられ,悩まされ,レーマン人の前から追い出されて,とうとうほとんどすべての所有地を失ってしまった。
14 しかし見よ,モロナイハは民が罪悪を犯していたので彼らに多くのことを説き,またヒラマンの息子であるニーファイとリーハイも民に多くのことを説き,また彼らの罪深い状態と,罪を悔い改めなければ彼らに起こることについて,多くのことを預言した。
15 そこで,彼らは悔い改めた。そして,悔い改めた程度に応じて栄え始めた。
16 モロナイハは民が悔い改めたのを見ると,大胆にもあちらこちらに,また町から町へと彼らを率いて行き,ついに彼らは自分たちの所有物の半分とすべての所有地の半分を取り返した。
17 このようにして,さばきつかさの統治第六十一年が終わった。
18 さて,さばきつかさの統治第六十二年には,モロナイハはそれ以上レーマン人から領土を取り返すことができなかった。
19 それで彼らは,残りの土地を手に入れる計画を断念した。レーマン人が非常に大勢であったので,ニーファイ人は彼らに勝って勢力を得ることが不可能になったからである。そこでモロナイハは,それまでに取り返した地方を守るために,自分の全軍を使った。
20 そして,レーマン人の数が非常に多かったので,ニーファイ人は打ち負かされ,踏みにじられ,殺され,滅ぼされるのではないかとひどく恐れた。
21 まことに彼らは,アルマの預言とモーサヤの言葉を思い出し始めた。そして彼らは,自分たちが強情な民であったこと,また神の戒めを軽んじてきたこと,
22 自分たちがモーサヤの法律,すなわち主が民に与えるようにとモーサヤに命じられた法律を変更し,足で踏みつけてきたことを知った。また彼らは,自分たちの法律が不正なものになってしまったこと,そして自分たちが邪悪な民になってしまったために,まさにレーマン人のように悪くなっていることを知った。
23 また,彼らの罪悪のために,教会は衰え始めていた。そして彼らは,預言の霊と啓示の霊を信じなくなり,神の裁きは彼らの目前に迫っていた。
24 彼らは,自分たちが同胞のレーマン人のように弱くなってしまったこと,また主の御霊がもはや自分たちを守ってくださらないことを知った。まことに,主の御霊は清くない宮にはとどまらないので,彼らから去ってしまわれたのである。
25 したがって主は,奇跡を起こすたぐいない力で彼らを守ることをおやめになった。彼らが不信仰な,ひどい邪悪な状態に陥っていたからである。また彼らは,レーマン人が自分たちよりもはるかに大勢であり,もし自分たちが主なる神に堅くすがらなければ必ず滅びるに違いないということを知った。
26 見よ,彼らは,レーマン人の兵力が自分たちの兵力と同等であり,一人一人を比べても同等であることを知ったからである。このように彼らは大きな背きに陥っていた。まことに,彼らは背きに陥ったので,このように,わずかな歳月で弱くなってしまったのであった。